杉山久子の俳句を読む 23年03月号
ラブホテルある日土筆にかこまるゝ(句集『泉』所収)
春も深まって、気がつけば土筆に包囲されているラブホテル。なんら実害はない。誰も気にしていないし、気づかない。俳人以外は。
人の男女の仲が進展していく上で、ラブホテルという場所には年中多くの「ある日」が持ち込まれているのだろう。何も恥ずかしいことはない。土筆は土筆で、タケノコやサツマイモなどと同じく地下茎を水平に張り巡らし、ときがくればそれぞれの場所から地面を破って現れ、胞子を播く。しかし土筆の場合は春という季節に限られ