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眩耀夜行を読む

 『眩耀夜行』
 私が蓮ノ空の世界へ引きずり込まれた曲の1つです。
 聴けば聴くほど、魅力が溢れてくる、そんな歌だと思います。
 発売からちょうど一年ということもあり、このタイミングで投稿しようと思いました。
 今回はタイトル通り、眩耀夜行を読み、その意味について書いていきます。なんで今更と思うかもしれませんが、私が蓮ノ空にはまったのが異次元フェス以降ということ、なんとなしにこの歌を聞いてふと思い立ったのが、主な理由です。
 ですが、眩耀夜行の解釈については先人の方々が何度も言及されていてます。ですので、私の感じた歌詞の所感を綴りつつ、その方たちのかんじた眩耀夜行の姿も一緒に取り上げていこうと思います。まあ私の所感の方は8割がた先人たちと被ってると思いますが。
 じゃあ、なんで書くの?と言われれば、書きたくなったから、ですね。それだけです。
 それでは、少しの間読んでいただけたら幸いです。



皆さまの考える『眩耀夜行』とは?

 さて、冒頭にもお話したように、『眩耀夜行』に関しては、多くの方がその想いを綴っています。まずはその中から、私が刺激を受けたり、解釈の幅をひろげてくれた記事を4つ、載せておきます。
 今から書くことの9割くらいがこの記事にありますので、これを全部読んでくだされば、『眩耀夜行』が様々な姿をしているということが見えてくると思います。
 とても素晴らしい記事だと思いますので、是非読んでいただきたい!

前提

 では本題に入っていきたいと思います。
 まず7月のFes×LIVEにて、この曲は夏の夜空をイメージして作った曲だと言っています。ですので、この曲において欠かせない要素、それが夏と夜なのだと思います。まあタイトルにも夜行という字が入っていますからね。それを前提としておいたうえで、もう一つ。この歌は夏と夜の前提に加えて他の要素を取り込むことで別の色が見えてくる歌詞があります。その要素はFes×LIVEでの言葉や、ジャケットのイラスト等が関係してきますので、それらとあわせて『眩耀夜行』の歌詞を読んでいきたいと思います。
 それと最後に。これは読み返してて気づいたのですが、この曲の歌詞には”私””君”が出てきますが、解釈の視点はすべて”私”になっています。『眩耀夜行』を読む上で、”君”の視点を取り入れている人がいましたら、読んでる中で、違和感やずれを感じてくるかもしれないということです。これは言葉の説明が難しくて実際に読んでいただいた方が早いかもしれません。
 本当に様々な見方、解釈があると思うので、上記の記事や私の感想等をよんで、『眩耀夜行』を自分なりの形に落とし込んでをいただけたら嬉しいです。

 下にFes×LIVEの動画も載せておきます。『眩耀夜行』については27:25~あたりで話していますので、こちらのほうも良ければぜひ見てください。

1A

「もっといけるよ」跳ねてゆく声
小さな影が水切りをしてる
「ねえ私たちも」君が笑った
大袈裟だけど流れ星みたいだな

スリーズブーケ『眩耀夜行』

 まず、「小さな影」がとても味わい深いですね。この歌詞から子供のことを指しているということが想像できます。跳ねるような声も、子供たちの無邪気に遊んでいる姿なのだとわかります。「水切りをしてる」という歌詞があることで、「もっといけるよ」がその水切りに対して言っているんですね。上記の記事では影で見えることに注目し、明るい場所が川沿いにあると言及していますね。
 ここまでの歌詞で、小さな子たちが川沿いで水切りをしているという描写が浮かび上がります。たった27字でここまでの風景を思い起こせるので、素晴らしいです。

 また、他の方の視点では「小さな影」を過去の自分という見方をされていました。とても面白い見方だと思いますし、そう考えると「もっといけるよ」の部分も少し意味が違って見えてきます。今の自分に対してまだまだそこが限界じゃない、もっと先へいけるんだという風に聞こえてくるんです。この解釈を知ったとき、私は思わずすげーって関心しおちゃいましたね。どこから目線やねんって話ですが。

