イノベーションのジレンマについて徒然

クレイトン・クリステンセンの名著「イノベーションのジレンマ」を読みました。
そもそもイノベーションってなに?から、自分の仕事においてイノベーションのジレンマがどのように当てはまってしまっているか等、個人的な見解を書き連ねてみました。

1. 「イノベーション」とはそもそも何か?

本書を読んで改めて自分なりの定義を定めてみた。イノベーションとは、「市場にとって新たな価値を創造すること」である。単に新技術を生み出す「技術革新」がイノベーションではなく、既存顧客や新たな顧客にとって、新たな価値を生み出すことがイノベーションである。従い、技術的に新しいことがイノベーションとは限らない。

2. 「イノベーションのジレンマ」とは何か?

企業がより性能に優れ、収益性の高い製品を開発販売しようという取り組み(持続的なイノベーション、後述)を続けるうちに、逆に顧客が離れていってしまうというジレンマのこと。

3. 「持続的イノベーション」と「破壊的イノベーション」の違いを整理する

本書にて、著者は二つのイノベーションの言葉を使い分けている。「持続的イノベーション」とは、既存の市場、既存の顧客が重要視する性能を高めていくことにより、顧客にとっての製品価値を向上させる取り組みのこと。いわゆる「改善」である。これに対し「破壊的イノベーション」とは、これまでターゲットに入っていなかった市場や顧客に対し、新たな機軸から価値を提供する取り組みのこと。

3-1. テレビという製品から、二つのイノベーションの違いを考える

「持続的イノベーション」・・・画質を綺麗にする、音質を上げる
顧客の価値基準に画質、音質が存在するという前提のもと、業界各社が性能の持続的改善に取り組んでいる。
「破壊的イノベーション」・・・テレビがネットに繋がる
テレビがネットに繋がるというこれまでになかった新たな機能を打ち出し、これまでテレビ(番組)を見ていなかった人たちに対しても新たなテレビの価値を提供した。

4. なぜ「持続的イノベーション」にジレンマが生まれるのか?

いわゆる堅実な、エクセレントな企業においては、少しでも多くの顧客にえらばれ、また収益性を1%でも多く高めていくための努力を惜しまない。それゆえに、少しでも画質の良い製品を導入し、少しでも多くの利益を得ようとする。
ところが、多くの製品において、顧客が求める性能の水準(正確にいうと、性能アップに対し顧客が払うことのできる単価)は頭打ちとなる。画質がある一定の水準を超えると、多くの顧客はそれ以上の画質向上を求めなくなり、あとは一定の水準を満たす製品群のうちより安いモノを購入するようになってしまう。
このような状態になると、地道に製品スペックの改善に取り組んできた企業の製品が、逆に「性能過剰=オーバースペック」で価格が高くなってしまい、結果として性能の劣る製品にシェアを奪われるという状況が発生する。これがイノベーションのジレンマが起きるメカニズムである。

5. なぜ「堅実な企業」がイノベーションのジレンマに乗り遅れるか?

「ネットに繋がるテレビ」のように、これまでに存在しない製品には市場が存在しない。既存の顧客も存在しない。つまり、投資対効果が期待できるかどうかの確証が誰にもない。
企業の規模が大きければ大きいほど、投資にかかるコストは大きい。当然、投資対効果の見極めもシビアになってくる。誰もやっていない製品、当たるかわからない製品への投資に安易に踏み切らないというのが、「賢明に」経営陣が判断した場合の結論となる。

6. イノベーションのジレンマを脱するには

規模の大きな製品開発において取るべき意思決定プロセスと、小さな製品開発において取るべきプロセスは異なる。同じ会社において、新市場を開拓するような企画については別組織、別の意思決定プロセスを設計し、リスクをとることのできるような仕組みを作ることが一つの打開策となる。
(この欄途中)

7. 担当製品における「イノベーションのジレンマ」

これまで(リーマンショック以前)の米国市場におけるライバルは、米国企業でコスト高体質のDやNだった。これに対し日本企業で比較的低コストかつ持続的な改善に強みをもつKが、他社よりも少しでもいいスペックの製品を、少しでも安価で提供するという持続的イノベーションによってシェアを伸ばすというのがいわゆる「勝ちパターン」だった。
ところがこの5年から10年間、インドのM、韓国のLやKiといった新興国のメーカーが台頭。より安価であることを武器に、Kのシェアの奪っている。
Kの現状認識は、「価格で負けている」。価格を少しでも安くすること、顧客に対しKの性能の優位性を訴求することで、シェアを奪回する必要があるということ。
ここでイノベーションのジレンマに即しまず考えなければならないのは、「2020年の顧客はどのような機能に対し価値を感じてくれているのか?」ということ。もしある機能において、顧客の求める性能水準が飽和しているのであれば、その機能が優れていることをPRし、価格に上乗せしても顧客にとってはKを敬遠する要因にしかならない。持続的イノベーションを続けるにあたっては、本当の意味での顧客理解=既存顧客が何に価値を感じているかを把握することが不可欠であろう。
次に考えるべきは、「新機軸からの価値の提供」=破壊的イノベーションの実施である。新たなマーケットに、新たな顧客に、あるいは既存の顧客に、既存の技術や開発中の技術を使ってどのような価値を提供できるかを検証することが大事になる。
先ほどまとめたように、成功している大企業の御多分に洩れず、Kにおいては破壊的イノベーションを実施することが困難である。破壊的イノベーション実施における意思決定プロセスの新設、新組織の設立が必要になる。
今注目しているのは、モバイルアプリを使用したメンテナンス提案サービスやパーツ、オイル注文サービス。今までどこもやっていないから求めている顧客の情報がないが、「あったら便利」というのが顧客周りを通じた感触である。新たな組織、意思決定プロセスを活用して、始められないものかと考えている。

※以上はクレイトン・クリステンセン「イノベーションのジレンマ(増補改訂版)を読んでの個人的な見解です。



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