医療費亡国論と実際の現状について

こんにちは。たまにブログ書いてる人です。今回は医療費亡国論についてお話しようかと思います。名前は聞いたことあるって人多いんじゃないですかね??

書いた経緯

経緯という程でもないんですが、twitter等見ていると、医療費について言及してる人ってあんまりいないんですよね。なので、制度的な移り変わりや薬局業務を通して得た実態も含めて書いていこうかなと思いました。

小難しい話も出てきますが、全てを理解できる必要はなく大事なのは関心を持つことだと考えています。そのため話の大筋だけでも掴んでもらえたらそこに意義があるかと思います。医療従事者や医療関係の学生は知っておくべき内容です。
そして知っている人は見なくてもいいです。
ただ、最低限この内容を知っておかないと、あなたは医療費関連の国の政策に対して理解ができずに文句を言うだけの人になってしまいます。
また、これからの医療業界を考えるための「きっかけ」を掴むための読み物として読んでもらうために書きました。
一般の方でも読めるようには書いてはあります。

構成として、基本は事実→実際・考察の順で構成しています。
医療費亡国論の内容(論文の要約のような形になります)
→そうならないようにするために必要なことや実態(筆者の考察等は後半部分)

という構成で作成しております。※内容外のことを書くことがありますが、そういう場合は「補足」や「と思います」というようにわかるように表現しています。

医療費亡国論

これは当時(1983年)に打ち出されたもので、その時の厚生省保険局長(吉村仁氏)が公表した「医療費をめぐる情勢と、対応に関する私の考え方」という論文(主張)に含まれる考え方の内の一つです。

医療が破綻する可能性がある

医療費の高まりが原因とされています。

吉村氏の論文では、国民一人ひとりが(医療費問題についての)関心がないことと、医師にも同じことが言えるとされています。

✓国民一人ひとりが、医療費による危機についての認識が極めて薄い点
✓医師に関しても、医療費についての危機感が薄い点

理由としては、以下が説明されています。

国民一人一人が医療費に関する関心が薄い

医療保険のしくみ自体は1920年頃から作られました。この主張があった頃には皆保険制度が確立しているので、健康保険証を見せるだけで自己負担が安く、効果の高い医療が受けられることになります。
吉村氏は、保険証一枚だせば容易に医療を受けられるためか、関心が薄いのではないかと言われていました。

原因

該当論文内では、病院で医療サービスを提供するときの制度で、現物支給、出来高払いであったために保険の財源のイメージが薄かったのではないかと言及しています。

用語についてサラッと説明しときます。

現物支給

現物支給とは、お金ではなく医療サービスそのものを提供するという意味です
(これについてイメージわかない方はサラッと読み飛ばしてもらっても問題はないです)

出来高払い

今でこそ病院での医療はDPC制度(単品支払いではなく、包括的な支払いであるために、その治療を安く済ませれば済ませるほど病院が儲かる制度)でありますが当時は検査をすればするほどお金が支給されていたんです。

つまり、医師からしても「念の為検査しておきます??」→患者「じゃあそれで」

となるわけです。患者も自己負担が低いので検査を拒む必要もありません
こうして医療費使いたい放題の時代だったわけです。

補足

(当時は病院のサロン化等とも皮肉が言われていましたが、それが老健制度が導入されたというのも要因の一つでもあるかとは思います。
その制度が導入されるまでは70歳以上の高齢者は自己負担なしだったんですよね。
高齢者医療制度創設まで

医療費を考えた3つの視点

吉村氏は、将来の医療費(昔で言う将来なので現在くらいの時期も含みますね)
を考えたときに、視点が3つあると述べました。


1.租税・社会保障費の増大により日本社会の活力が失われる
2.医療費効率逓減論
3.医療費需給過剰論

この3つについて内容を確認していきます。

1.租税・社会保障費の増大により日本社会の活力が失われる

医療費は1830年代のときでさえ、伸び率・医療費が高額だと言われていました。
第1表  国民医療費、人口一人当たり国民医療費及び対国民所得比率の年次推移

これを背景に保険関係の組合が「資金を出さない」という行動も起こしました。(後述)

医療費効率逓減論

医療費が増え続けたとして、その増えた分は
「国民の健康」として反映できるのか?という疑問

「この第二の視点は、医療費を投入すればそれだけの治療の効率が見込めるのかどうか」という視点です。

疾病構造が、慢性疾患が多い→予防を中心にすれば良いのではないか

医療費(治療費)の投入に対する「効果が伸びないために予防や生活指導に力を入れた方が効果的ではないかという指摘です。
(補足:この考え方はほぼセルフメディケーションです。)

医療費供給過剰論

医療は、供給と需要どちらも過剰気味になっているのではないかという視点

プライスメカニズムが働かないという表現で、需要も供給どちらも過剰になっているのではないかと指摘されていました。

供給量が多い理由


●医師数が過剰
●病床数の水準が高く、また増加傾向にある
●高額医療機器の水準も高い
●薬剤の投与や検査数も多い

需要の多さについて

●あまりにも手軽に医療が受けられる
●在院日数も長い

また、気軽に医療を受けるあまり「病院のサロン化」や「医療機関のハシゴ」と皮肉に表現もされていました。

医療費亡国への対応

吉村氏は保険医療の費用をいかに抑えるかという考えを述べています。

医療費は保険料が大部分を占めるので、医療費が増えるということは保険料も増えてきます。保険料は労働者から徴収されていますので、勤労者層の収入は更に減っていきます。

医療費の増大そのものが問題なのではない


負担率を問題視しています。

医療費が増えることそのものはそんなに問題視されてはいません。
例えば、医療費の伸びが「皆さんの所得の上昇に合わせた程度の伸び」であれば、
「負担額は増えても本人たちが負担に感じるか」はそんなに増えないはずですよね。(※この表現に関して、少し私の解釈が入っています)

医療費効率逓減論

治療から予防メインにしていく

成人病や心因性の病気に重点を絞り、予防・健康管理・生活指導に力を入れて、
医療費=治療費の枠組みから外れるような医療を目指すことを提案されています。

これを続けることで医療費の適正化を図ろうと考えられています。

医療費需給過剰論

過剰となる部分へのメス入れ

供給面

供給面では医療法の見直し、特に地域の病院・診療所のネットワーク形成の他、医師や歯科医師の定員の見直しが大事であると述べられていました。

需要面

需要面では、患者教育・健康教育を通じて
①かかりつけ医をもつこと
②適正な受診をすること
③自分の健康は自分で作っていくような習慣づくりの推進
その他、必要なら一部負担の見直しなども考える必要があると提案されていました。