 次に「ねえ私たちも」の歌詞に注目したいです。
 まず、この歌詞部分はどこに対して発した言葉なのかという見方で、雰囲気が変わってくると思います。私は「もっといけるよ」に対して言われた言葉という見方をしました。
 この曲には1サビでは「ここじゃないどこかへ」、Cメロでは「走り続けていく」と歌われているように、君と二人でどこかへ行ってしまいたいという想いが散りばめられています。その想いの発端として、水切りをしていた子供たちの「もっといける」という言葉を聞いて、ふと静かにこぼしてしまった言葉だと思いました。本当に消え入るような声でこぼした言葉なのだと思います。
 ただ、それを聞いてしまった君が笑った。どうして笑ったのか。こちらも先にある歌詞、それとFes×LIVEの梢先輩の台詞が関係してきます。まず歌詞からですが、2サビでは「見送るだけじゃ届かない」、ラスサビ最後には「ずっと忘れないで」という歌詞があります。まるで離れ離れになりそうな雰囲気をもっていますが、そこに梢先輩のFes×LIVEでの台詞に「七夕をイメージしている」と話しています。これらを合わせると、織姫と彦星の話が浮かんできます。実際、7月Fes×LIVEでも織姫と彦星についても話していましたからね。織姫と彦星をイメージしたということなのであれば、一緒にいたい思いは同じなのだけど、どうしても離れ離れになってしまうということが想像できます。そして、織姫と彦星をイメージしたことを踏まえて「大袈裟だけど流れ星みたいだな」の歌詞に注目すると、流れ星が一瞬光って消えるように、一緒に二人だけの場所へ走り続けている時間はきっと輝いたものなのだろうけれど、その時間はあまりにも短いと歌っているようにも見えてきます。もしくは、「ねえ私たちも」の一瞬で消えてしまった言葉にむけて流れ星みたいだねって言ったのかも。大袈裟という歌詞が、かなり幅をもたせてくれているので、いろいろな見方ができますね。
 では話を戻しまして、「ねえ私たちも」の言葉にどうして「君が笑った」のか。それは、君と一緒にという秘めた思いが「私たちもあの水切りのようにもっと遠くへいけるかな」という問いとしてこぼれ、それに対し「いけるよ。だけどそれは君といるこの時間だけ」という答えを、優しい微笑みとして返した描写だと私は思いました。「ねえ私たちも」の言葉だけで君はその想いに気づいているんですね。歌詞では直接的に触れていなくても、二人の関係性が見えてくるのがとても良く、ふんわりと切なさを感じさせる見方だと思います。

 「ねえ私たちも」には他の解釈もあります。それは、水切りをしている小さな子供たちを見てこぼれた言葉という視点です。この視点からだと「ねえ私たちも」の言葉は、あの子供たちのように一緒にと誘っている言葉だと想像できます。「君が笑った」という歌詞もその誘った言葉をこぼした本人が笑顔でいっていたのか、それともその言葉を聞いた方が子供っぽいなと思って笑ったのかで印象が変わってきます。もしかしたらその両方かも。ここは人によってわかれる部分だと思います。
 そして「大袈裟だけど流れ星みたいだな」はその笑っている姿のことを指しているのでしょう。載せた記事では、「ねえ私たちも」と言った本人がキラキラした笑顔で一緒にと誘っている姿をまるで流れ星のようだと、綴っていますね。こちらの解釈は歌詞が明るく煌めいた印象を持つものだと思います。
 うーん、綺麗!眩しすぎるのかも。まあ『眩耀夜行』って名前もですからね。目がくらむくらいがちょうどいいのかもです。

1B

水面を駆ける光の波紋
銀河に石を散りばめた夜に願い事を
今夜叶えようよ

スリーズブーケ『眩耀夜行』

 最初の「水面を駆ける光の波紋」という歌詞も、味わい深いと思います。
 私は空を駆ける流れ星を指していると思いました。駆けるという歌詞が特に流れ星かなと思わせてくれる部分になっていますね。夜空で尾を引く星の光が、静かに流れる川に映しだされて、川の流れで光が揺れている、という光景です。夏と夜という前提に加え、1Aの歌詞にも流れ星が出てきているので、想像しやすい景色だと思います。

