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浅草芸人列伝 この芸人はスゴイ!~こぼん師匠

https://youtu.be/tOeGgmjuN5s

【漫才協会所属。誰よりも舞台袖で他の芸人のネタを見てきた男が綴る意外な芸人のスゴイところ】

2020年3月24日に放送された中京テレビ「太田上田」の「おぼんこぼんがやってきた編」。この回を見て「今までの苦労が報われたー」って思いがひとしお。

「金谷ヒデユキが言ってたんですけど、おぼんこぼん師匠って3Pした事あるんですよね」爆笑問題・太田光の突然の暴露に一瞬うろたえながらも、楽しそうに当時の出来事を語るふたり。♪カーリフォールニァー、と踊るふたりを見て目頭が熱くなりました。

おぼんこぼん復興計画

2017年1月に漫才協会に入って以来、勝手に進めてきた「おぼんこぼん仲直り大作戦」。他の芸人たちからは「絶対無理」「修復不能」「何でそんな事してんの?」などと言われながらもコツコツと地道な努力を積み重ねてきました。薩摩と長州の間を取り持ち「薩長同盟」を結ばせた坂本龍馬になった気分で。

おぼん師匠と飲みに行けば「こぼん師匠が言ってましたよ。『おぼんの事は嫌いやけど漫才はアイツとしかできひん』って」と告げ口。「そうかーそんな事言うとったんかアイツ」とまんざらでもなさそうなおぼん師匠。

こぼん師匠と飲みに行けば「おぼん師匠が飲み屋でサイン頼まれた時、こぼん師匠の分も書いてましたよ。『サイン二人分書くんですね?』って聞いたら『当たり前やがな。コンビは二人でひとつやもん』って言ってました」とこぼん師匠に告げ口。

お互い相方の前では見せない姿を密告。こんな事を二年に渡りくりかえす内に、ちょっとづつ二人の距離が縮まり、漫才中に二人の目線が合う回数が増えてきました。舞台袖から見てて「あ、今、目線が合ったー」と大興奮。おぼんこぼん復興計画も成功目前!と思ったさなかの「水曜日のダウンタウン」。

2019年2月27日に放送された「水曜日のダウンタウン 師匠ドッキリ」事件。のちに言われる「2・27事件」です。おぼんこぼん師匠の仲の悪さが世界中に広まり、再び亀裂が走る緊急事態。

「なにしてくれてんねん!」「今までの苦労が水の泡や!」「ナイツ!やってくれたな!」あまりのショックに何故か言葉も関西弁になりながら、運命を呪ってしまいました。

あの番組以来、「おぼんこぼんの、おしぼりを投げる方」というイメージが付き、どちらかというと悪役扱いされがちなこぼん師匠。実際は本当におだやかな優しい師匠で、怒ったところは一度も見たことがない。怒るのはおぼん師匠に対してだけ。あの時ナイツのふたりにおしぼりを投げたのにも理由があります。

「やってええドッキリと、あかんドッキリがある」

「もっと売れたい。ウケたら何やってもええねん」のおぼん師匠に対し「エンターテイメントは裏を見せない方がいい」という考えのこぼん師匠。

「仲悪いんがネタになるんやったら、それ見せたらええがな」のおぼん師匠に対し「仲がいいとか悪いとかお客さんには関係ない。舞台上では自分たちの芸を見せたい」というこぼん師匠。

ふたりの対立は、1980年代に新日本プロレスのリングで行われた「イデオロギー闘争」に酷似しています。

関節技やキックを取り入れ、よりリアルに近いプロレス。
相手の技を受け、相手と共に作り上げて行く古き良きプロレス。

古き良きプロレス、エンターテイメントを愛するこぼん師匠。ここで光るのがこぼん師匠の受け身の凄さです。なにしろ会場入りも別、楽屋も別。舞台の上手と下手から別々に登場。いっさいの打ち合わせなし。舞台の真ん中で出会った瞬間に始まる漫才。

おぼん師匠が技を仕掛けてくると、その瞬間「今日はこのネタか」と受け身を取るこぼん師匠。ところが急にネタをやめて危険な技を仕掛けてくるおぼん師匠。「お前嫌いや、こっち来るな」。すかさず受け身を取るこぼん師匠「人の事嫌いって失礼やな。ねーお客さん。私も嫌いですけど」客席爆笑。

どんな技を仕掛けてきてもきっちり受け身を取るこぼん師匠。その姿はまるで相手の技を受けきるプロレスラー、受け身の天才藤波辰巳のよう。

かつて「ゴチャゴチャ言わんと、誰が一番強いんか決めたらええんや!」と言い放った格闘王・前田日明。その前田日明率いるプロレス団体UWFが経営難から新日本プロレスに戻り、新旧プロレスラーのイデオロギー闘争が勃発。そんな中おこなわれた藤波辰巳とのシングルマッチ。前田日明の危険な蹴りを徹底的に受けまくる藤波辰巳。

試合後、その藤波辰巳に対して残した前田日明の言葉。

「無人島だと思ったら、仲間がいた…」

水曜日のダウンタウン以降、前田日明ばりに仲悪いネタを仕掛けてくるおぼん師匠。その技を藤波辰爾のように受けているうちに、次第にこぼん師匠もリアルな漫才、仲悪いネタの楽しさに目覚めて来てるような気がします。やはり芸人。ウケれば嬉しい。漫才協会の仲間うちでは「あんなに息がピッタリあってるなんておかしい。実はネタ合わせしてるんじゃないのか?」という噂も出てます。

坂本龍馬気取りで、二人の仲を結び付けようと頑張って来ましたが、結局二人を結びつけたのは客席のお客さんたちの笑いでした。こぼれた水も奇跡的に復活する事もある。「覆水おぼんこぼんに返れ!」

エンターテイメントへのこだわりを持ちつつ、どんな技にも対応する。
こぼん師匠は…スゴイ!



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