マガジンのカバー画像

杉山久子の俳句を読む

11
俳人の杉山久子さんの俳句を不定期に一句ずつ鑑賞します。 【プロフィール】 山口市在住。「藍生」「いつき組」所属。山口新聞俳壇 選者。俳句甲子園地区予選審査員。 1997年 第三…
運営しているクリエイター

#ビール

杉山久子の俳句を読む 23年06月号①

深き深き森を抜けきて黒ビール(句集『泉』所収)  ビールの歴史は長い。紀元前数千年前、農耕の始まった頃よりビールは人類の文明と共にあった。いま人類と書いたが、主にはメソポタミアやエジプトであり、この地域は降水量が少ないため森林はない。掲句の森が単なる心象風景ではないとしたら、中世から近代にかけて消失した、ヨーロッパの広大な森を想起させる。そうだとしたら、ヨーロッパの歴史について語ることが、そのまま句の世界を語ることに繋がるだろう。  かつて「深き深き森」には妖精が住まい、多