年齢をどう聞く

 先日、デイリーポータルZの林雄司さんとお話しした。自己紹介をしたら、「新聞記者の方って、インタビューではじめに年齢を聞いちゃうじゃないですか。あれ、うまいですよね」と言われた。後になればなるほど気まずく、切り出しにくくなってしまう、という。

 ここでの「インタビュー」は街頭インタビュー、たとえば政治家のスキャンダルや、大物スポーツ選手の引退発表なんかへの意見を聞くことだと私は理解した。著名人はたいてい年齢を公開している。デイリーポータルZの記事はしょっちゅう「ふつうの人」にインタビューをしている。

 おそらく林さんはこれまで、新聞記者と話をしたことが何度もあるんだろう。そこから得た知見なんだろうが、私自身は、年齢はいちばん最後に聞くことにしている。

 新聞で一般の方に話を聞く場合、本名と市町村までの住所、年齢と職業は必ず聞く。ほとんどの人は、見ず知らずの他人(=取材している私)に、こういう個人情報を話したがらない。そりゃそうだ。なので、まずは名刺を切り、インタビューの趣旨を伝え、実際に話を聞く中で短時間とは言え人間関係をつくり、相手の気持ちをほぐしたうえで最後に聞く。

 この「ほぐす」という工程がおもしろいというか、奥が深い。人と話し、やりとりをすることには原始的な楽しさがあるが、難しい。その極端な形がナンパですもんね。新聞社の名刺があるおかげで、通りがかりの人にいきなり話しかけることが正当化されているだけで。

 ただ、どうしても氏名は言いたくないという人もいて、その場合、インタビューは全部ボツになる。これはしかたない。すごくいいことを言ってくれたのに、名前がわからないから載せられない、という経験は少なくない。最初から個人情報も臆さず出してくれる人に絞れば、話を聞いた上でボツにするインタビューはなくなる。でも、最後に聞いた方がかえって成功率は上がるんじゃないかな。

 ところで林さんは「年齢」と言っていた。確かに、特に女性の場合、年齢を言いたがらない人は少なくない。しかし、「女性に年を聞くのは失礼」という考えの方が、よっぽど女性に失礼じゃないか? こういうのが巡り巡って日本人のロリコン嗜好につながっているのでは。逆か。老若男女だれもがロリコンで、若さをありがたがってるから、こういう反応になるってことか。

 ちなみに、特派員という仕事柄、海外で街頭インタビューをしたことも何度となくあるが、圧倒的に日本より楽だ。中東、欧州、米国で取材経験があるが、どこも日本よりずっと気軽に応じてくれた。女性が年齢を言いたがらないという場面に出くわした記憶もあまりない。日本人はガードが高い。林さんも(日本でのインタビューで)「いちばん答えてくれるのは外国人観光客」と書いていた。この差って、なに。

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