杉山久子の俳句を読む 23年04月号
彗星のちかづいてくるヒヤシンス(句集『鳥と歩く』所収)
彗星は大きな離心率をもち、太陽に従順な惑星たちを横切って放埒な楕円、あるいは放物線を描く。我々の太陽系を一度しか過ぎらないものもあり、何十年、何百年の周期で幾度も訪れるものもある。掲句は後者だろう。近づくという言葉を使うのだから、作者は彗星の訪れを予期しているはずだ。喜んでいるのか、もしくは恐れているのか。
彗星とヒヤシンスの球根は、姿もどこか類似しており、いずれも時間をかけて美しさを顕わにする期待感がある。彗星は