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自閉息子と答え合わせ:お出かけの巻

 息子が4歳の頃のエピソード。
 現時点で16歳の息子に当時の事を思い出してもらい、どうすればよかったのか訊ねてみました。記事の最期に載せています。

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 家族でお出かけする休日の朝。
 さーどこへ行く?夫が息子に尋ねると「シーワールド!」と即答。
 それじゃあ~、と鴨川シーワールドへ。
 息子は動物は怖いけれど魚を見るのは大好きだ。
 楽しくドライブして、目的地直前。
 ジャスコの看板を目にした息子が「ジャスコ行く!」と言い出す。
(十数年前はイオンじゃなくてジャスコだったんですよ。息子はシンボルマークが好きで大概の標識や看板を理解できてました)
 「えー、せっかく来たんだからシーワールドでお魚とかイルカ見ようよ、寄り道すると混んじゃって入れなくなるよ」と言うと「じゃあイルカさんみてからジャスコ行くね」と勝手に決める。
 うわ、インプットされちゃったよ・・・。
 「ジャスコはまた今度ね」と繰り返すも、「いつも行くジャスコじゃないジャスコ」に興味しんしん、絶対行くと決めてしまった・・・。

 最初の関門は海。
 風で外房の海は見事な波濤。波の音も迫力がある。それがこわいと泣く。
 中に入って水槽を見て回るも、館内の暗さと流れる音楽が気になり落ち着かない。
 トイレコールを繰り返すこと、15分で3回。
 館内にプリクラを見つけ「撮りたい!」と言ったので撮ってやるが、なかなか調整が難しくチビたちのいい表情が撮れないのでやり直すうちに拗ねて「いやだ!」と泣く。
 ベルーガを見ているうちに落ち着いたが、劇場内の階段を上り下りして遊ぶ娘が危なっかしいので外へ。
 そしてまたトイレ。 
 子ども広場で遊ばせようとミニ汽車に乗せてやる。
 と、2周のつもりが3周したので怖くなって「いやだ!」と泣く。
 そしてまたトイレ。
 さんご礁の海を模した大きな水槽でも、大好きな魚を見ようとせずに先に進んでいく。
 とにかく「ジャスコ」が抜けないのである・・・。
 好きなフライドポテトとアイスを食べさせて落ち着かせる。
 しかし、「ジャスコ」へ行きたい一心の息子は、ペンギンやアシカやラッコもみようとしない。
 キライなはずはない。
 アシカやペンギンは前に見たときは喜んでじっと見ていたし、イルカショーもそれなりに楽しんだ。
 魚は近所のホームセンターへ行けば必ず覗いて釘付けだ。

 原因はどう考えても、「ジャスコ」に行く!と息子が決めてしまった事だ・・・。
 それに大きい施設では、見物するものがたくさんある。
 情報を自分の興味あるものに絞るという作業が難しい自閉君は、気が散ってしかたがない。
 何をしていいのかわからなくなるのだ。
 そしてたくさんの人。感覚過敏による問題行動はさほどない息子だが、やはり人が大勢いるとうるさく感じるらしく、やたらと耳をふさぐ。
 もう息子は水族館を単に「ジャスコ」までの途中経過として認識してる。他の事はどうでもいいらしい。なんというこだわり。
 
 結局「じゃあアシカさんたち見て回ったらジャスコね」と口約束してしまい、なんとか見物を終えた。
 しかし、この頃には息子のパニックに腹を立てた夫が「絶対ジャスコには行かない」と意地になってしまい、疲れた息子が車に乗ると同時に寝てしまったのを幸い、別方向へ走った。
 そして随分と山道を走り、気持ちのいいドライブを楽しんで大きな農協の直売所で色々買い込み、機嫌よく帰宅しようとしたのだが、このまま帰宅すると感づいた息子はまたしても「ジャスコ行く」と泣き喚き・・・。

 ああ難しい。
 シーワールドに行く前にジャスコに連れて行きゃよかったのだろうか。
 しかし、そうやって予定行動を息子基準に合わせてやることを繰り返せば、息子は今後集団行動についていけなくなるだろう・・・口約束した時点で、私は息子の気が済むようにちょこっと寄ってやればいいやと思ったのだが。

 親としては弾けるような子どもの笑顔を見たいと願い、楽しみを増やしてやりたいとわざわざお出かけするわけである。
 現に1歳10ヶ月の娘は存分にシーワールドを楽しみ、機嫌よく過ごしていた。
 ところが息子は笑顔どころか、ずっと泣き顔。
 なんとも言えない徒労感に襲われる。 

 息子が人生を楽しめる能力を身につけるのは、長い時間をかけなければならないだろうか。
 願わくば、ささいな出来事でも楽しみ、つらい出来事を笑い飛ばせるような強靭な精神を養ってほしいと思うのだが。

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 さてさて、16歳息子と当時の答え合わせです。
 この時、先にジャスコへ寄ってから水族館に行くべきだった?と聴くと、「うん、自分で決めた事は実行されない限り、それで頭一杯になるから」 との事。
 じゃあジャスコにちょっと寄って見るだけで大丈夫?
 「いや、中に入らないと気が済まなかったと思う。それで一通り見て回らないと収まらなかったと思う」
 ・・・・・じゃあ、時間が遅くなって、最初に予定してたシーワールドが混雑して入れなくなってしまっても大丈夫だった?
 「いや、最初の予定で決めてたからシーワールド行かなかったら怒ってたと思う」
 結局君に振り回される結果しか無かった訳ですね。
 現在幼児期の自閉っ子子育て中の方々、仕方ないそうです。でも大丈夫、今の息子は周囲に合わせる事ができるようになってます。必ず成長しますからね!
 でもでも、言いたいわ、この一言。

 THE・理不尽
 

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