Fate stay night Heavens feelの感想ぽろり

どうも、カナリアと申します。当方の中身に関してはこちらをご参照ください→@camelia_roses
必要事項だけ明記すると、映画が好きで、心が揺さぶられる作品に壊されて定期的に物書きをする、そんな人間にございます。
FateはUfotable様作成の「Fate stay night UBW」と「Fate zero」を数年前に履修済みで、それ以外に関してはその一切を触れていない、という形。型月の中ではライトユーザー。でもFGOはやってない。そんな感じでございます。なお、記事内では原作と分けるために「UBW」と呼称することにします。原作が「○○ルート」、アニメが「○○」といった形。

人間のふりをしたロボットが人間になる話

  なんのこっちゃ? と当時は思っておりました。
 そもそも衛宮士郎という人間は記憶を失っており、以後世話をしてくれた衛宮切嗣で自身を埋めることになります。衛宮切嗣が憧れていたのは正義の味方、その夢に魅入られるように奥深くへと足を踏み入れてきます。その道が片道切符だとも知らずに。
 UBWや、当方は見ていませんがFateルートでも周囲からも苦言を呈されるようですが、その後彼が変わることもなく進んでいくのが他2ルート。UBWは正直ヒロインの掘り下げがほとんどなく、「遠坂がいい女である」という事実を抽出するには感じ入る心が試されるのかな、という話だったように思います。ただ、「衛宮士郎がどういうロボットか」をこれほどまでに表現し、土台となる話は他にないように思います。そう、ロボットであり人間ではないんですね。今の形に彼が慣れたのは、人間性を多少なりとも得れたのは。もちろんタイガという存在はあるのかもしれませんが、桜という女の子は欠かせない存在であり、その女の子がどうやって衛宮士郎と出会い、結ばれていくのかという物語。
 そして、衛宮士郎が独りの女の子のために初めて自らの意思で自身の夢すらも捨て去った物語。

率直な感想Ⅰ

 当方は積み重ね、に弱いのです。数限りない運命的な出逢いよりも、積み重ねってきた関係性や信頼、そして人間関係にこそその人物の全てがあるのだと頑なに信じて疑わないからでありますが……そうあってほしいという願望も中にはあります。
 そんな当方からすればⅠの過去編での掘り下げは心揺さぶられるものがありました。相手を思いながらも、どこか芯が強い女の子とどうしようもないほど他人本位な正偽の味方。たった一人の女の子が友人の兄とはいえ男の家に入り込むのは好ましくない。そんな心もあってか最初こそ断っていた士郎ですが、次第に折れ、桜に鍵を渡すまでに至ります。
 性質が剣である男が折れるなど、それこそ「名折れ」のようにも思いますが、個人的にはここが一番好きだった。
 自身が思いのほか桜に絆されていることに苦笑しながらも鍵を渡した士郎の表情がどれほど人間らしかったか。困ったような表情をしつつも、現状が続くことへの期待と、様々なものを内包した瞳がどれほど美しいものだったか。あの瞬間、桜にとって衛宮士郎という個人がどれほど大切なものに昇華したのか、彼らはまだなにも知らなかった。

率直な感想Ⅱ

 なんかセイバー退場したんですけどぉ!?
 そんな感じのⅡですが、桜の過去の掘り下げであったり感情であったりと、なにかと桜にフォーカスが当たる。あとなにかと描写される(推定)鉄心エンド。名前とある画像しか知らないので詳細は知らないのですが、どうやら殺す話らしい。こっわ。
 あと個人的に感情移入してしまったのは、「処女ではない」という発言。その後身体を重ねることにこそなりますが、その意識こそこの後堕ちていく原因であり今後彼女を苛み続ける後悔でもあります。それに男の身である私が感情移入してしまったのは、今でこそただの知り合いである一人の女の子。彼女は自身が処女でないことを気にしていたように思います。すげぇ覚えがある、そんな単純な理由でございます。
 なによりも。あの自身の欲望に苛まれながらもあの人を穢せないと自身を戒めながらもあるきっかけにより枷を振り解いて前に進んでしまったあの姿は、あまりにも美しい。衛宮士郎にはない負の側面こそ、間桐桜という女の子がこれほどまでに美しいと感じる要因なのでしょう。私は重い女が好きだ。Fate stay nightという作品は、登場人物がだいたい正の方に寄っているのでいい意味でも悪い意味でも真っすぐだ。そんな作品だからこそ、想い人への愛と穢れてしまったという楔が彼女を苛む。ある意味真っすぐな構図が出来上がってしまったように思います。
 しかし、そんな彼女を楔により引きずり込んでしまったのは、一般的に見れば優秀でも魔術の際の一切がなく。……エゴを肥大化させ、どうしようもなくなってしまった兄だったのです。

