橋を越えること、越えないこと。

第29回の競作のテーマは「橋」だった。
私が一番悩んだことは、橋を越えるかどうかだった。
という、そんな話をしたい。

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越えたつもりだった。
たくさんの橋を。
世の中の川という川を乗り越えるためだ。

わからないこと。
目の前の人の体調、LINEの文面の真意、あの人の感情、ほんとうのほんとうのほんとうのこと。
それはたしかめようもないけど、確かに川は常にそのときの気分で流れていく。
君が近づいたときのせせらぎと、離れたときの荒れ狂う濁流を、きっと忘れない。

そう、橋なんてもともとなかったのかもしれない。
私にはうまく越えられなかった。
壊そうとして気づくなんてね。

私は君に、少なくとも近づけたのだろうか?
橋を壊そうとして、川の広さ深さを知って、それでも絶望せずに想い出と未来に賭けたことは、間違っていなかったのだろうか?

もしもこれから橋が掛けられるのなら、ただ君とのあいだに、橋を掛けたい。
橋を越えて、君に会いたい。
そんな私を、信じてくれる君のために。
いや、そうであってほしいと思う私のために。

そんな、私の願い。として、橋を結ぶ、お話。

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