ここまでが問題提起です。

筆者による補足

医療費亡国論が打ち出された時期や背景

これが打ち出されたのは1983年頃でした。
なぜこの時期だったのかというと、恐らく当時の医師会会長だった(武見太郎氏)という方が会長職を退いたことからだと思います(書籍でもそういう風に書いてることものもありますが、そこに責任をなすりつけるのもどうかと思いますので、ここではブログ主が勝手に思っていることということにしておきます)

この、武見太郎という人は医療のリード力がかなり強く、時には診療報酬に納得いかなかったときに医師の大半を巻き込んでストライキを決行する等、カリスマ性・行動力も凄かった人であったため、この人が生きている内には医療費亡国論は出したくなかったのかもしれません。(1983年12月に死去されています)
保険医総辞退について

老人の医療費が増加してきていた時期

老人の医療費無料の時代

昭和48(1973)年頃から始まった老人医療費無料化ですが、この制度に加えて大病院志向やフリーアクセスが災いして、「安心を得るための受診」が病院にあふれるという自体が発生しました。

詳しく知りたい方はこの記事を読んだ後にでも目を通すと良いかと思います。
日本の社会保障の仕組み

日本の社会保障の仕組みより引用
”日本では、国民皆保険制度により、全ての
人が、必要なときに、必要な医療を受けるこ とを保障している。また、患者がどの医療機 関にも制限なく受診できる「フリーアクセ ス」、原則出来高払いなどの特徴を持ってい る。
このような状況下では、もし一部負担がな ければ、不安に駆られた患者側は、安心を得 るために医学的・客観的に必要な回数以上に 受診(過剰受診)してしまう可能性がある。 他方、医療サービス提供者側は、診療報酬が 原則出来高払いのため、患者から求めがあれ ば、念のため診察して、結果的に過剰診療を してしまう可能性がある。実際、1970 年代 に老人医療費の無料化が実施されたときは、 高齢者が病院の待合室を憩いの場とする「病 院のサロン化」や過剰診療が問題となり、保 険財政も厳しい状態になった。”

詳しくは後述しますが、とにかく

自己負担が安く(無料)、見かけ上の医療費が安いために不要な受診をするようになった

という事実に基づいた視点が大切です。

租税・社会保障費の増大により日本社会の活力が失われる②

補足です。

実際に老人医療費が無料になってから、国民医療費が跳ね上がっています。

画像1

第1表 国民医療費、人口一人当たり国民医療費及び対国民所得比率の年次推移
をもとに筆者が作成

赤い枠で囲った部分を見てください。老人医療費の無料化制度が確立してから医療費が一気に上昇して、その後緩やかに(上昇率は)下ってきています。
この中に「病院のサロン化」や「医療機関のハシゴ」という皮肉がたくさん含まれていたんです。「安心を得るための受診」の増加の実態です。

その後の医療費の増大は高齢化と医療の発達が主な理由(詳しくは後述)ですので、性質はやや違います。

病院がサロン化した理由

検査漬け・薬漬けという背景と、フリーアクセスという患者の意思で病院を選択できてしまう制度

検査漬け・薬漬けについて

当時の医療費の増大の原因として検査漬けや薬漬けが問題視されていました。

この検査漬けの背景は「出来高払い制度」です。

今は包括的な請求(給付)になっているのでこれには当てはまりませんが、薬漬けはある意味未だ解消されていません。(マシにはなってます)

出来高払い制度とは、「積み重ねて検査をすれば、その分の給付は受けることができる」という仕組みです。
どんだけ検査しても病院にダメージはないわけです。

そして、勤務する医師は「サラリーマン」ですから、行った検査数が多いからと言って、給料が減らされるわけでもありません。

そして患者の自己負担は安い(自己負担が0の時期は特に)ですから、
(特に不調がなくとも)「念の為に検査してもらっていいですか」

というやりとりの結果として、不要な検査が増えるわけです。

先程も述べたように「見かけ上の医療費が安いこと」が「無駄な医療費を生む」ことの根拠の一つです。

薬漬け医療

今回深くは説明しませんが、医薬分業にも関わってきます。

薬価差益というものをご存知でしょうか。

仕入れ値と、実際の相手の購入額(請求できる薬剤料)との差による儲けです。

たくさん仕入れればその分値引いてもらえるために(全部在庫がはければ)値引き分は儲けになります。

今は改善されていますが、この薬価差益が昔はめちゃくちゃ高かったです。

じゃあどうなったのか。

薬漬け医療そもそもの原因

薬剤師から薬の内容についての説明がなかった
→患者は自分の飲んでいる薬について関心が持てなかった
→患者は言われるがままに薬を飲む状況

これが薬漬けの背景です。

ビタミン剤とか「効いているのかよくわからない薬」を
患者に何種類も出して、また受診させるんです。
(医薬分業が主流になる以前は、院内薬局でのお渡しであり、現在のように詳しく説明・指導されていませんでした)

説明といえば「お薬です!ボン」「朝に飲んでください!」
これくらいで終わりです。「どんな薬かの説明」はされないのがほとんどでした。

それにより、患者は「よくわからないけど、まあ飲んどいたら良いか」と何も疑問を持つこともなく

薬を無駄に飲んで医療費も高くなっていったわけです。


※昔の院内薬局については、周りから色々聞き取った話です。信じられないなら年配の薬剤師にでも聞いてみてください。

(誤解を招くといけないので補足しておくと、現在の院内薬局は状況が違いますので、説明受けるはずです。)

こういう薬漬けの背景から医薬分業が進められました。(他にも名目はあります。)

薬漬けの本質的な原因

患者教育の不足

薬価差益による薬漬けは現在はほぼありません。
ですが、それに取って代わったような立ち位置で
患者呼び込みのための無駄な処方」や「健康保険の無駄遣い
は未だ続いています。