 さて他の見方も二つほど触れていきます。
 一つ目は、灯篭の光ですね。眩耀夜行のジャケット写真には灯篭流しが描かれています。その灯篭の光を星に例えていると記事では触れています。とても素敵な比喩だなと感じます。川に浮かべて灯篭が流れてくる光景、そして浮かべる瞬間に生じる水の波紋は、まさしくこの歌詞の部分を表しているように思えます。
 この見方は素晴らしすぎて思わず天を仰ぎました。自分の解釈は書いたものの、推しているのはこっちです。あまりにも比喩の表現が美しすぎる。
 三つ目が花火です。こちらは眩耀夜行のリリックビデオからです。ラスサビにて花火が上がっています。ただ「水面を駆ける光の波紋」という歌詞ですので、花咲く前ではなく、ひゅーと空に上がっているときのその光が川に映っている様子を水面を駆けていると表しているんですね。
 これは考えもしなかった解釈でしたが、確かに花火だとするとこの歌詞ってもしかしてという部分が現れるので、こちらもまた、『眩耀夜行』を知るうえで正解の一つの見方だと思いました。

「銀河に石を散りばめた夜に願い事を」の歌詞に行きましょう。
 まず銀河とはですが、初めて聞いたときに思ったのが、満天の星空を表した比喩ということです。しかし、後に続く「石を散りばめた」が何を指しているのかがうまく繋がりません。ですので、ここでの石とは何か、からの視点にすると、これは1Aにある水切りの石のことを指していると思いました。そこからもう一度、銀河という歌詞に目を向けてみると、「銀河に石を散りばめた」とは、満天の星空が川に映し出されている姿を表しているのだと思います。また、銀河は銀色の河という見方もできそうです。「水面を駆ける光」や「願い事」という歌詞もあることから、この日は星が降る夜だったということも想像できますね。
 願い事。いったい何を願ったのか。願い事をしているかのような歌詞も見受けられるので、これだ!といえるものはありませんね。私はラスサビの「ずっと忘れないで」だと思っています。ここについてはラスサビのところで話していますので、今は取っておくことにします。
 
 では、他の見方も上げていきたいと思います。
 まずは灯篭の光を星と例えたときの見方ですね。灯篭流しでは数多の灯篭を川に浮かべるとのことですが、灯篭を星としたとき、川に浮かんでいる姿はさながら天の川ように見ることができます。また天の川=銀河とみることもできそうです。ここでの銀河は渦巻く星雲ではなく銀色の河として解釈することになります。灯篭を浮かべた川を銀河とたとえ、川底にある水切りをして沈んだ石を「銀河に石を散りばめた」と歌っているようにも感じますね。
 上記記事と同じ感想になってしまいますが、これは本当に美しすぎます。ええ、美しいです。私はあといくつ美しいという言葉を重ねれば、この良さを言葉にできるのか、そればっかり考えてた気がします。
 次に、石を星とした見方ですね。「石を散りばめた夜」は星が散らばっているという解釈ができ、その様子を天の川だったり銀河だったりとみることができそうです。私は特に水切りの見方の変化に心動かされました。石を星に例えると、水切りはまるで流れ星のように見えてきます。「大袈裟だけど流れ星みたいだな」ということですね。
 一緒に水切りをしようと誘って、その様子を流れ星みたいだと言ったのなら、この歌詞で言う「願い事」はどこに込めたのでしょう?
 あとは皆様の想像にお任せします。

1サビ

ここじゃないどこかへ まだ誰も知らない場所まで
街中が空を余所見する間に 
このまま遠くへ 川沿い下って行けるとこまで
固く繋いだこの手はもう 離さない
怖く…(怖く…)ないよ…(ないよ…)
暗闇だって
君とならこんなに眩しい

