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アサヒビール、期待の新星

はじめに

2019年12月、中国の武漢での発症を皮切りに、新型コロナウイルスは2022年現在も感染の拡大が続いている。国内感染が急激に広がった当初、政府から要請があったのが外出自粛であった。緊急事態宣言が発表され、飲食店や娯楽施設は軒並み営業自粛や時短営業を迫られるようになった。会社や学校がリモートでの実施になるなど国民は自宅で過ごす時間が増えることとなった。
それに伴い、宅飲みの需要も増加した。外に出たくても出られない人々はついに飲み会もリモートで実施するようになった。

宅飲み需要が上昇したワケ

新型コロナウイルスの影響で自宅で過ごす時間が増え、それに伴い家庭で消費される食品は著しく変化した。図にもある通り新型コロナウイルスが出る前の2019年とコロナウイルスが蔓延した2020年のスーパーの飲食料品販売額を見てみると、
感染症が流行した2月から販売額の前年同月比増減率が5月をピークに急激に上昇した。さらに次の図にある酒類の購入金額を見てみるとワインやビールなどが大きく伸びている。おうちで過ごす時間が増え、それと同時にビールなどの酒類の消費が増えたことがわかる。

ここからわかるようにビール会社は家でも気軽に飲めるようなお酒を作れば消費者が求めていた考えに応えることができるのでは、と考えた。そしてアサヒが考えた商品が今回紹介する「生ジョッキ缶」である。

アサヒビールはスーパードライで高いシェアを獲得し、長年ビール市場で首位であった。アサヒの売り上げの半分ほどを占めるスーパードライは飲食店で高いシェアを誇ったため、競合他社はより多く影響を受けた。しかし近年、家庭向けの第三のビールが登場したことによってアサヒビールはビール市場の首位を譲ることとなる。

アサヒビールの市場シェアが低迷した理由はほかにもある。それは、新型コロナウイルスによる環境変化だ。アサヒビールは元々、飲食店のアルコール類としてシェア率を伸ばしていた。しかし、新型コロナウイルスの環境変化によって、自粛期間が始まり外で飲み歩くことが制限され、お店でお酒を飲むのではなく、家でお酒を飲む「宅飲み」が流行した。そこで、アサヒビールが新しく考案した商品が生ジョッキ缶だ。

普通の缶ビールは缶胴内側がアルミのみの平滑な面で、開口時の気圧差でごく少量発砲する。生ジョッキ缶の特徴はアルミ+特殊塗料によりカルデラ状の凹凸で、湧き出るような泡立ちである。アルミ缶の中に、特許出願中の特殊な塗料を焼き付けクレーター上の凹凸を作り、開口時に缶内の圧力が解放されると、このクレーター状の凹凸部分から発砲し、クリーミーな泡立ちを実現している。手や口を切らずに安全に全開するふたの開発、お店の生ジョッキと同等の泡立ちの実現

近年缶チューハイやハイボールなどの安価でおいしい商品が増加した。その中で「家でも生ジョッキが飲みたい」という消費者の要望をきっかけに開発がスタートした。さらに新型コロナウイルスの発生でおうち時間の増加に伴い多くの人が買い求めるようになった。動画サイトでも人気になるほど話題先行で日経トレンディ(2021年)が発表した今年大ヒットした商品にも第13位にランクインを果たした。

なぜ生ジョッキ缶がなぜヒットしたのか

生ジョッキ缶が発売される前からアサヒの看板商品であるスーパードライはビール市場でトップのシェア率を獲得しており、多くの支持を得ている。しかし近年、他社の支持率が上がりアサヒは危機感を抱いていた。そこでアサヒは「家でも生ジョッキが飲みたい」という消費者の要望から新たにスーパードライでの生ジョッキ缶を開発・販売した。

生ジョッキ缶は今までの常識を覆し、顧客に衝撃を与えた。蓋を開けると泡が噴き出て居酒屋でしか味わえなかった生ビールの感覚を簡単に味わうことができ、自分で泡を作り出す遊び心が顧客を喜ばせた。

なぜアサヒビールが全く新しい缶ビールを考案し商品化することができたのか、SWOT分析で確認していく。

SWOT分析

SWOT分析とは、競合や法律、市場トレンドといった自社を取り巻く外部環境と、自社の資産やブランド力、さらには価格や品質といった内部環境をプラス面、マイナス面にわけて分析することで、戦略策定やマーケティングの意思決定、経営資源の最適化などをおこなうための、有名なフレームワークのひとつである。

Strength(強み)Weakness(弱み)Opportunity(機会)Threat(脅威)

生ジョッキ缶発売以前のアサヒビールのSWOT分析

生ジョッキ缶が発売された後のアサヒのSWOT分析

上記により、生ジョッキ缶は宅飲み需要の増加を経て、居酒屋気分が味わえる商品を発売し、アサヒはスーパードライ以外にも看板商品といえるほどのヒット商品を発売することができた。

最後に

近年の宅飲み需要の増加や新型コロナウイルス感染拡大の影響をうけ、おうち時間が増加した。それに伴いスーパーなどで手軽に手に入れることのできる缶ビールに注目が集まったのは必然であるといえる。

そのなかで、アサヒは「自宅で生ジョッキが飲みたい」という顧客ニーズに応えるために生ジョッキ缶の開発に着手した。家飲みの需要が増加している中で新ジャンルを開発するのではなく、以前から売れ筋商品であったスーパードライを使用することを選択した。前述のSWOT分析にもあるように強みと機会を伸ばすことに注力したのだ。

顧客ニーズに応えることともに自社の強みを伸ばす試みにより、居酒屋気分がお家で味わうことができる夢のような商品が開発され、一時は手に入らない事態が起こるほどにヒットした。

参考文献

売れすぎて出荷停止「生ジョッキ缶」アサヒに聞く、仕組みと苦労と再開時期
https://www.asahibeer.co.jp/agecheck/permission.html
SWOT分析  
https://www.innovation.co.jp/urumo/swot/
スーパーの飲食料品販売額
https://www.meti.go.jp/statistics/pr/rikatuyou_20210305/rikatuyou_20210305.html
https://www.trendplus.jp/ranking-beer-202106/
Withコロナにおける食品市場の変化を探る
https://www.meti.go.jp/statistics/pr/rikatuyou_20210305/rikatuyou_20210305.html
家飲み需要の伸長による食卓の変化
https://www.agriweb.jp/column/1480.html
https://gyokai-search.com/3-beer.htm#jump1
https://asahi.gakujo.ne.jp/common_sense/morning_paper/detail/id=3210


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