これの本質は「患者の医療に対する認識・知識が浅く、思考停止している」ことであるために制度は変われども上記のような問題は解決されないままになっています。(後述)

少し話の順番が前後していますが、このように
「老人による医療費が急激に増大したこと」
「フリーアクセス」
「不安の解消のための受診」
等の要因が重なることによって、一部負担金が導入されました。

このような背景が病院のサロン化と皮肉を言われ、
老人医療費無料から、一部負担金導入されたことへの経緯です。
(少し話の前後があったり、内容が重複したりしますが、本質的には同じことなので問題ないと思います)

保険や公費から支出される医療費が高くなりすぎると
病院が倒産して医療が受けられなくなる可能性がある

病院等の保険医療機関は不良債権がないため、
取りはぐれることはほぼないです。
それは国民健康保険制度に基づいた徴収方法だからです。

患者からは一部を徴収して、残りの大部分は保険組合から支払われているために、「少なくとも7割以上は」回収ができます。
もし、この「保険組合から回収ができなくなったら」病院はどうなるのでしょうか。

保険の組合がストライキ?

老健拠出金不払い運動(H11年)

高齢者の医療費がどんどん高くなり、組合の負担が大きくなった

高齢者に対して一部自己負担をさせる老健制度でしたが、医療費が高まるにつれて健保組合(主にお金を出しているところ)の負担が大きくなってきました。
具体的には、健保組合の収入に対し、昭和58年では13%だったものが平成11年で約40%にまで増えました。

結果、健保組合の約97%が拠出金を払わないという自体が起こった

そ の 割 合 は 、健 保 組 合 の 収 入 に 対 し て 昭 和 5 8 年 で は 1 3 % だ っ た も の が 、平 成 1 1 年 に は 40%に増大しました。老人医療費にかかる負担が年々大きくなってきたため、健保組合の 約97%、1,739の組合が拠出金を払わない「老健拠出金不払い運動」が発生しました。

”※ 1 健 保 組 合 は 老 健 制 度 を 財 政 面 か ら 支 援 す る た め 老 健 拠 出 金 を 支 払 っ て い ま し た 。 そ の 割 合 は 、健 保 組 合 の 収 入 に 対 し て 昭 和 5 8 年 で は 1 3 % だ っ た も の が 、平 成 1 1 年 に は 40%に増大しました。老人医療費にかかる負担が年々大きくなってきたため、健保組合の 約97%、1,739の組合が拠出金を払わない「老健拠出金不払い運動」が発生しました。”

東京いきいき通信vol4より引用

”老健制度の財源に占める健康保険組合の拠出金の割合の上昇に対する反発も大きい。 厚 生労働省 『老年医療事業年報』 および 『老人医療事業報告』 によれば、 その割合は制度発 足当初の 10 数%から 1990 年代末には 40%を超えるまで上昇しており、 1999 年には、 健 保組合による老健拠出金不払い運動に発展した。”
医療保険制度の財政制約、 制度間格差と制度改革 後期高齢者医療制度を巡る政策決定過程 1 より引用

本来なら回収できるはずの報酬が回収できなくなったら

病院はどうなるのでしょうか。

保険の組合から診療報酬を回収できなくなる可能性を示しました。

事実こういう自体も起こっているわけで、病院も薬局も他人事ではないんです。

ここ数年レベルの最近でも「運営ができなくなって解散する保険組合」も出てきています。

病院が潰れて医療が受けられなくなるのは、患者本人たちです。
病院が潰れると、そこで働いていた人たちもまた影響受けることになりますので他人事ではないです。

フリーアクセス

これが現代の医療の最大の問題点です。
日本は患者の行動を縛る仕組みがありません。
(いきなり大病院を受診すると、支払うお金が少し増えるなどの経済的な行動制限はありますが、患者の意思を阻害して受診を制限する仕組みはないです)

「患者が制限なくどこの医療機関でも受診できる」
この仕組みをフリーアクセスと呼ばれています。(海外の先進国はフリーアクセスがないところもあります。)

そして、この仕組みが患者のモラルハザードを引き起こす要因になっています。

筆者はフリーアクセスの仕組みを「必要だ」と考えていますが、
「やりかたを考えないといけない仕組み」だとも考えています。(後述)

膨れ上がる社会保障費に対してどうするか

膨れ上がる社会保障費に対して、対応としては大きく2つに分けられると私は考えています。

①財源を増やす方法
②社会保障費の支出を減らす方法

①財源を増やす方法

財源の収入を増やすために

これは簡単に言うと、保険料(組合の財源)を増やしたり、所得税等の税金の収入を増やすことでそれらを財源とする方法です。

メリット

ないです。労働者層の可処分所得が落ち込んで、
消費が落ちて経済が悪化していく要因になるだけです。
実際に消費税等、増税すると経済は落ち込みますよね。

デメリット

上にも書きましたとおりです。

保険料を増やすとすると、保険料は基本的に働いている人から徴収されるものですから、収入のある人達からの徴収となります。

お給料・ボーナスから引かれる額が大きくなるということですね。
若年者の負担が更に大きくなる可能性が高いです

2.社会保障費の支出を減らす方法

支出を減らす方法ですが、私は今思いつく限りでは、2つほどあります。
①そもそも不要な医療を受けさせないようにする方法
②患者の自己負担額を増やす方法

不要な医療を受けさせないようにする方法

✓寝とけば治る風邪には薬を出さない
✓花粉症等、季節のアレルゲンが原因のものは受診しない
✓保険免責制度の導入


等のように
いらない処方は出さない対策であったり
花粉症ということが明らかなものは受診せずに市販薬で対応するという制度が必要になります。

実際にこの話は以前から言われており、昨年12月頃に医療業界でも話題になりました。

市販類似薬は保険対象外 病院処方の風邪薬など 医療費抑制へ政府調整

この内容は大まかに以下のとおりです。
●市販の医薬品で代用できるものは保険効かなくするべきという話が出た
●対象は軽症のものとし、特に風邪薬、花粉症の薬、痛み止めの貼り薬、皮膚保湿剤、漢方薬
●市販薬でも対応可にもかかわらず、わざわざ受診する原因は「体感的に安く済ませられるため」
●これらは過剰受診の要因になると考えられている
●この方針で制度設計すると、年間約2100億円の削減ができる見込み
●医師会は反対した
ちなみに医師会は以下の理由で反対したようです
「軽微な症状での受診を控えることにより、重症化する恐れがある」
「重篤な疾患だけを保険給付の対象とすれば社会保険の恩恵が薄れる」

