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【堺シュライクス】優勝当日ドキュメント

10月11日 14:00 選手球場入り

くら寿司スタジアム堺。ナイターでの試合。14時にはすでに球団スタッフによる設営が完了しており、入場ブースができていた。そしてしばらくして選手も集まってきた。

球場外で思い思いにストレッチを始めたり、用具を準備したりといつも通りの光景だった。緊張やピリピリしたムードではなく、どこかリラックスしているようにさえ感じた。

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(レラハンクス富良野から移籍し、合流した山本麗貴投手。「合流してすぐの試合で優勝が決まるかもっていうのは、さすがに経験したことないです」とのこと。)

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(スタメンキッズ用のサインボールにサインを書く大神康輔。ちなみに「失敗できない」と練習用のボールに何度もサインを書いていた)

開門は15時30分だったがすでに列に並んでいる堺ファンの人もいた。
「今日は胴上げが楽しみ。今季は勝ち試合が多くて楽しかった。試合数はコロナで減ってしまったが、その分見どころが多かった。見ていて楽しいシーズンだった」と話し、試合開始を心待ちにしていた。

10月11日 14:30 アップ開始

トレーナーの指導の下、アップが始まった。その傍らで、10月6日の試合で肉離れを発症した大橋諒介が声を出して鼓舞する。
「辻田(寛人)!しんどそうな顔するな!」「おい、しっかり走れよ!」

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(練習を見つつ、トレーニングをする大橋。この後ナインにノックを打っているところを目撃され、大西監督が慌てて止めに入った)

「悔しいです。でもけがをしたのは自分の責任ですから」と言いながら体幹を鍛えるトレーニングを続けていた。この試合に出場できない悔しさがにじみ出ていた。

10月11日 16:15 円陣

大西監督が選手を前に一言。
「いつも通りやれとは言いません。全力フルMAXで!優勝しましょう!」

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ここまで「いつも通り」を崩さなかった大西監督が選手を前に「優勝」の言葉を出した。続いて大橋が円陣に入った。
「この試合勝ったら優勝やぞ!勝ちたいんか?勝つぞー!!!」

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(ナインに檄を飛ばす大橋)

10月11日 17:00 プレイボール

試合が始まった。吉田亘輝がマウンドへ。優勝が決まる大一番、そしてイベント試合。そんな状況からか、球場に近づくと胃が痛くなってきたらしい。

1番の花岡洋平に右前に運ばれると、2番の花岡雄一は打撃妨害となり、無死一二塁。しかし後続をショートフライと三振二つに抑え、マウンドで吠えた。

その裏、2番の平岡楓がショートとレフトの間に落ちるヒットを放つ。平岡は一気に二塁に到達。続く丹羽竜次、鶴巻璃士の打席の間に2度の暴投があり、平岡が先制のホームを踏んだ。

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10月11日 18時18分 追加点

4回裏、佐藤将悟が四球で出塁すると、山田がライト前にヒットを放ち、1死一三塁のチャンス。ここで早河洋がセンターへ抜けるタイムリーを放つ。
その後、平岡が押し出し四球も選び2点を追加。

続く5回裏にも、鶴巻の二塁打を起点に、早河がタイムリーを放った。

6回裏は鶴巻もタイムリーヒットを放ち、5対0となった。

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10月11日 19時22分 アクシデント

好投していた吉田にアクシデントが襲った。7回表、二死を取ったところで、ストライクが入らなくなる。藤江均コーチがマウンドに行き、状態を確認する。指のマメが破け、相当な流血があった。いったん治療のためにベンチに下がる吉田に、スタンドから拍手が起こった。

ベンチ裏では応急処置を施しつつ、こんな会話がされていた。

「お前を交代させるのは簡単やけど、お前の気持ちはどうなんや」
「行きます!」

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(ベンチ裏で藤江コーチらの治療を受けた吉田)

マウンドに戻り、相手打者・奥田一弘と対峙する。奥田がバットを振り抜くも、打球が吉田の脚にあたる。その打球を吉田が落ち着いて処理し、ピッチャーゴロ。ピンチを切り抜けた安堵と、打球が当たった痛さから笑みとも何とも言えない表情でベンチに戻ってきた。

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(後日打球が当たったところを見せてもらうと、大きく赤い痣ができていました)

