星新一風のショートショート
腕の時計に目をやると3:35を示していた。
目の前の店の扉を開けると
焙煎されたコーヒー豆の香りが鼻腔をくすぐる。
カウンターの向こうに店主がひとり。
ほかには誰もいない。
おれはカウンターに座ると
店主が言う。
「うちは珈琲しかないですよ。」
尋ねるのも野暮というものだ。
俺は一言、「はい」と告げた。
「かしこまりました」
店主はそう言うと、レコードに針を落とした。
針は浮いて沈み、回転するレコードの溝を擦る。
古き良き時代のジャズとレコードノイズが、
店内を満たす