杉山久子の俳句を読む 23年02月号②
鳥雲に帽子ケースの中真青(『俳句新空間 BLOG俳句空間媒体誌 No.17』所収)
「鳥雲に」は仲春の季語「鳥雲に入る」の傍題である。この季語が一句の上五にあれば、避寒の地に別れを告げ、子を産み育てるため、遥か北方の故郷をめざして真っ白な雲に吸い込まれる鳥の群れが、読者の心の空に現れる。大きな景である。私たちが北の地における彼らのこまやかな営みを見ることはない。私たちが空の高きに見るのは、いつも旅立ちだけである。
帽子の収納場所は様々だ。帽子専用のハンガーに掛けっぱなし