マガジンのカバー画像

ユニオノヴァ戦記 I

11
とある恒星系に位置する、人類の文明が高度に発達した惑星と、その周囲に展開された衛星要塞都市ユニオノヴァを舞台にした物語。騎士候補生のヴィクトル・シャンドランと彼のバディである戦闘…
運営しているクリエイター

記事一覧

【SF長編小説】ユニオノヴァ戦記 I ー はじまりの事件 ⑰ ー 勃発

※NOVEL DAYSにも同じものを連載しています。  それは突然起こった。赤い筋が放射状に二回、空に放たれた。同時に二人の候補生が首元に手を添えてその場に静かに跪いたかと思うと、うつ伏せに倒れ込んだ。それまでの和やかな空気から一変し、事態は急変を迎えた。ヴィクトルが想像していたよりも遥かに残酷な方法で、彼の予測は現実となった。  事が勃発した直後のヴィクトルの行動の速さは、迅速などという表現を超えていた。ここに来るまでの間に環境の観察や状況の分析、有事のイメージトレーニ

【SF長編小説】ユニオノヴァ戦記 I ー はじまりの事件 ⑯ ー 脅迫 

※NOVEL DAYSにも同じものを連載しています。 ※急に⑯になってますが、ここから一回につき、一話更新になり、⑧以前は今後分解して、直前は15話になる計算なので今回は⑯になりました。 ※登場人物の画像はマイクロソフトの無料AI画像ジェネレーターにより、小説内の描写を中心に情報を追加して出力しています。  シェラはカップを口に当てると、カフェラテを一口含み、カップをソーサーにおいた。しかしすぐにまた手に取りを繰り返し、あっという間にカップのほとんどを飲み干した。  彼女

【SF長編小説】ユニオノヴァ戦記 I ー はじまりの事件 ⑧ ー

※NOVEL DAYSにも同じものを連載しています。 ※登場人物の写真はマイクロソフトの無料のAI画像ジェネレーターで登場人物の小説中の描写と追加情報を入力して作成しています。 (頭の中でイメージした人物がそのまま画像にできるって…まるでSFの世界のよう…) 直感  ヴィクトルとシルヴィオの間で緊張感が高まっていた。相手にアカデミア関係者がいることが想定される以上、こちらも彼らの技能に対応するために本気で、真剣に取り組まなくては略奪を成功させてしまう可能性がある。  し

【SF長編小説】ユニオノヴァ戦記 I ー はじまりの事件 ⑦ ー

※NOVEL DAYSにも同じものを連載しています。 ※登場人物の写真はマイクロソフトのAI画像ジェネレーターで文中の彼らの描写を入力して作成しています。 シアン  第二ターミナル、カフェテリア横、待合エリアのソファに操縦士のフェイレン・リュウは座っていた。  一つため息をつくと、栗色の髪の毛をかきあげ、背もたれに寄りかかった。足を組み、上を向くと頭の後ろに手を組み目を閉じた。行き交う人の音にイヤホンをしていない方の耳を傾ける。雑踏が好きなわけではない。何かの前兆を示す

【SF長編小説】ユニオノヴァ戦記 I ー はじまりの事件 ⑥ ー

※NOVEL DAYSにも同じものを連載しています。 嘘  ヴィクトルがこれから起こることの核心についてシルヴィオに伝えようとしたその時、突然、数メートル先を歩いていた教官のギルバが振り返った。ヴィクトルは俯いていたが、その雰囲気を察して、咄嗟に息を呑んだ。 「おい、お前たち少し離れすぎじゃないか?ネロの説明、聞こえてるか?」  ネロと十分に距離を置いて歩いていたヴィクトルにネロの説明はほぼ聞こえない。その上、シルヴィオに指示を出していたことで、ネロの説明には全く注意