10月11日 19:35 ブルズ打線の逆襲

8回表、河村将督がマウンドに。4番の出口航平を打ち取るも、5番の千原和希にヒットを打たれる。

ここで堺ベンチは次打者が左の佐藤蓮ということもあり、左投手の斉藤力を繰り出す。ブルズベンチはここで右の代打の切り札、遊馬ジェシーをコール。ここで気負ったのか、斉藤がボークを取られる。そして遊馬が起用に応えるヒットを放つと、高山健太がタイムリーツーベース、虎弥太が犠牲フライを放ち2点を返す。

10月11日 20:04 山場

9回表、片岡篤志がマウンドに上がった。しかし、緊張からかストライクが入らない。自己最速の149キロを計測するも、花岡洋に四球、花岡雄にヒットを打たれ無死一二塁。

続く奥田一弘の打球は力のないピッチャーゴロだったが、二塁への悪送球となり、花岡洋が生還。なおも無死一二塁で相手は出口。一発出れば逆転の場面で、堺ベンチは片岡の降板を決めた。

コールされたのは河内山拓樹。片岡は「すみません、お願いします」と一言河内山に伝え、ベンチに戻った。

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(降板する片岡。手前は河内山)

10月11日 20:19 決着

もちろん登板を告げられる前から河内山はしっかりと準備していた。「(吉田)亘輝がマメが潰れたり、ボールに当たったりしながら繋いでくれた。だからなんとか抑えたい」そう思ってマウンドに立った。

あとは圧巻だった。出口を併殺に取り2死三塁。相手打者は先ほどヒットを放っている千原。なおも一発が出れば同点の場面。

1ボールからの2球目を打った。鋭い当たりだったが、丹羽が追いつく。一塁に投げる。河内山はマウンドで両手を掲げた。3アウトとなりゲームセット。

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その瞬間ベンチから選手が飛び出した。
脚に打球が当たって痛いはずの吉田が猛スピードでマウンドに向かう。それに続けとばかりに選手がマウンドに走っていった。

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(「こういうことは初めてだったので、ベンチからみんなが飛び出してきた勢いにビックリしてよけてしまいました」とは河内山談)

堺シュライクスの優勝が決まった。

10月11日 20時23分 胴上げ

整列後、改めてナインがマウンドに集まった。片岡が感極まって泣いている。それをいじる面々。

藤江コーチは「胴上げするときもちゃんと下半身使って上げるんやぞ!」といつものトレーニングのように注文を付けた。

そして大西監督の胴上げが始まった。6回宙に舞った。みんな笑顔だ。

続いて藤江コーチ、丹羽竜次キャプテン、松本祥太郎オーナー、夏凪一仁球団代表、球団スタッフの畑康裕、伊藤遥…それぞれが宙を舞った。

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(高々と宙を舞う丹羽キャプテン。「最後セカンドゴロはノーバンで取れればよかった。胴上げは上がりすぎたけどうれしかった」とのこと)

10月11日 21:00 監督・ファン・選手の声

大西監督は優勝について「素直にメチャメチャうれしい。今日も多くのお客さんに来ていただき、ホームで優勝できて、胴上げ出来てよかった」と話した。

藤江コーチは「常にこの緊張感で試合ができるようにレベルを上げていかないといけない」と選手に注文を付けた。

松本オーナーは「2年という期間でこれほどたくさんの方に応援していただけてうれしい。今後も選手の成長へのアシストや、地域の皆様のために頑張っていきたい」と抱負を語った。

私設応援団・仁徳會の団長は「優勝することが本当に嬉しいです。チームのメンバー、何度も足を運んでくれるファン、初めて観戦したファンも、皆一丸となって掴み取った優勝だと思います」と喜びを表した。

そのあと他の選手にも話を聞いたが、異口同音に「次の試合」について話していた。

「残り5試合、強いシュライクスを見せたい」と鶴巻が言えば、「絶対に負けたくないです」と吉田も言う。

丹羽キャプテンは「今年のチームはよく打ついいチームだった。残り試合もがんばります、勝ちます!」と気合を入れた。

喜びのひと時を経て、次の試合、次の目標に切り替わっていた。

まださらなる目標に向かって前を向く選手がいる。この後もまだ戦いを見逃せない。

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