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杉山久子の俳句を読む

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俳人の杉山久子さんの俳句を不定期に一句ずつ鑑賞します。 【プロフィール】 山口市在住。「藍生」「いつき組」所属。山口新聞俳壇 選者。俳句甲子園地区予選審査員。 1997年 第三…
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#猫のいるしあわせ

杉山久子の俳句を読む 23年02月号③

きさらぎの猫の眼浅葱萌黄色(句集『猫の句も借りたい』所収)  句の後半にきて、猫に詳しい俳人たちはおや、と思う。 「猫の眼浅葱萌黄色(あさぎもえぎいろ)」とは、左右の目の色が異なるいわゆるオッドアイだが、和語でも「金目銀目(きんめぎんめ)」という言葉があるのだから、12音から6音に節約できるのではないかと。そうすれば、もっと多くのことが言える。  しかし猫の虹彩には青、緑、黄、橙など様々な色合いがあり、オッドアイの組み合わせにも幅がある。「浅葱」「萌黄」と書くことで、掲句は

杉山久子の俳句を読む 23年01月号

太箸をとればゆるりと猫のきて(句集『猫の句も借りたい』所収)  季語が新年の「太箸」であるから、作者が食べようとしているのはきっとお節だろう。人間の食べ物で猫が食べることができるものは意外と少ないが、極端な味付けのないものなら、かまぼこなり海老の剥き身なり、重箱の中にご馳走がある。  猫は高いところが好きだが、室内を移動するには床を歩かなければならないから、脚の長いテーブルの上は勿論、座卓の上の料理を確認するのも難しいものだ。しかし、彼ら彼女らは重箱を開いた瞬間に、その音