「重篤な疾患だけを保険給付の対象とすれば社会保険の恩恵が薄れる」という意見について

吉村氏の論文で、以下のような記載があります。

”本題の論文内で花岡日医会長が「保険というファンドを食いつぶしてはならない」と繰り返して会員に説いておられるのも裏返して言えば、そのような点を意識していない会員がいるためであろう”

まさに今の現状を表していると思います。
当時は出来高払い制だったという違いはありますが、
現行のDPC制度に置いても医療費のファンドに限りがある点では変わりませんし、必要な人に使われるべきだと私は考えています。

市販薬で対応できる可能性の高い花粉症の薬等に保険をつかうのが正しいと言えるのでしょうか。


市販薬でも対応できる薬に「社会保険の恩恵が薄れる」といってずっと保険から支出するのはのは正しいのでしょうか。少なくとも財源に余裕のあるときの話だと思います。

効いているのか判断しにくいものを処方するという【技】
〜ビタミン薬を例に〜

なぜここまで市販薬への切り替え制度を拒み、
医療保険から出資させようとするのかを考えてみました。

例としては先程も書きました「薬漬け」の部分と被りますが、少し内容を補足しています。


例えば効いているのか効いていないのか判断しにくい「ビタミン剤」を例にあげてみましょう。
「よくわからないけど身体が怠い」という患者さん。

貧血やストレス、実際は原因不明ということもよくあり、それでビタミン剤が出ることもあります。
初回はそれで良いかもしれません。でも再来局時に患者に効いているのか聞き取ってみると、
「効いてるのか効いていないのかわからんけど飲んでる」
といって何ヶ月も飲んでる患者さんもいらっしゃいます。
そして血液検査をしているわけでもなく、(欠乏してたとしても)何のビタミンが不足しているのかもわからない状態です。
このように、患者の無知を良いことにして「受診させる」状態を作り出す

としたらどうでしょうか。ありえそうではないでしょうか?まさに薬漬け時代を思わせますよね。(何を言われるかわからないのでだいぶ濁しています)

医師の能力を評価することは現代でも聖域とされているはずです。
しかし、この方法ならどんなに腕の良くない医師でも患者を継続的に呼び込むことができますね?

「重篤な疾患だけを保険給付の対象とすれば社会保険の恩恵が薄れる」

とはいいますが、実際に「受診にかかる費用」+「薬局でかかる費用」を合わせて計算したら保険を使ったとしても(市販薬を購入しただけの金額と比べて)そんなに変わらないはずですよ。(あくまでも「必要最低限分の日数を処方する」という前提に基づいてですが。)


頑なに(市販薬代替可能でも)保険給付から外さないというのをしていると、そういうことじゃないの??って思われる可能性もありますよね。


現在は大病院じゃなくても診れる患者は町医者(小さい診療所等)に誘導する方向になっている。


そして医師会に所属している先生は勤務医と開業医のどっちが多いのか…


ここを考えると自ずと答えは出てくるかと思います。


※儲けのためだけに受診させていると思われないようにするメリットもありますし、保険給付から外したほうが良いのではないか?という意見です。

具体例

この方は門前の病院に「疑義照会するな」「患者に余計なことを吹き込むな」

というような薬局としての機能を否定する医師のお話です。

今回はフェイルセーフ的な話はするつもりないので、そこはスルーしますが、
(フェイルセーフ的な話はここに書いてます)
【外野が考察】”10倍量”の薬を処方→小児が意識障害 尼崎総合医療センター【医療過誤】

京都大学医学部附属病院の炭酸水素ナトリウム(メイロン)誤投与のアレ。過量投与の医療事故について医療者的立場から考察

話戻りますね。
大事なのはここです

患者に余計なこと吹き込むなという医師

これ、どうでしょうか?

薬漬け医療の本質をお話しましたね。「患者の無知を良いことに、好き放題する」

そういうことする先生もいるということです。

医師のモラルも医療費に寄与するというお話です。

出来高払い制度による過剰診療という形から
患者呼び込みのための無駄な処方という形への遷移

出来高払いによる過剰診療と、患者のモラルハザード(不要な受診)については既に説明しました。

現代では、患者呼び込みのための不要な処方(又は患者の希望した薬の処方)
という形に変わっています。
(もしかしたら昔もこの形は存在していたのかもしれませんが)

この原因は、フリーアクセスと、患者教育の不足が原因であると私は考えています。

フリーアクセス(2回目)

フリーアクセスという仕組みが、不要な薬を処方したり、医療費高騰の原因かもしれません。

このフリーアクセスは、1963 年の国民皆保険制度の確 立と併せて実現しているが、1973 年に老人医療費が無料 化されたことを皮切りに、医療の供給過剰、患者の大病 院志向、社会的入院、医療費の上昇などが重なって社会 的な問題となった。このため、医療費高騰の原因として フリーアクセスが注目されるようになり、今日に至って いる。
医療保険におけるフリーアクセスをめぐる論理、倫理問題、合意状況


※フリーアクセスとは特に制限なく、どこの医療機関でも受診が可能なしくみです。
この制度があるおかげで、患者は自分の意志で病院を選択できます。
患者が好き放題するので、保険免責制度というものも提案されてきました(医師会が拒否で実施ならず。)
これは、「例えば医療費無料の方でも定額の負担金を発生させたら過剰な受診をやめるのではないか」という考えに基づいた制度で、
「5000円の支払いであれば、1000円は完全自己負担し、残りの4000円は保険から支払いますよ」というイメージです。

却下されたのは恐らく病院の儲けが減るからでしょう。
また、これはかかりつけ医の発端となる仕組みです。


各国のかかりつけ医制度はここに参考になるものを置いておきます
医療連携体制・かかりつけ医、医師確保との関係について

フリーアクセスのメリット

✓緊急時や旅行時等のような非常時に(どこの)医療機関でも受診できる

✓患者の判断で、「本当にヤバいDr」を避けることができる

これらはそのままです。ここまで読んでいただけている方々ならイメージはわくかと思います。

✓医療機関の間で(医療内容ではない)サービス内容の競争が起きる

患者が受診する機関を選択できるため、
医療機関は患者に対する(医療以外の)サービスを向上させることが見込めます。

デメリット

患者教育ができてない場合、受診するたびに別の病院(診療所)を受診する
(紹介状なしで大病院を受診したりも含む)

