安倍元首相襲撃事件について(視点を変えて深掘り)

 先日の安倍元首相襲撃事件、本当にショッキングでした。
特に山口県選出議員であり、仕事上、多少のご縁もあったことから今回の事件、深く考えてみようと思います。

事件の概要
安倍元首相は奈良県で遊説中、7月8日午前11時30分ごろ、後方から近づいてきた容疑者に首と心臓を銃撃されて倒れた。病院に移送された時にはすでに心肺停止状態だった安倍氏は、午後5時3分に死亡した。元海上自衛隊員であることが確認された容疑者は「安倍元首相に不満があって殺そうとしたが、政治信条に対する恨みではない」との趣旨を語った。

事件の背景
今回の事件、なぜ発生したのでしょうか。報道やネットでは警備の甘さが指摘されています。たしかに大きな原因はそこにありますが、なぜ、そのような事態になったのか考察します。尚、本文は私感であることをあらかじめ申し上げておきます。
  そもそも要人警護とは、警護対象者(今回は安倍元総理)の生命・身体に何らかの支障が発生した場合、国家の運営等に問題が発生するために対象者の生命・身体を守ることを要人警護といいます。そのために警護対象者には一定の基準があり、国務大臣級であれば警視庁警護課(SP)が主となって完全警護が実施されます。しかし、一般の国会議員であれば基本的に警護はつきませんが、社会的反響のある対象者等であれば状況に応じて警護されます。元総理大臣の場合には側近警護者が一名付きます。その他は地方警察の警護員が警護につきます。

 今回は安倍元総理は一国会議員としての立場ではありますが、社会的影響力のある方であるため警視庁SPと奈良県警が対応していたと思います。

 県によって多少の差はありますが、中小規模県の場合、専門の警護員は少数であり、他は警察署の署員が当たります。よって専門の訓練を受けていない場合があり、どうしても隙ができてしまいがちです。今回の被疑者が、そこまで計算していたとは思いませんが、偶然できた僅かな隙をついた犯行だと思います。

また、今回は参議院選挙という大きな選挙戦の最中でした。選挙の自由は民主主義の基本であるため、選挙中における道路使用制限の緩和や道交法の免除等々、通常では許されない行為も認められています。例えば今回の事案について、演説場所の道路上のセーフティーゾーンについても通常では工事以外での道路使用許可は出ない場所だと思えます。また、事前の道路使用許可も県条例により、おそらく免除されていると思いますので、言えば選挙陣営がゲリラ的に演説をしても何ら問題はないものと思われます。もっとも、一応の警備はされていたので選挙陣営と警察との間に連絡は取られていたと思いますが、完全警護ができなかったということです。
さらに選挙であるため、制服警察官が立ち並ぶような威圧的な警備は選挙陣営が嫌う傾向にあり、どうしても私服警察官による一般人に紛れての警護となります。

さらに深掘りすると、警護員の資質の問題があります。現在の警察官は公務員としては給料も良く、なかなかの人気職業となっています。そのため採用試験も難しく、公務員専門学校出身者が非常に多くいます。特に批判をする訳ではありませんが、公務員専門学校は公務員試験合格のみを目的として、そのテクニックを教えています。よって、受験者は試験に合格した時点でゴールしてしまい、警察官としての志はないようです。また、警察学校(ある意味、警察官不適合者を篩にかける場所)では厳しく対応するのですが、ハラスメント問題で一昔前のような教官による実力行使(ご想像ください)や一方的な解雇は皆無となりました。そのため、警察署に配属されても、まるで役場の職員のような真面目なメンバーが揃ってしまい、指示は愚直にこなすのですが、それ以上は絶対にしない、とにかく指示待ちの若者が多くなっています。しかし、これは社会が求める警察官像でもあり、少しでもヤンチャをすれば処分される現代の警察社会は社会の要請であるとも言えるかもしれません。

そのような訳で、今回の事件について、安倍元総理の側には側近警護員として警察庁警護課員(SP)が1名付いており、付近には奈良県警警備課員(警護係)数名はいたものと思います。ただ、雑踏の中には警察署から動員された若手(主に非番の地域課員?)しかおらず、警察学校で習った以上の訓練は受けておらず、咄嗟の対応は一般人並みになってしまったのではないかと思います。
また、安倍元総理という有名人であるため、警察官も一般ギャラリーと同じく対象の顔ばかり見ていたのかもしれません。


今回の反省点
○ 場所の選定は本人を守る警備中心ではなく、市民アピール中心になっていたのではないか。
○ 中小規模県とはいえ、短期間(時間)での警備体制の構築ができていなかったのではないか。
○ 警護員の頭数のみで、個々の実力まで配慮できていなかったのではないか。
○ 選挙陣営は安倍元総理の警護を警察に丸投げしてしまっていたのではないか。
 (その点、共産党の自主警備は大したものと思います)
 今回は警察警護における過去最大の不祥事であることは間違いありません。ただ今後、同じ間違いを繰り返さないようにするのが、警察のせめてもの罪滅ぼしではないでしようか。

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