古い憧れとロリィタの話

昔、ロリィタに憧れていた。

当時の流行りの甘辛ミックスへの反抗か、引き算をしないファッションが好きだった。可愛い物も大好きで、辿り着いたのがaxes femme。その延長線上にロリィタがあった。

いつか着たい、着ようと思っていた。今はまだお金もないし太っているけれど、メイクをしてみたいと言ったら家族全員にバカにされたけれど、誰にも文句を言われなくなったら着たい。そう思ってカバンにムック本の付録のくまくみゃちゃんを付け、イノセントワールドの日傘で通学する女子高生だった。

でも、着ることは出来なかった。アラサーになっても薄給だし太っているし(これは私が悪い)、何よりメイクに自信がなかった。何塗っても色付いてる気がしない。そこに追い討ちをかけたのが昨今のパーソナルカラー診断と骨格診断のブームである。服装自由の職場で楽な服に慣れきっていた私が「似合わない、たぶん重くて暑い服」に可愛さだけで手を出すには、些か歳を取りすぎていた。
自分の努力と熱意が足りていなかった結果だし、そこに納得はしている。

それでも、たまに思い出すことがある。
社会人になって2年目くらいの頃に、古着の通販サイトでロリィタブランドのスカートを見つけた。
メタモルフォーゼの赤色でテディベア柄の膝丈スカートで、確か4500円くらい。
ウエスト総ゴムで太っていた私でも着られるサイズだったし、組み合わせ次第でカジュアルにも着られそうだった。
少し迷った末に、それを購入した。
可愛くて嬉しくて、部屋に飾って毎日眺めていた。田舎でそれを着る勇気はどうしても出なかったけれど。

多分、あの時がラストチャンスだったのだと思う。
当時の私はガーリーファッションが好きで、ロリィタに合わせられるヘアアクセサリーも持っていたし、フリルブラウスも持っていた。パニエにもなるという触れ込みの白いスカートも。あの頃少しだけ踏み出せていれば、もしかしたら今も着ていたのかもしれない。
でも、それならそうしなかったのが自分の意志だったのだとも思う。
着れたはずだった諸々は、引っ越しを機に一切合切手放した。

数年が経ち、青木美沙子ちゃんがしまむらとコラボして衣料品を出していることを知った。
ロリィタを着るあてはないけれど、ドロワーズを買ってスカートの下に穿いている。
と同時に、SNSで流れてくるロリィタのお洋服の情報を時々眺めるようになった。
1周回って憧れていたあの頃に戻ったような気分で、何だか不思議な気分になる。
今からロリィタのコーデを楽しむのは難しいだろうけど、歳取ったらフリルのエプロンドレスを着てターシャ・テューダー的なメルヘンばあちゃんになるかもしれない。

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