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写真のチカラ

『思い出が全部なくなってしまった』

2011年の今日起きた東日本大震災。その年の8月、富士フイルム主催のアルバム洗浄ボランティアに参加した際に聞いた被災された方の言葉です。
プリントされた写真はどんなに汚れても、たとえ乳剤が剥がれても形として残っているからまだ救われた気持ちになれるけれど、データの形の写真は全てなくなってしまった、思い出が形として残っていない事がつらい、と。

当時私はデジタルで写真を撮り始めてまだ一年程度で、この言葉にデジタルの怖さを思い知らされました。それと同時に手で触れられるものにはどんな形になったとしても「存在する」だけで力になる事もあるという事、そしてそれが過去を記録する写真の持つ一番大切な役割だという事に改めて気付かされた言葉でした。

デジタルは素晴らしい写真の進化の形です。でも一瞬でなくなってしまう怖さもあります。私が写真をプリントの形で残す事の大切さを伝えたいと思ったのは、プリントが写真の最終形態である銀塩写真から写真を始めた事と、この時の体験に依るものが大きいと思っています。
過ぎ去ってしまった時間は取り戻せません。だからこそ写真に閉じ込めた思い出を触れられる形で残してほしい。たった一枚だったとしてもその一枚が持つ意味を計り知れないほど大きく感じる日がいつかくるかもしれないから。

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