スリーズブーケ『眩耀夜行』

 多くの方はこのサビで崩れ落ちているのではと思います。私は眩しさの波に今も溺れています。おぼぼぼぼ。
 
 さて、1サビで最も感情を揺さぶられたのは、「街中が空を余所見する間に」の歌詞じゃないかと思います。余所見をしてしまうほど空、やはりこれは満天の星空なんじゃないかなと思います。1A、1Bの部分も合わせると星も降っていそうですね。そして、梢先輩は織姫と彦星もイメージした歌だと話していました。ならもしかしたら、織姫と彦星の逢瀬のひと時だったのかもしれません。一年に一度しかない、そんな夜の空。
 だけど、”私”はその空を見ていないんですよね。だって、空を見ている人たちは自分が余所見をしているなんて思っていないでしょうから。じゃあ”私”はどこをみてるの?って、それは”君”なのでしょう。そして”君”の方もそれは同じなんだと思います。誰もが空に目を向けた瞬間、二人は駆けだしていくんですね。川沿いを下って、街の喧騒も明かりも振り切って誰もいない場所まで。だけど、どんなところでも「君とならこんなに眩しい」んですね。そこにはきっと、二人だけにしかわからない、二人だけの時間があるんだと思います。
 手を離さないの部分には載せた記事でも触れられていましたね。織姫と彦星の話をイメージしているので、離れたくない二人の想いを表しているのではと。私もそう思います。ただ離れたくないということは、いずれ離れてしまうことの裏返しでもあると私は思いました。煌めきと眩しさの中にある切なさを感じてしまいます。
 いや、良すぎる。歌詞と描写から見える二人の関係を、湧き上がるこの繊細な気持ちを一言では到底表すことができないですね。ただただ、良い。これに尽きます。 

 ですが、私には声を大にして言いたいこともあって。皆さん、梢先輩の趣味はご存じでしょうか? いくつかあるのですがその中の一つに天体観測があります。9話の『ルリ・エスケープ』では昔から天体観測が好きで、自分の望遠鏡まで持っていました。そして、この曲は7月のFes×LIVEにて梢先輩がステージに合うように作った曲だと話しています。織姫と彦星の話をイメージしたとも話していましたし、今までの歌詞の中にも流れ星や銀河といった星に関連する言葉がいくつ並べられています。だから、この曲を作っているとき、星空が梢先輩の中にはあったと思うんです。でも、でもですよ。サビという見せ場で、こんな歌詞が書いているんです。
「街中が空を余所見する間に」
 これ、良すぎないですか!?
 この曲には星空を想起させるような描写があり、織姫と彦星の話までイメージしているんです。七夕の夜空を思い描いていたのかもしれません。だけど、小さいころから天体観測が好きな梢先輩が、そんな夜の空を余所見って書いたんですよ。もうほんとに言葉がでなくなっちゃって。
 でも、そんな夜空のきらめきすら気にも留めないほどの輝きが、梢先輩のそばにはもうあったんだなと、そう思います。
 
 さて、ちょっとした自我も出し終わったところで、1サビも同じように見ていきます。
 やはり「街中が余所見する間に」の歌詞ですね。
 空へ余所見する一つの見方として満天の星空を上げましたが、花火という見方もあります。空へと光が上がる間も、派手な音と空に咲く花は思わず街中が余所見をしてしまう歌詞をそのまま表していると思います。どちらかではなく、星空と花火のどっちもを表しているのかもしれませんね。
 また、サビ全体にも注目したいです。これは織姫と彦星と重ねると感情移入しやすい歌詞だなと感じました。ここじゃないどこかへ、固くつないだ手、君となら眩しい。どれも一年に一度しか会えない最愛の人に抱く感情の描写とも見て取れるかなと思います。
 
 このサビは読めば読むほど、聴けば聴くほど響きますね。駆け出すところだけは変わらないので、どんな夜に、どんな気持ちで、どんな表情で、二人が走り出したのか。いろいろ考えさせる歌詞だなと思います。

2A

どんな感情もどんな場面も
全部並べて一つの星座にしよう

スリーズブーケ『眩耀夜行』

 2番ですね。この歌詞は「一つの星座にしよう」がとてもいいですね。星座は夜にしか見ることができません。二人の中であった出来事の一つ一つ、些細なことも全部かき集めて、その時の感情さえも共有して、この夜空に残そうって、そう歌っているように見えます。まるで、忘れないように夜空に二人だけのアルバムを作っているみたいです。この夜空を眺めたら、いつでも思い出せるとも言っているようにも見えます。それを星座と例えているんですね。星座と呼べるほど大きくてきれいなものばかりなんだろうなって感じます。
 これは深読みのし過ぎだとは思うのですが、この歌詞も二人はずっと一緒ではないってことを暗に示しているような、そんな切なさが少し垣間見えている気がします。だってずっと一緒なら、どんな感情もどんな場面もこれから先も増えていくのに、たくさんの星座を作ろうではなくて、たった一つの星座を作ろうと歌っているので。ただ、その一つの星座の中にこれからの思い出も詰め込もうともとれるので、見方次第かなとは思います。