受診したとしても、そのときに診ている医師がバラバラでは根本的な治療が変わることがあります。

処方に納得がいかない場合、別の病院を受診しようとする

これが「患者の望む薬を処方する医師」の構造を生み出します。

倫理感を持たない医師が残りやすい構造

例えば、「風邪なので抗生物質を出してほしい患者」が、
「風邪の殆どがウイルス性のために抗生物質は出さない」先生を受診した場合どうでしょうか。

「風邪には抗生物質が必要」と考えている患者は「別の医療機関を受診」して、「薬をもらおうと」します。

これは開業医の先生にとっては大ダメージです。顧客が一人いなくなるわけですから。そういうわけで「患者の言うとおりの薬を出す医師」は存在して、世の中に残りやすいんです。お金の出どころは患者ではなく「皆保険制度」ですからね。

これが皆保険というファンドを考えない医師や
患者の健康を考えない医師が残りやすいという構造です。

このように
「専門的な知識もなく、自分にとって都合の良い考えを持った患者」
によって病院や診療所・薬局のあり方が動かされているわけです。

参考の記事も載せておきますね。

美容クリームより処方薬?
医療用医薬品
OTC医薬品
美容には、何万円もする高級クリームよりも、医療用医薬品
「ヒルドイド」がいい――。
種類 医療費 銘柄 薬価 3割負担 1割負担 銘柄 価格 (現役) (高齢者)
ここ数年、女性誌やウェブに、こんな特集記事が続々と出
る。保湿効果があるヒルドイドは、医師が必要だと判断した
場合のみ処方されるが、雑誌には「娘に処方してもらったも
のを自分に塗ったらしっとり」といった体験談も載る。
ソフト軟膏タイプの50グラム入りで1185円。保険がきくので、 患者負担は現役世代なら3割の350円余り、子どもなら自治 体によっては無料になる。東京都内の40代の開業医は「患者 に『多めに出して欲しい』と言われれば、出さざるを得な い」と話す。
(朝日新聞 29年8月31日 朝刊)
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia291025/01.pdf


かかりつけ医が機能しない

かかりつけ医の意義を理解していなかったり、
思考停止で教育の困難な患者も多いためにかかりつけ医の前提が崩れていると筆者は考えています。

(この「自己負担が低い患者」の教育ははっきり言って困難です。
医療費の抑制のための政策に対するインセンティブがほぼないからです。)

例えば、「低い患者負担である ためコストを抑制するインセンティブが患者側に生じに くい構造」(同b,p.23)や「フリーアクセスゆえに誰も がどんな医療機関にも受診可能である」(同b,p.23)こ とが、医療費を膨張させる原因として受け止められてい る。この問題について関係者からは「医療のフリーアク セスが無駄遣いにつながる」(土居・森信,p.220)、「患者 の受療行動を決定する情報の不足や、リテラシーへの専 門家の関与の不足のため、よくある疾患であるのに、自 己の判断で大病院に受診してしまい、フリーアクセスの利便性が、むしろ弊害となり重症化を招いている」(井伊,
p.10)と指摘している。さらには、このフリーアクセスが、
医療のニーズと受診先の診療機能のミスマッチによる効
率の低下を招くだけでなく、複数の医師がばらばらに関
わることで適切な意思決定を損ないやすいと批判してい
る(医療・介護に関する研究会,2016)。これらの問題へ
の是正策としてフリーアクセスを制限することを要求し
ている(10)。そして、それらの論拠となったのが Green et
al.(1961)や Fukui et al.(2005)による研究である。これ
らの研究では、人々の健康問題の多くが病院医療や専門
医による診療が不要な軽症で済んでいることが報告され ている(11)。
医療保険におけるフリーアクセスをめぐる論理、倫理問題、合意状況

また、かかりつけ医に関してアンケートを行ったデータがあります。

医療機関受診に対する考え

外来医療(その4)平成30年1月10日より引用
出典:平成23年11月17日 「医療に関する国民意識調査」 ―調査結果報告の要旨―健康保険組合連合会

このアンケートをとった対象がはっきりとは書いてなかったので明確ではないのですが、国民と言っているので一般人でしょうか。

 A≒自分で選ぶ病院を決めたいタイプの人の言い分

1.その都度、その時の症状に応じて専門医に診察をしてほしい
2.いつも高度な医療機能を持つ大病院を受診したい
3.いつも同じ意志の診断ばかり受けていては不安

やはり大病院志向というのがありますね。ただ、この言い分を通す前提としては「患者が自分の病気の重さを判断できて、医師の腕を判断できる」能力を持っていないと成り立ちませんよね。

少なくとも「医師より診断できる」能力がないと適切な病院を選ぶのは難しいと思いますよ。

想像ですが、上でも述べたように「自分の思った薬が出ないと他の病院へ行く層」だと思います。
この「専門医」ってのも「自分の思った薬を出してくれる医者」とかいうオチだと思いますよ。

アンケートとって、どんな年齢にどんな層が多いのか、クラスター解析とかで誰か研究してほしいですね。

B≒かかりつけ医の概念に沿った考えを持った人の言い分

自分だけで、そのときの症状に応じて適切な医療機関を選ぶことが難しい

医師によって診断結果が変わっては不安


自分の考えは素人だから…というような不安の持ち方がありそうですね。
医師によって診断結果が変わっては不安ということから、
「正解に近い考えを持っている」とは思います。
医師がコロコロ変わると、(薬局も、診断する医師も)もともとの意図がわからなくなることもあるはずですしね。

「フリーアクセスは制限するべきか」について
医師に行ったアンケート結果

実は医師に行ったアンケートでこういうものがあります。

Q この4月から、特定機能病院と、一般病床500床以上の地域医療支援病院では、紹介状なしの初診の際 は5000円以上の定額負担が義務化されました(以下、定額負担制度)。これまで、日本の医療ではフリーア クセスが基本になってきましたが、医療費抑制のためにかかりつけ医制度を促進し、フリーアクセスを制限 すべきとの意見も聞かれるようになりました。今後、医療へのアクセスについて、先生はどのように考えます か。
社会保障①

