QUIT30 〜悲しいニュース〜

日曜日、多くの日本人が家でゆっくりと目覚め、朝のニュースを見るタイミングに合わせて悲しいニュースが飛び込んできた。動画がアップされたのが朝の5時。情報の扱い方を考え抜いて、この時間帯を選んだような気がしてならない。

子供の頃TM NETWORKを好きになった時、それはとても盲目的、排他的な愛し方だった。TMを好きな人は好き。悪く言う人は嫌い。TMが好きだというもの好き。TMが嫌いなものは嫌い(あまり言わないけど)というように。

周りの大人に「ある意味宗教だね」と言われた。

今、再びあの頃と同じような気持ちになっている自分がいる。ただ、少しだけ理性的に。信仰を持たない私にとって、TM NETWORKが心の芯を作り自分を支える存在となっている。その意味で、彼らの音楽は私にとっての「教典」であり、教えだ。その思いはQUIT30に出会って、はっきりとした。当の小室哲哉氏も、意識して制作したはずだと思っている。

北海道ではお葬式やお通夜は、定刻までに集まり、参列者全員でお坊さんのあげるお経を聞く。8年前にこちらに移り住んだ時には、とても驚いたが、寒い地方なので、関東のようにバラバラと人が行き交うような方法では不合理なのだろう。お経を通して聞く機会が多い為、耳に馴染んでいる。

QUIT30組曲のLoop Of The Lifeは、明らかにお経を思わせるメロディやリズムである。宇都宮隆氏も「一歩間違うとお経になっちゃうので、ポップスとして歌うのが難しかった」と話していた。

日本での宗教とは、とても境界が曖昧で柔らかな存在である。それは日本人の美徳でもあり、悪いところでもあると思っている。心の芯になるものがないと、人は不安になってしまうし、迷走してしまうからだ。

心の芯に何を置くか。

恐怖による支配ではなく、音楽を用いた「共感」の力でhuman systemを構築できないか、という問いかけ。

一時の激情ではなく、俯瞰で世界を見渡す力。

情報の力、SNSの力が、今世界を大きく変えようとしている。正しい方向に進むことができるのか、岐路に立たされている。

QUIT30は、私たちに問いかけている。アルバムの端々にまで、メッセージが隠れている。何度も繰り返すことで、心に馴染み、つい口ずさみたくなる。もともと、教典とは、お経とはそういうためのものではないのだろうか?

結成して30年、このような分厚い作品を世に送り出せるTM NETWORKは、とてつもないグループだと思う。

この作品を作るために、今までの30年があったと言ってもいいほどに、価値のある1枚だ。多くの人の心の芯に、なることを願っている。










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