 ここの歌詞は、皆さん似た解釈をされていますね。私が他のを見落としているだけかもしれませんが…

2B

望遠鏡を覗かなくても
大事なものは
見えている 君に
出会った日から

スリーズブーケ『眩耀夜行』

 ここの歌詞は特に「大事なものは見えている」がグッときます。いままでの思い出を星座にしようと2Aでは歌っていましたが、大事なものだけは君に出会ってからずっと見えているんですね。星座を思い出とするなら星を見るための望遠鏡は、些細な日々の一つ一つを思い出すためのものの比喩なのかなと思いました。それに、「大事なもの」が何かとかは特に明言されていないところも良いですね。かえってそれが何かを想像させてくれています。こちらは他の記事でも触れていましたが、「望遠鏡を覗かなくても」と歌っているので、「大事なもの」とは肉眼でも見ることのできる一等星の輝きのようなもの、そんな”きらめき”なのかなと私は思います。
 
 1A、1Bは情景描写が多い歌詞になっていましたが、2Aと2Bは心情描写が中心になっていますね。それでも行きつく先は”君”なのが『眩耀夜行』という曲を物語っている気がします。

2サビ

伝えていいよね 見送るだけじゃ届かない
夢に浮かべた言の葉の船
「時間を止めてよ」
神様にも笑われちゃいそうな
声に変わって君を
困らせそうだ

スリーズブーケ『眩耀夜行』

 もう「時間を止めてよ」で感情が溢れそうになります。私は、今この瞬間が満たされていて、それがずっと続けばいいみたいな歌詞が好き好きクラブの人間なので、この歌詞も普通に効きましたね。梢先輩が書いた歌詞なんだと思うと、余計にダメージ入る。良すぎる。
 それにここは、「」が入っていますね。1Aにもその部分があり、そこでは実際に言った言葉として解釈を進めました。「時間を止めてよ」も同じように見ることはできると思うのですが、2サビの全体とこの先の歌詞も読むと実はそうでもないのかなと思っています。
 その理由が、最後のフレーズの「困らせそうだ」です。2サビ最初に「伝えていいよね」と歌っていて、「夢に浮かべた言の葉の船」は思い浮かべた言葉、そして「時間を止めてよ」が”君”に伝えた言葉だと私は思っていました。ただ、どうしても「困らせそうだ」が引っかかってしまって。困らせたならまだしも困らせそうってその言葉を言ったら君がどう感じるかを想像しているんですよね。1Aでは「もっといけるよ」の後ろには跳ねていく声が、「ねえ私たちも」の後ろには笑った君が、と台詞に対する描写が描かれています。ですが、2サビではこれを言ったら君を困らせちゃうなと心に思ったことだけで描写が途切れているんですよね。2番は全体的に心情描写やイメージの歌詞が多いこともあり、「時間を止めてよ」は実際に言葉として伝えたのかどうかはわからないんです。ただ、「伝えていいよね 見送るだけじゃ届かない 夢に浮かべた言の葉の船」という歌詞の通り、”君”に届けたい想いはあるんですよね。それが「時間を止めてよ」ではないのならいったい何?となるんですが、それはもちろんラスサビ前のあの言葉だと思います。なので、2サビをまとめるとこんな風になるのかなと。
 君に伝えたいことがあって、でもそれは見ているだけじゃ届かないから言葉で伝えようとして。それで思い浮かべた言葉が、時間を止めて。だけど、そんなこと言われても困っちゃうよね。時間は止められるものじゃなくて、流れていくものだから。それに、いざ伝えようとすると不器用な声になっちゃいそうだし。だから、私はその言葉は伝えなかった。
 と、こんな感じですかね。「時間を止めてよ」の言葉を言わなかったという見方をすると、2サビはこういう解釈になるのかなと思います。
 ただ、この見方だと2サビだけ「」のついた歌詞で声に出ていない言葉ということになります。「」のついている歌詞は全部で4つあるのですが、これ一つだけ違うというのが少し難点ですね。「」の言葉は実際に声に出した台詞というほうがまとまりがあって綺麗だと思います。
 まああくまで一つの見方、ということですね。
 さて、「見送るだけじゃ届かない」にも少し触れていきます。といっても、触れるのは「見送る」の部分なんですが。私はときたま切なさをとか二人は離れてしまうといったことを綴っていたのですが、この歌詞なんかは特にその二人がずっと一緒ではないということを指しているように感じます。織姫と彦星の話の話もイメージしているのであればなおさらです。”私”と”君”は永遠にそばにいるわけではないんですね。やはり、この曲には「その離れてしまう」ということが、散りばめられているように感じます。
 