ちょっと設問に誘導がかかっているような気がしますが、
7〜8割の医師が「フリーアクセスは制限するべき」と回答しています。

このことからも、「患者の意思で病院を選択させて受診させると何かしらの問題がある」と先生も考えているということです。

その理由の内訳はアンケート見当たらなかったのでわかりません。

フリーアクセスについてはこんなもんでいいでしょう。これについては最後に、
各国のフリーアクセス等の制限の比較を載せておきます。

○ 外来医療に関し、諸外国においては、医師の診療所開業や診療科標榜についてのコントロールや、
医療機能を踏まえた適切な外来受診のための仕組みが導入されているが、
我が国においてはこうした仕組みはほとんど設けられていない。

外来医療にかかる諸外国の制度的対応

フランス・ドイツ・イギリス・日本を比較

引用:https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia291025/01.pdf

不要な医療を受けさせないようにするには「患者の教育」や、「Drの倫理感」が大切だというお話でした。

こちらも参考になるかと思います。日本と諸外国の医療水準と医療費

2自己負担を増やす方法

こっちがメインですね。

まず、どんだけ社会保障から出てるのかということについてお話していきます。

人口構成の比較(1960年頃と現在)

皆保険制度が確立したのは1960年頃(国民健康保険法の全面改正が1959年施行)
でしたので、その頃の人口構成と今の人口構成を比較します。

人口構成 ピラミッド1960-2055

社会保障の検証と展望 ~国民皆保険・皆年金制度実現から半世紀~より

皆保険が成立した当初は老人が少なく、税金を納める人口が多かったのがわかりますね。

2025含む人口ピラミッド

2025年はこのようになっています。

昔に比べて75歳以上の人間が多くなっていますね。
働き手自体の人数はそこまで変わっていない感じがしますが、
ピラミッドの下の方(子供)が少なくなっているので、
医療費を使う人間の数と、税金を納める人間の数にアンバランスが生じています。

さて、この記事の内容で、「負担費用が安いと、モラルハザードを起こす」という話をしました。

「実際の自己負担がどのくらいなのか」ということと、
「他国比較で、どのくらい社会保障が支出されているのか」
という観点でお話していきます

これは他国と比較して、「社会保障支出と国民負担率のバランス」のグラフです。

OECD諸国における社会保障支出と国民負担率の関係


直線に入っているならバランスとしては適正と考えてもいいでしょう。
皆保険が確立した当初(1960年〜)は適正でしたが、2015年あたりからは
「社会保障支出」が明らかに高くなっています。
2025年くらいになると、(位置としては感覚的なものになるが)
他の国ではありえないような直線からの離れ方になっていますね。

これが「海外と比べて、社会保障支出が高い」という根拠です。

これだけ高い社会保障支出ですが、軽症例で受診する患者ってどのくらいいるのでしょうか?

約4割が軽症でも受診しているという根拠


社会保障1 (総論、医療・介護制度改革)

財務省の出している
保健医療2035提言書(抄) (財源確保に関する記述;平成27年6月「保健医療2035」策定懇談会では、
財源の確保については「患者負担・保険料・公費のいずれかで賄わなければならない」とされています。

不必要に低額負担となっている場合自己 負担の見直しや、風邪などの軽度の疾病には負担割合を高くし て重度の疾病には負担割合を低くするなど、疾病に応じて負担 割合を変えることも検討に値する。
保健医療2035提言書(抄) (財源確保に関する記述;平成27年6月「保健医療2035」策定懇談会

また、患者負担や保険料については、負担能力に応じた公平 な負担という観点から、所得のみならず、資産も勘案したもの にすることや、資産に賦課した上でリバースモゲージの活用も 含む死後精算を行う仕組みとすることなどについても議論して いくことが望まれる。
保健医療2035提言書(抄) (財源確保に関する記述;平成27年6月「保健医療2035」策定懇談会

財務省資料にもありますが、

①不必要な定額負担の場合、軽度の疾病は負担割合を高くするという方法も効果的です。


そもそも、自己負担が低いから患者がモラルハザード的に行動するという話をしましたね。

○ 26年度診療報酬改定で創設された地域包括診療料の算定 は広がらず、「かかりつけ医」の普及や外来の機能分化は十 分に進展していない。
○ 諸外国と比較して、我が国の外来受診頻度は高く、多くは
少額受診。限られた医療資源の中で医療保険制度を維持して
いく観点からも、比較的軽微な受診について一定の追加負担
は必要なのではないか。
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia281004/01.pdf

外来受診の4割が軽症例の話に戻ります。

外来受診に関するデータ

これも財務省の出しているデータですが、大事な点が2点あります。

他国と比較した日本での「年間外来受診回数」

は世界で2位に位置する(高順位)

外来医療費の1件あたりの診療報酬点数の分布では、「4割が5000円未満」

ということです。

軽症例でも簡単に受診していると考えても良いのではないでしょうか。

簡単に受診しすぎている内訳を研究等して、そこに対策を持っていくことです。

自己負担の引き上げ保険免責制度の導入でこのあたりは解決することでしょう。

ジェネリック問題

現在、医療費にしめる薬剤費の割合は高いのでジェネリックを使用するように推進されています。

ジェネリックで使用することによって、半額以下に抑えられる場合も多いです。

ジェネリックの話をするにあたって、どれくらい薬剤費がかかってるのかを説明します。

医療費の構造と診療報酬本体

財務省 医療 より

薬局でかかる費用の内8割が薬剤費で、
病院でかかる費用の約2割が薬剤費
という根拠です。

調剤報酬(薬局での支払い)の内訳で、約8割が薬剤費というのは知っていましたが、
診療報酬(病院での支払い)のうち2割しか占めないのは正直意外でした。

とにかくそういう割合になっています。

あまり分量書いても仕方ないので、参考になりそうな記事を置いておきます。

薬局での支払いの内訳に関する記事

医療費削減に薬局を叩くことが妥当なのかどうか(患者を増やしているのは病院である)

