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となりの人間国宝さん、棚原安子 82歳 少年野球コーチ

 11月8日の「よ~いドン!」を見ていた。「となりの人間国宝さん」のコーナーで、円広志まどかひろしが南千里近辺を歩いている。

 「あっ、円さん」「いつも見てま~す」という声を聞きながら、若いお母さんの集団が歩いていたのについて行く。お母さんらはフェンスのあるグランドへ行った。フェンスの中ではかなり年のいったおばちゃんが少年野球の子どもたちにノックをしている。

 「となりの人間国宝さん」は、関西の鉄道駅周辺を散策しながら、おもしろい人を探し、話を聞き、すごい人なら「人間国宝さん」に認定する。そうそうおもしろい人に出会えるわけではないので、実際はアポをとって会いに行くこともあるようだ。今回もたまたま会ったというよりも、事前にアポをとっていたのではないかと邪推する。それほどすごいおばちゃんだった。

 毎日1時間くらい小学生にノックをしているのは棚原安子さん82歳。
 元実業団でソフトボールをしていた。同じく実業団で野球をしていた夫と少年野球チーム、山田西リトルウルフを結成し、50年続けている。肩書きはずっと「おばちゃん」。横にいた男の人が三男の徹さんで、彼が総監督をしている。監督がいないと試合ができないからだ。この三男が幼稚園の頃から野球チームを作っていた。夫は現在要介護の状態だそうだが、そんな暗い雰囲気を微塵みじんも感じさせない元気溌剌はつらつとした動きをしている。

 おばちゃんの指導は、礼儀やあいさつを大事にしている。プロ野球選手を作る指導ではない。それでも指導した子どもの中にはプロの選手もいる。オリックスのT-岡田だ。岡田選手は、子どもの頃、近所で虫取りをしていた。体の大きな子どもだと思い、少年野球チームに勧誘して入団させた。今でも毎日チラシを持っており、子どもたちを勧誘しているそうだ。一時は「人さらい」だと言われていたそうな。
 岡田を指導していたこともあり、今年の9月16日に、オリックスの「なにわのHERO特別始球式」に出場した。地域で活躍している人に始球式をしてもらおうというイベントだ。でも、始球式の話は今回のテレビではしていなかったなあ。

 話していたのは目の前にいる子どもたちのこと。母親がお茶を用意したりせず、お茶は子ども自身が用意する。お湯を沸かして自分でお茶をいれるように指導している。ユニホームの洗濯も自分でやるように指導している。小学1年生にもそう指導しているそうだ。
 その話を聞いた円広志が、「ほんまかいな?」と、見学している母親に聞いた。母親は「はい、そうです」と答えたけど、さらに聞くと、何かあやしい。その母親の子どもを呼んで、「本当はお母さんに洗濯してもらってるだろう」と聞くと、子どもは正直。「はい」と答えた。棚原さんは苦笑い。そんなやりとりが「よ~いドン!」のおもしろさだろう。
 会費は安く抑えているので、用品代や遠征費用が足りない。そこで子どもたちに古新聞の廃品回収をさせている。自分でお金を稼ぐことを教えるのだ。
 息子の徹さんも、選手だった頃、ボールをなくしたらずっと探し、見つからなかったら尻バットをされたと話していた。おばちゃんは、「それは昔のことで、今はやさしいですよ」「時代とともに指導法は変えています」と答えていた。
 円広志の質問にも、ぱっと答える。答えの反応が半端なく速い。体もすぐに動く。
 おばちゃんは、「子どもたちに元気をもらってる」と言う。同じ言葉を2~3回言っていたように思う。元気のみなもとは子どもたちなのだ。その言葉を聞いただけでテレビを見たかいがあった。

 後で調べると、今までにも何度かテレビで紹介されており、本も出している。どこかで見ていたかわからないけど、「よ~いドン!」ほど記憶に残っていない。


 「よ~いドン!」は関西の人気番組で、2008年から始まっている。全国で松本人志の「ワイドナショー」が人気になったときも、関西では日曜日に放送されなかった。平日に放送している「となりの人間国宝さん」をまとめた「となりの人間国宝SUN」(Sundayの意味)がその時間帯に放送していたからだ(今は「ワイドナショー」を放送、「よ~いドン!」は土曜日になった)。

 最近は日替わりで散策する月亭八光つきていはちみつの方がおもしろく、円広志が年寄りと話しているものは、あんまりおもしろくなかったけど、今回のおばちゃんは、おもしろかった。おばちゃんは年齢を感じさせない。やはり「子どもたちに元気をもらってる」のだろう。
 おばちゃんの生き様に心動かされた。おばちゃんの言葉に感動した。見てよかった。

 おばちゃんが子どもたちにもらったパワーで、見ている私も力をもらえた。

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