 2サビにおける他の視点も見ていきます。
 まずは「時間を止めてよ」の歌詞を言っていた場合の変化ですね。ここで面白いのが、この言葉を伝えているとすると、途端にこの2サビは情景描写に切り替わるんですよね。”私”が神様に笑われちゃいそう声に変わったりとか、君が困った顔していたとかがばっと浮かんでくるんです。歌詞の自由度みたいなものを感じますね。
 もう一つ取り上げたいのが「夢に浮かべた言の葉の船」の解釈です。2番では心情描写がという話をしましたが、上の記事ではえ情景描写として見ていますね。それが「笹流し」です。短冊に書いた願いを笹の葉の船に乗せを川に浮かべ流す行事だそうですが、「夢に浮かべた言の葉」が短冊の願いを、「葉の船」が笹の葉の船を表していて、まぎれもなく情景描写として成り立っています。言の葉と葉の船が重なっているところが遊び心を感じられて特にお気に入りです。

Cメロ

いつもより賑わっている橋の上
背中向けて静寂の方へと走る
息を切る鼓動と足音 今はそれだけ
滲む…(滲む…)汗を…(汗を…)
拭うのも忘れて
走り続けてゆく

スリーズブーケ『眩耀夜行』

 ここは1サビの駆けている情景をより鮮やかに彩ってくれています。伴奏もそれにCメロに入るまでの間奏も、その疾走感を駆り立てている気がしますね。
 ここの歌詞は、そのまま受け取ってもらえるところだと思います。なので個人的に好きなとこでも話します。
 といっても私が良いなと思うのが、「今はそれだけ」や「拭うのも忘れて」から感じられる”私”の状態ですね。息を切る鼓動と足音しか聞こえなくなったり、走り続けることに夢中になっていたりと、二人だけの世界に入っていることがわかります。何より”私”が”君”しか見えていないことが感じられるので、とても良いと感じます。

「きれいな夜だね」

スリーズブーケ『眩耀夜行』

 なんて言えばいいのでしょう。溢れだした想いの煌めき。綺麗でも美しいでもなく、だけどそれに限りなく近い眩しい何か。うまく言葉にできませんが、できないからこそ、この一言は、さらに際立っているのかもしれませんね。

 ただ、この歌詞にはそれだけじゃないものが詰め込まれていると思います。

 皆さんは「きれいな夜」ってどんなものだと思いますか?
 今パッと思いついた中だと、星空を思い浮かべた人は多いと思います。『眩耀夜行』の話をしていますからね。それとは別の夜を思い浮かべた人もいるかなとも思います。煌びやかな街の様子だったり、逆に何も聞こえないほど静かな場所だったり。ただ「きれいな夜」を思い浮かべるときに、夜空がどこかにちらついていた人がほとんどだったのではないでしょうか。夜といわれれば夜空の情景と結びつくと思いますから。
 だけど、「きれいな夜だね」のあとのラスサビにこんな歌詞があります。「街中が空を余所見する間に」
 
