「CAROLの意味」の意味

2014年、TM NETWORKのメモリアルイヤーに、小室哲哉氏が送り出した小説「CAROLの意味」。「読むには辞書が必要」と本人もtweetしていたけれど、音楽に関する知識が説明なしに散りばめられているので、その世界をイメージするためにはたくさんの音楽をネット上で拾い集め、下地を作ることが必要となってくる。それは、まるで小室哲哉氏を作った音の世界を、ジグソーパズルを組み立てるようにして、つなぎ合わせていく作業のようだ。そこで活躍するのも、スマホやアプリやYouTube。すべてがリンクして、ループして、何が現実で何がフィクションなのかも曖昧になっていく。

CAROLの意味は、QUIT30のアルバム、そしてツアーともリンクしている。子どもの頃、おとぎ話として受け止めていたCAROLの世界は、自分と同じように年齢を重ねたCAROLによって現実へと引き寄せられていく。

ストーリーの核になっていて、QUIT30の歌詞にも登場するSNS(ソーシャルネットワークサービス)を、小室哲哉氏も積極的に利用しファンとの交流に使っている。彼と交流したいという思いで、様々なSNSに登録することで、ファン同士の新たな交流も生まれる。毎日がメッセージや思い出、たくさんの愛や笑い、情報に溢れている。そこでは埋もれた記憶を拾い集めることも、未来への思いを語ることも、新たな友達と出会うこともできる。

そこに流れる世界のニュース。誹謗や中傷も。人を傷つけることも、励まし前へ進ませることも。そんな表裏一体のSNSの未来はどこへ向かうのか。

QUIT30が発売されたのが昨年の10月末、CAROLの意味の発売は11月。大人になって、早く過ぎ去るようになっていた時計の針が、驚くほどゆっくりと流れていく。あれからまだ4ヶ月も経っていないなんて。

それはSNSを通じて得られる膨大な情報(HUGE DATA)のおかげでもある。 TM NETWORKを感じ、考え、行動することによって、改めて現在という時代を冒険しているような気分だ。

1991年、物語の中で17歳だったCAROLはラパスルパスというおとぎの世界を冒険し、そこで愛と勇気を試され、音の力で世界を救う。CAROLはどこにでもいる女の子。ひょっとしたらあなた自身かもしれない…というメッセージ。

物語はあの時終わったのではない。むしろ、始まったのだ。

好きな人との年齢差は気になるものだから、私はずっと数えていた。「小室さんとは19歳差、ウツと木根さんとは20歳差」と。TM NETWORKが終了したあの時から、ちょうど同じだけの20年が過ぎた。あの時の3人と同じ年齢になっていた。

CAROLの意味の中に、「SFのようなことではなく、君たちを20年前からやり直しができるようはからおう」という言葉が出てくる。

私たちはバトンを託されている。20年の時を経て、あの時の彼らの年齢を迎えた私たち。今度は私たちが、次の世代にバトンを渡すために立ち上がる番だ。

潜伏者である彼らは言う。

" I am a human."

それは、決して人間を諦めない、ということ。

自分の殻(CUBE)から出て、ほんの少しでも愛と勇気を示してほしい。

それが私たち(CAROL)へのメッセージ。

おとぎ話ではなく、それは真実の物語なのだ。




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