高齢者にどのくらいの金がかかっているのかという記事

75歳以上2割自己負担法案お流れ。データも合わせて高齢者の自己負担を引き上げる必要性について考察

ジェネリックで費用を抑えやすいのは薬局

上の記事を読んでもらえたらわかります。
薬局での支払いの8割の部分にメスを入れているんですね。
(薬局技術料等の2割の部分にメスいれても効率悪いですよね)

H28年で単純計算すると、
(医療費約42兆円、医科診療71.6%,歯科診療6.8%,調剤報酬18%で計算) 


医科診療(約30兆円)×0.2(20%) +歯科診療(約3兆円)×0.1(10%)+調剤報酬(約7.5兆円)×0.8(80%)

≒6兆+3000億+6兆
≒約12.3兆円

が薬剤の料金になるわけです。

高齢者は自己負担が安いがために、ジェネリックに変更する割合は低いです。
ジェネリックのメリットは安さ以外にもありますが、あの年代はそもそも人の話を聞いている人のほうが少数です。

高齢になるほど、GEに対してアレルギー反応が出ているような気がします。

彼らからは、「金額とかどうでもいいから早く帰りたい」
という態度をとっている印象を私は受けています。
そりゃあ金額とかどうでもいいでしょうね。
1割負担とか2割負担なんですから。高齢者は。
金額的なインセンティブは3割負担に比べて、弱い」と考えられます。
また、透析している患者などでは支払いに上限額が儲けられているため、
ジェネリックにしようが先発の薬を使おうが600程度の支払いに留まる」という
不合理的な状況が発生します。
これも同様にジェネリックに変更する意義の一つが失われます。

各国で比較してどうか

各国の後発医薬品数量シェア再診

後発医薬品使用割合の推移

GE数量シェア等

OECD 諸国における後発医薬品の普及率

割と現在に近い年度でのデータかと思います。

他国に比べて、どの年度でも後発品のシェアが低い傾向がありますね。
どのような要素があるのでしょうか。

各国での制度的な比較

フランス

”フランスにおける後発医薬品使用促進策
フランスにおける主な施策として,1999 年に薬局での後発医薬品に代替調剤する権限を付与し, 2006 年には代替調剤の推進を監視するための指標として「後発医薬品調剤目標値」を導入した. 2012 年には後発医薬品調剤努力に対するボーナス支払い(pay for performance:P4P)を導入した.”
OECD 諸国における後発医薬品の普及率

ドイツ

”ドイツにおける後発医薬品使用促進策
ドイツでは 1989 年に,後発医薬品を標準価格とする参照価格制度が導入された.また,参照価 格よりも 30% 以上安価な後発医薬品が調剤された場合には患者自己負担が免除または半減される 自己負担軽減制度が 2006 年より導入された.”
OECD 諸国における後発医薬品の普及率

6-1 ドイツ ドイツでは参照価格制度が導入されている。この制度はドイツ以外のヨーロッパ各国で
も広く導入されている。参照価格制度とは、ジェネリック医薬品の価格を参照価格として 設定し、医師が参照価格よりも高価な薬を処方した場合、患者がその差額を自己負担する 制度である。この制度では先発品とジェネリック医薬品の価格差が患者の自己負担となる。 
ジェネリック医薬品による国民医療費抑制に関する考察

イギリス

イギリスでは一般医(general practitioner:GP)が処方せんを発行し,患者が選んだ地域薬局で 調剤が行われる.GP の処方に際しては一般名処方が主流となっている.また,地域薬局では先発 医薬品よりも後発医薬品を使用することで薬価差が得られる仕組みとなっている.これが地域薬局での後発医薬品調剤につながり,プライマリケアにおける高い後発品使用率に寄与していると考え
られる.
OECD 諸国における後発医薬品の普及率

アメリカ

次にアメリカの取り組みについて述べる。アメリカではジェネリック医薬品に関する治
療上での同等性や安全性に関する情報提供を行うことで、医師・薬剤師と医薬品メーカー の間の「ジェネリック医薬品の質に関する」情報の非対称性を解消し、ジェネリック医薬 品の数を促進する試みがなされている。 まず、同等性に関する情報提供として、アメリ カ政府のFDA(Food and Drug Administration:連邦食品医薬品局)という機関が、1979年 以降ジェネリック医薬品と先発医薬品の同等性の判定結果を掲載したオレンジブックとい う公文書を定期的に発行している。また、両者が治療上同等であるかのわかりやすい情報 をホームページにのせることなどが行われている。よって、ジェネリック医薬品の中にも 同等性に関して差があることを認め、その情報をわかりやすく伝えている。
安全性に関する情報提供については、メドウォッチを使用している。メドウォッチとは 1992 年から導入された患者、医療機関、製薬企業が直接国に対し副作用の報告を行うこと ができるシステムである。メドウォッチによって収集された情報を、FDA が分析し、情報 提供を行うため、安全性に関する情報を医師・患者が入手することが可能となっている。
これらの情報提供の仕組みによって、アメリカではジェネリック医薬品の製薬会社と医 師・薬剤師や患者との間にある情報の非対称性を解消する取り組みがなされている。
ジェネリック医薬品による国民医療費抑制に関する考察

こうした違いからも、日本には「後発医薬品を使用させる動機」が弱いと考えられるでしょう。

ジェネリック推進をするために(薬剤費を下げるためには)


先発品と後発品の薬価差が大きいほど、後発医薬品シェア率が高まる
後発医薬品の薬価を下げる方法

そもそも先発医薬品の値段が高いのなら、先発医薬品そのものの値段を下げれば
後発医薬品を勧める意義は薄れ、問題は解決する

価格設定の視点
粕谷と西村 (2012[) 19]は,後発医薬品の数量シェアの増加が国内の医薬
品市場と製薬産業・医療消費者に与える影響を,企業側の要因と薬価制度 の要因に分けて分析している。具体的には,後発医薬品の数量シェアを被 説明変数として分析したところ,先発医薬品と後発医薬品の「薬価差」が 大きいほど,剤形カバレッジの差が小さいほど,統計的に有意に数量シェ アが増加することが確認されている[20
成城・経済研究 第215号 (2017年1月)