ここ、めっっっちゃ良くないですか!?
 そう。街中が空を余所見しているけれども、二人はそうじゃないんですよ。ということは、”私”にとって「きれいな夜」とは空のことじゃなくて、”私”の瞳の先にいる”君”のことなんですよね。「君がいればどんな夜もきれいなんだよ」って、”私”が抱く”君”に対する想いをこの一言に詰め込んで伝えているんです。
 そしてこの想いは、2サビの部分でも触れた「時間を止めてよ」にも繋がっていると思います。どちらも”君”に対する想いの言葉ですが、「きれいな夜だね」の方が前向きに聞こえてきます。それに「時間を止めてよ」と、止まるという言葉が浮かんでもなお、”私”は”君”と一緒に走り続けているんです。「時間を止めてよ」は間違いなく”私”の本音だと思います。それを言ったら君を困らせるというのもなんとなくわかります。だけど、何より”私”も止まれなかったんじゃないかなと私は思いました。

ラスサビ

ここじゃないどこかへ まだ誰も知らない場所まで
街中が空を余所見する間に
このまま遠くへ 川沿い下って行けるとこまで
固く繋いだこの手はもう 離さない
怖く…(怖く…) ないよ…(ないよ…)
暗闇だって
君とならこんなに眩しい
ずっと…(ずっと…)
忘れないで

スリーズブーケ『眩耀夜行』

 ラスサビです。Cメロからのこのサビの入り方は、何度聞いても鳥肌が立ちます。歌詞は1サビと同じですね。歌詞の意味するところも変わりはないと思いますが、1サビとはまた少し違う輝きがあるように感じます。
 1サビと違うのは最後の「ずっと忘れないで」という歌詞ですね。
 さて、この「ずっと忘れないで」は何を忘れたくないのでしょう? これまでの歌詞全体の流れから頭によぎるのは、やはり誰も知らない場所へと走り出したこの夜のことかなとは思います。
 だけど、「ずっと忘れないで」という歌詞、私は、まるで願い事をしているみたいだなと感じました。「」はついていないので実際に声にのせて出た言葉ではないと思います。ただ、私は眩耀夜行を読む中で何度か、二人は離れる、ということに触れてきました。「ずっと忘れないで」も同じように、離れてしまうからこそ浮かんだ言葉のように感じました。
 話を戻しまして、何を忘れたくないのか。それはこの夜を含めた君といた日々の一つ一つ、なんだと思います。2A、2Bの歌詞もここにつながってきますね。”私”にとって”君”といる時間がかけがえのないものだから、忘れたくない、忘れてほしくないと願っているのかなと私は思いました。

「ずっと忘れないで」の歌詞は他の方の記事でも触れていましたね。その記事では、過去の自分を忘れないで、という見方をされていました。これについては実際に上で紹介した記事を見ていただいた方が早いと思います。灯篭流しに焦点を当てたとても素晴らしい『眩耀夜行』だなと感じました。

全体を通して

 さて、この『眩耀夜行』という曲の全体を通して、私は二人は離れてしまうということを軸において歌詞を読んでいきました。ここまで読んできた人の中には、もしかしたら勘づいた方もいるかもしれません。
 これ、スクールアイドルっぽくないですか?
 もう少し具体的にするために、ストーリーティザーMVの言葉をお借りします。下に動画も載せておくので、良ければ見てください。

 MVでこのような言葉がありました。
 旅立つものと遺されるもの。
 
”私”と”君”のどちらがどっちかは、もう言う必要はないですね。
 
この『眩耀夜行』という曲、私は遺されるものが旅立つものへ向けて想いを歌っているようだと思えるんです。
 
君とずっと一緒に隣にいたくて、だけどそれは許してもらえなくて、だから二人だけの場所へいこうと走り出した。だけど、本当はそれすらもひと時の夢だとわかってて、君もそんなことにはとっくに気づいていて、それでもなおまだ私の隣にいてくれて。だからそんな目が眩むような君と行く夜はきれいだと、そう歌った、そんなお話。 
 
それがまるでスクールアイドルのようだなと、私はそう感じました。

最後に

 なんだかんだ書いていたら長くなってしまいました。
『眩耀夜行』、本当に目が眩むほどの輝きを持った曲だと思いました。
 皆さまの思い描く『眩耀夜行』はきっとそれぞれ違うと思いますが、これを読んでその色に少しでも彩りを飾ることがきたのなら幸いです。

 最後まで読んでいただきありがとうございました!

 それではまたどこかでお会いしましょう。

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