【SF長編小説】ユニオノヴァ戦記 I ー はじまりの事件 ⑤ ー

※NOVEL DAYSにも同じものを連載しています。 シルヴィオ  考えのまとまったヴィクトルは俯いたまま、シルヴィオの耳元に口を近づけた。シルヴィオもそれに反応して少し頭を傾けてヴィクトルに近づいた。 「…いいか」 「はい…」  ヴィクトルは両手をポケットに入れ、少し余裕があるような緩やかな歩調に変え、速度を落とした。ネロに盗聴器が仕込んである可能性を考慮し、音を拾うことができない距離を集団との間に十分に取るためだ  それに同調するようにシルヴィオもまた、ヴィクト

【SF長編小説】ユニオノヴァ戦記 I ー はじまりの事件 ④ ー

※NOVEL DAYSにも同じものを連載しています。 予感①  ヴィクトルの淡々としたアリアについての説明を、固唾を飲んで聞いていたのはヴィクトルの同期生たちだけではなかった。  壁際に沿って作られたカウンターテーブル席に座り、計画を実行する瞬間を待っていたキースとシェラは、ネロの質問に答えるヴィクトルの姿を見て、しばらく言葉を忘れてモニター上の彼に注目していた。一行が再び歩き始めてからも二人とも言葉を失っていたが、最初に口火を切ったのはシェラだった。 「こいつほんと

【SF長編小説】ユニオノヴァ戦記 I ー はじまりの事件  ③ ー

※NOVEL DAYSにも同じものを連載しています。 分析①  騎士候補生たち一行が第一プラットフォームの閉じたゲートの前に到着すると、案内役のネウロノイドのネロに引き継ぎがされ、簡単な自己紹介や体験学習のグループ分けがされた。そして、プラットフォーム内での注意事項が伝えられると、目の前のゲートが開いた。  第一プラットフォームは中継ステーションエルダ内で唯一、大型の宇宙船が停泊できる広大なスペースで、積荷作業や点検、メンテナンス、給油、簡単な修繕が行える場所だ。高さ十

【SF長編小説】ユニオノヴァ戦記 I ー はじまりの事件 ② ー

※NOVEL DAYSにも同じものを連載しています。 共犯者  エルダ第二ターミナルのカフェのカウンター席、人目につきにくい観葉植物の後ろにキース・ギロとシェラ・バーグは並んで座っていた。  キースは少し遅い朝食のホットサンドを口に頬張り、コーヒーを口にした。徹夜明けだが、最後の大仕事が残っていた。事が計画通り運んだときの爽快な気分はクセになる。寝不足であっても、彼はこれから目の前に展開するスペクタクルが滞りなく遂行されることを期待して心躍らせていた。  しかし、彼に

【SF長編小説】ユニオノヴァ戦記 I ー はじまりの事件 ① ー

NOVEL DAYSでも同じものを連載しています。 はじまり  衛星要塞都市ユニオノヴァを構成する五つの衛星間を繋ぐ中継ステーション、エルダの第一プラットフォームに騎士候補生のヴィクトル・シャンドランは立っていた。  プラットフォーム内は先ほどまでの喧騒が収まり、あたりには異様な静寂が訪れていた。ヴィクトルの周辺の床には、人工人体ネウロノイドとアンドロイドの残骸が無惨な姿で百体以上転がっていた。  ヴィクトルは停泊している地上行きの車両運搬用宇宙船アリアに向き直ると静

【SF長編小説】ユニオノヴァ戦記 I ー はじめに ー

 とある恒星系に位置する、人類の文明が高度に発達した惑星と、その周囲に展開された衛星要塞都市ユニオノヴァを舞台にした物語。  騎士候補生のヴィクトル・シャンドランと彼のパートナーである戦闘型ネウロノイドのシルヴィオは中継ステーションエルダを見学のために訪れていた。そして突然の事件に巻き込まれる。この事件をきっかけに、ヴィクトルは転換期を迎えて揺れる時代の大きなうねりの中に、その身を投じていくことになるのだった。 衛星都市ユニオノヴァと地上の世界観を紹介するシリーズの最初の