参照価格制度の導入

この制度が本人の意思によって
「本当の意味で」先発医薬品を使うのか、
後発医薬品を使うのかを決められる方法になると思います。

皆が選択に納得できる「全員幸せ」な制度です。

筆者的には一番有力です。

後発医薬品の情報提供の強化

オレンジブック等の周知を行い、情報提供の説得力を高め、患者の不安を軽減する意味合いで効果があると思われます。


後発医薬品のメリットは
「(規格違いのGEにより)飲む錠数を飲みやすいように変えたりできる」
「飲みやすい剤形に変えたりできる」

というようなものもあります。
こういうメリットを掲示することで(迷っている人には特に)
後発医薬品を使ってもらえることも多いので、
薬剤師の説明力と知識の引き出し・営業力が問われる部分とも言えるでしょう。

ジェネリックについての懸念や問題点

供給能力に懸念がある

ジェネリック医薬品の競合関係はジェネリック医薬品メーカー同士、もしくは先発品メー カーである。日本では欧米に比べてジェネリック医薬品メーカーの企業規模が小さく、品 質並びに急な需要増対応能力に限界がある
https://www.kwansei.ac.jp/cms/kwansei/pdf/department/economics/0000066999.pdf

薬局での例にはなりますが、実際にあったことを話します。
ジェネリック会社から回収事例があると、他のGEメーカーの品から取り寄せになることになるというのは想像できるかと思います。
しかし、これが(大きめな)ジェネリック会社でこれが起こった場合、薬局の対応としては、
「回収された分の在庫は出せないため、あるもの(先発メーカー等)で調剤する」
となります。

そして、実際には「回収された分の医薬品」のしわ寄せは他のジェネリック会社にいきますので、「生産が追いつかない」という事態が起こります。

そしたら患者からすると「GE品はコロコロとメーカーが変わる」というような意識が芽生え、不信感やクレームにつながるわけです。
「自主回収」「ジェネリック」とかで検索してもらえるとでてくるかと思います。
(※会社名を出すと、何言われるかわからないのでここには書けません。申し訳ないです)

品質的な問題

「ジェネリックは先発医薬品より効き目が悪いかもしれない」

というような指摘がたまにあるのですが、実際は気のせいなのかどうなのか、証明しようが無いと思います。
厚生労働省は「プラセボ効果や切りかえ効果によるケースもあると思われます」
という濁した見解を示しています。


医療現場から、先発医薬品からジェネリック医薬品に切り替え た場 合 、あるいは逆に、ジェネリック医 薬 品から先 発 医 薬 品に切り 替えた場合に、それまで得られた効果が得られなくなったとの報 告 が な さ れ る こ と が あ り ま す 。こ れ ら は 、い わ ゆ る プ ラ セ ボ 効 果 や 切り替え効果によるケースもあると思われますが、いずれにしても、 こ う し た 事 例 に つ い て は 、「 ジ ェ ネ リ ッ ク 医 薬 品 品 質 情 報 検 討 会 」 における科学的な検証の対象となり得ます。

ジェネリックの品質については、国が決めた審査の基準にのっとって
「品質に問題はない」としているので、どうしようもありません。

例えば先発医薬品も基準があり、それに従って「有効性などに問題があるかどうか」を見ているわけなので、もしこれで「有効性に差がある」ということが示されたのであれば「そもそもの承認や審査の基準」が誤っているということになります。


ジェネリックに関する論文

私の載せている論文などは「ここはいらないかな」みたいなのは削って「私が言いたい部分の要点だけ」を載せています。一応参考にした分を載せていきますね
我が国における後発医薬品普及に関する政策展開と今後の課題
後発医薬品の使用に関するアンケート調査の結果を公表
後発医薬品品質情報
ジェネリック医薬品による国民医療費抑制に関する考察
後発医薬品使用促進の現状と課題
先発医薬品価格のうち後発医薬品に係る 保険給付額を超える部分の負担の在り方について


高額医薬品について

色々あるのですが、オプジーボについて書きたいと思います。
インパクトがあるのと、わかりやすいからです。

オプジーボの会社が使用した「裏技」

希少疾病で適応をとって薬価を高く設定し、
その後に適応拡大させるという【技】です。

日本では、2014年に、悪性黒色腫治療薬の「オプジーボ」が薬価収載されました。

これはもともとは「根治切除不能な悪性黒色腫を適応としたヒト型PD-1抗体」として申請されました。

この薬は9月に薬価収載されましたが、対象が限られることから(THE 中医協佐藤敏信より)薬価は原価計算方式で算定され、
営業利益率に60%の加算が上乗せされました。
(この計算方法は、出来高積み上げで計算していく方式で、類似品のない新薬等に適応される計算方法です。)
結果20mg15万200円、100mg72万9849円となりました。

新医薬品の薬価算定について

これは、「年間約500人の投与」で製薬会社は元が取れるだろう
という前提の価格設定でした。

その翌年に、非小細胞肺癌の適応が追加されました。

これにより、当初「年間500人で元が取れる値段設定」であったにもかかわらず、薬価を変えることなく適応追加されたのです。
(想定患者数は1万5000人と、約30倍にまで増えました)

というか、なんで値段を同じままで適応追加させたんだろうという疑問は残りますね…
(結果論ではありますが、普通に考えたら金額ヤバいことになるのはわかるとおもう)

ある意味戦略勝ちということかもしれません。称賛です。

その結果、かかる医療費は年間3500万円(一人あたり)となり、想定患者数全員が使用すると、年間5000億円にも登ると計算されました。

結局、緊急の薬価改定によって2017年2月に半額まで引き下げられています。

これはオプジーボ亡国論ともいわれました。

このような高額医薬品であっても患者は安く治療できてしまう国です。

他にも1錠8万円の錠剤や、一回使用で2億円にも登るような薬も最近薬価収載されました。医療費が減ることはありません。

財源確保と「財源使用の適正化」はこれからも加速していくでしょう。

諸行無常という言葉もあるように、「いつまでも続く」なんていうことはありえないのです。

人口構成も皆保険初期よりも悪い方向へ進んでいますし、制度が崩壊するのも時間の問題でしょう。

我々の子供やその先の子孫がどうなるかについては

我々医療従事者の行動と一般患者がどれだけ
「周りのために行動を変えられるか」

に尽きるのでしょうね。


最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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以上です。










































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