身元保証契約に基づく債務を履行後、求償権を放棄したことが特別受益に該当すると判断した事例

  1. 取り上げた裁判例
    高松家丸亀支審H3.11.19家月44巻8号40頁(身元保証契約に基づく債務の履行が特別受益に該当すると判断した部分)

  2. 事案の概要等
    (1)相続人の範囲等
       被相続人A(明治34年3月1日生)は、昭和57年2月 12日死亡。の相続人は、長女X、長男Y1、2男Y2、被相続人の非嫡出子のY3。
       その法定相続分はY3が7分の1、その余の相続人がいずれも7分の2。
    (2)申立人の特別受益
       ア 申立人の夫が勤務先で不祥事を起こしたため、同夫の身元保証をしていた被相続人はその責任を問われ、同勤務先等に対し、遅くとも昭和40年までに少なくとも300万円を支払った。被相続人は申立人の夫に対し、かかる支払い金額を請求することがなかったと認められるので、そのころ申立人の家族の幸せのためその支払いを免除したものと解される。
       イ 被相続人の金銭の支払いは、自己の身元保証契約上の債務を履行したものであるから、それ自体は申立人に対する「生計の資本としての贈与」とは解することができない。
         しかし、申立人の夫に対する求償債権の免除は、申立人に対する「相続分の前渡し」としての「生計の資本としての贈与」と解するのが相当である。
       ウ かかる免除額300万円の相続時の金銭評価額は997万円である(昭和40年の消費者物価指数を28.3としたとき、同57年のそれは94.1である。)。

  3. 結論
    したがって、身元保証契約に基づく債務を履行し、求償債権を免除したことは、特別受益に該当すると判断。

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