動的平衡 「昨日の私」と「今日の私」は少し替わっている

以前、金沢市主催〔金沢・現代会議〕において、生物学者の福岡伸一郎教授のお話を伺った際の、「動的平衡」という考え方が忘れられない。

現代の科学の主流は、機械論的な生物学。
2003年に完成した「ヒトゲノム計画」では、
人間はDNAに書かれている全ての情報、
約23000種類のたんぱく質部品すべての構造が解き明かされました。
生命を細かく解体して、解体して、小さな部品に分けて、
その部品の一つひとつに名前をつけ、機能を明らかにしています。
私たちの身体は、ミクロのパーツが寄り集まってできている、
「精密機械」のようなものだと考えることになります。

福岡氏は、機械論的な見方で生命を見過ぎると、
生命が持っている非常に大切な特性、生命を生命たらしめている本質の部分を見失ってしまう恐れがあるとおっしゃています。

「生命は機械ではない、生命は流れだ!」と唱えていたのは、
今から約70年前に活躍された科学者 ルドルフ・シェーンハイマー。
マウスの実験を通し、食べ物の原子や分子が体の中に蓄積しているのに体重が全く変化しないのは、マウスの身体を作っていた原子や分子が変わりに分解され、捨てられていたということ。
(うんちは食べかすだけじゃなく、細胞も入っているということだ!)
生物の身体は絶え間なく「合成と分解」を繰り返している。

食べ物を食べる=食べた分細胞を捨てている、入れ替わっている。
特に、消化管の細胞は2,3日で入れ替わっていて、筋肉だと2週間、血液細胞だと数カ月で入れ替わっている。
つまり、「昨日の私」は「今日の私」と違うものになっている。
つまり「1年前の私」と「今日の私」では、物質レベルでは、
ほとんど別人になっているということ。

大きな失敗をしちゃっとき、
そして、自己嫌悪に陥っているとき、
「明日は違う自分なんだ!」と言えると、
未来に向けて、ちょっぴり勇気をもらえます。

「動的平衡」は、動的(常に動いている)+平衡(バランス)を意味し、
絶え間のない流れの中で、常に合成と分解がバランスをとっていることが、私たちの身体の一番大事な特性であり、
「動的平衡があるから、生命が生命たらしめられている」といういうこと。

そして動的平衡の特徴は、
「作ることよりも、壊すことを一生懸命やっている。」
それは2016年にノーベール賞を受賞された大隈先生のオートファジーの研究が言い当てている。

「変わらないために変わり続ける」
大きく変わってしまわないために、常に小さく変わり続けているのが、
私たちの身体ということです。

「合成と分解の流れを繰り返している」
その流れを止めないために毎日ご飯を食べているんですね。

今夜のご飯が新しい自分を作っていくと思うと、
食べるものを考え直したいですね。

うん、お腹空いてきました。。