率直な感想Ⅲ

(中略)
 最終的には桜を救い出しながらも自身の肉体は消失し、代替物としてドールに入りこそしましたが、おそらくあの状態では同じ時間を歩むことも出来ないのでしょう。ドール周りの設定に関して言及があればこの限りではないのかもしれませんが、老いるという機能があの人形にない限り彼らが本当の意味で同じ時間を歩むことはない。
 代替物であるから、ではなく経験の累積とは時間の経過であり、生物であれば必ずある老衰という現実がなくなってしまうことをも指します。また、魔術が魂に依るものではなく肉体に依るものなのだとすれば、衛宮士郎に投影魔術は二度と使えない。そして、桜を狙うものから守れないことも指します。
 また、桜自身もなまじ罪の意識を持てる人間が故に奪ってしまったものに延々と苛まれることになってしまうのでしょう。時には、奪ったのだから奪われてもいい、とすら考えることもあるのかもしれません。
 ただ、隣に衛宮士郎という男が居れば、どうにでもなるように思います。なんだって彼は、別の道筋で理想とは異なるとはいえ夢を叶え、疑似的とはいえ英霊になるほどの男なのですから。

率直な感想Ⅳ(マイナス点含む)

 この先、この映像作品が好きな人にとってはあまり好ましくない感想になります。無理そうならここまで読んでくださってありがとうございました。
 読める方はこのままどうぞ。










 暴走してしまった桜を助けに行く、みたいな話が最終章ではありますが、個人的には消化不良というか、「あ……もう終わりっすか」といった感じ。正直あんまり心に残ってない。
 評価される理由、を自分なりに消化出来たし、感動も出来た。ただ、こういう記事で書くことでもないかもしれないが急ぎ足が過ぎたかのように思う。
 アーチャーの右腕を移植されたことにより彼に呑まれるのではなく、彼の先に行くという描写で鳥肌が立った手前、あまり言えたことでもないが体内から刃が生えてくるのはちょっと置いて行かれた。おそらく同一人物であっても辿った、選択した道筋が異なることから心象世界に差異が生まれ、汚染……いや、上書きされていき、世界の理から離脱する力の大元である魔術回路から突き出てきた……という推測こそ立てられるのですが、やっぱりなんか咀嚼しきれないのです。理屈としては分かるんだけど、物語に吞み込まれる感覚がなかった。
 そもそも一番長いとされる桜ルートを映像化するにあたり、一番短い尺で上手いことまとめたのだからそれでいいじゃないか、と思う方もいらっしゃるかもしれませんが原作をやっていない身からすれば割とどうでもいいんですよ、ぶっちゃけ。
 それはファンとしての言葉であって、作品を見て感じ入る視聴者としてはそんなことに意味はないわけです。作品が好きだという狂気を理由にマイナス点を見ないのは新参が入ってこない閉鎖的なコミュニティの大義名分化されたなんの得にもならない固定概念に過ぎません。
 Fateの良さは重厚な世界観と、それに裏打ちされた丁寧な描写にあるように思います。
 その上で、元々のルートの都合上ストーリーに対する説明不足があり、この作品単体ではあまり火力が出ないのかな、とは思います。事前にUBWだけ見てもあんまり刺さらない気もしています。 
 なんの作品でもそうですが、前提知識が多くなればなるほど楽しめる客層も限られてきます。その上で、私はその客層になかった。また履修してから見たい作品でしたね。また、感じ入れるものがあれば嬉しいな。


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