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明けの明星、明るく夜明けに光る星

 寒い冬の日の朝、ひときわ輝く星がある。空が白み、星が姿を消しても、一つだけ消えずに明るく輝いている。明けの明星、金星だ。
 太陽や月の光と同じように、明るく輝く金星には神秘的なものを感じてしまう。
 今頃は特に明るい。他の星とはまったく違う輝き。まだ寒いけど、夜明け前に外に出てみよう(不審者にまちがえられないように……)。
 金星は、日の出前の南東の低空に見える。2月13日に最大の明るさになり、その頃は昼でも金星がわかるそうだ。夜が明けてからも空を見上げてみよう(「低空」だから、あんまり見上げても見えないか)。



 金星は地球と同じように、太陽の周りを回っている。だから他の星とは違う動きをする。しかも地球より内側を回っているので、真夜中に見えることがなく、常に太陽の方向に見える。地球から見ると、上へ上がって下に下がる動きだ。夕方の西の空か明け方の東の空に見える。明け方に見える場合をけの明星みょうじょうといい、今年は1月から9月頃まで見える。ところが今年の1月のはじめは、明け方ではなく夕方に見えていた。夕方の一番星として見えるのがよい明星みょうじょうだ。今年の次は12月中旬から宵の明星となるそうだ。その後、宵の明星の期間がしばらく続く。年によって動きが違うので「今年は」と書いた。金星は不思議な動きをする。

 明るく輝く太陽は、アマテラスとして古代日本では最高神とされる。エジプトでは太陽神ラーとして敬われた。月は日本神話ではツクヨミ。明るく輝くモノは神となった。
 金星にはわざわざ「明星みょうじょう」、明るい星と名前をつけた。英語ではビーナスVenus、ローマ神話の美の女神だ。
 人間は、ダイヤモンドや金銀のように美しく光り輝くものに価値を見いだしてきた。光に魅せられてきた。
 夕暮れや夜明けに輝く金星は、まさに闇の中に輝く光だ。

 ターザンの作者、エドガー・ライス・バローズ(1875~1950年)は、金星を舞台にしたカースン・ネイピア、金星のカースンが主人公の金星シリーズを書いている。
 中学生の頃、ジョン・カーターを主人公にしたバローズの火星シリーズに続いて夢中になって読んでいたなあ。最初は火星シリーズ「火星のプリンセス」で、ジョン・カーターとデジャー・ソリスの恋に夢中になった。火星や金星に行った主人公が、美女をめぐって大冒険をする。心理分析ばかりの小説と違って、次から次へと事件が起きる血湧き肉躍るストーリーが展開する。異世界物になるのだろう。輝く金星を見ていると、そんなストーリーも浮かんでくる。
 火星も赤く夜空に輝いている(2月の火星は、日の出前の南東の低空に見える)。



 今は一番星としての夕方には見えず、朝にしか見えない金星。
 冷たい空気の中で、明るく世界を照らしている。今はひときわ明るさが増している。今が金星の旬の季節。

 空へ昇った人の魂が夜空で輝きながら我々を見つめているようだ。明るく温かい光で世界を包むように金星が光っている。


 久々にTome館長のイラストを借りました。やっぱり何か心惹かれるイラストがTome館長には多いです。絵の下の名前をクリックすると「明けの明星」の物語があります。


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