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ボイスドラマシナリオ:「クリスマスジャックイヴ」

【前書き】

皆様、お疲れ様です。
カナモノさんです。

今回は去年制作したスタエフ宝塚声劇部のクリスマスシナリオです。

楽しんで頂けると幸いです。


【クリスマスジャックイヴ】

作:カナモノユウキ


〔登場人物〕

・運転手 (47歳)
・バスジャック犯人 (39歳)※犯人
・妊婦 (26歳)
・女子大生 (21歳)

運転手:ナレーション

俺にとっては、この寂れた町が全てだ。
離婚して一人になろうが、親が死のうが。この町でこうしてバスを走らせることが俺の人生だ。
今日はクリスマスイブ、独身のおっさんには関係のない行事。
娘と一緒に暮らしていれば、今頃は大学生……その年頃の娘にプレゼントする父親って居るのか?
……まぁそんなことはどうでもいい。今日も俺は日に4本しか走らせない、路線バスで人を運ぶのみ。
さぁ、今日は何人乗るかなぁ……昨日の2名は超えて欲しいなぁ。

妊婦:ナレーション

妊娠してそろそろ十ヶ月、そろそろだと思う程……色々考えてしまう。
この北海道でも大分遠い北の地で、私はやって行けるのかなぁ……。
考えてみたら、お母さんもお父さんも凄いなぁ。私をちゃんと大学まで面倒見てくれて。
……お父さんに、ありがとうって言いに行かないとな。ちゃんと元気な赤ちゃん生んで、一緒に会いに行かないと。
今日もバスが空いていて助かるな、都会のバスだと椅子に座るのも一苦労だから。
……奥に見掛けたことのないおじさんが居る、何だか…震えている?

女子大生:ナレーション

……こんなに田舎だったっけ、自分の生まれ故郷だけど……全然覚えてない。
でもまぁ、こっちの方なんて大体こんな感じだよね。
……乗り換えのバス遅いなぁ。やっぱケチらず高速バス使えば良かった。
お父さんの住所とか、変わってないと良いけど。アタシの本当のお父さんって、どんな顔だっけ?
やっぱりしばらく会ってないと忘れるなぁ……まぁ超絶イケメンでは無いだろうけど。
あ、バス来た……うわぁ人全然乗ってない。妊婦さんと……怪しいおっさんだけか、バスの車内も寂れてる。
奥座ろ。……あ、変なおっさんが立ち上がった。……運転手に詰め寄ってる。え?包丁?

犯人「動くな!う、動くと……全員どうなるか分かっているんだろうな!」
運転手「どうなるって……乗客ちゃんと数えたのか?あんた含めて4人しか居ないんだぞ。」

犯人語り:真冬の北海道、道北と呼ばれるその土地は、雪よりもオホーツク海から吹き荒れる北風が強く。その寒さは肌の表面すら凍てつかせる、そんな北国の12月の24日。もう時間が無い……俺は決意した、よし……バスジャックしてやろうと!

運転手「あのさぁ。なんでこんな寂れた路線バスで、こーんなことしようと思ったの。」
犯人「う、うるさい!余計なことは良いんだよ!俺の言う通りの場所に行け。」
妊婦「あの大丈夫ですか?汗凄いし、下半身すっごく震えていますけど。」
犯人「お気遣いけっこう!俺は本気だからな!」
運転手「だからさぁ。本気なのは分かったけど、こんなほとんど車も通らない海岸沿いの道でバスジャックって。正気の沙汰じゃねーよなぁ……あぁ、正気じゃないからこんなことしているのか?」
犯人「さっきからうるさいぞ運転手!この刃物見えねーのか!」
運転手「見えているけどさぁアンタ、その手にしている包丁……プラスチックだろ。」
犯人「そ、それの何が問題なんだよ!」
妊婦「それって、子供が使っても安心な包丁なんで……殺傷能力無いですよ?」
犯人「え?」
女子大生「……バカなおじさん。」
犯人「おい!いまソコのガキ〝バカ〟って言ったか!」
女子大生「バカでしょ。こんなド田舎でバスジャックって、センス無さすぎ。」
犯人「何だとこのぉ!……チクショー…こんなに早く奥の手を出さなきゃいけないとはな!」
運転手「……銃持っていんなら、最初からそれ出せよ。」
女子大生「ちゃんと銃持ってるじゃん。」
妊婦「慌てていたみたいだし、順番間違えたんですか?」
犯人「どいつもこいつもぉ!俺にビビれよぉ!」
運転手「難しいこと言うなぁ、そんなヒョロヒョロの体で強そうじゃないし。」
女子大生「無理だよ、最初から挙動が変だったし……怖くないもん。」
妊婦「あの、その銃って本物ですか?」
犯人「バカにするな!ほ、ほ、ほ、本物だよ!」
運転手「うん、嘘だ。」
女子大生「バレバレだよおじさん。」
妊婦「あ!それ、姪っ子が持っていたおもちゃにソックリ。」
犯人「何なんだホントに!バカにし過ぎだろ!……うぅ……俺は…こんなこともまともに出来ないのか。」
運転手「バスジャックにまともも何もないと思うけどな。こっちから聞くことでもないんだけど、お前はこんなバスをジャックして何したいんだよ。」
犯人「それは……。」
女子大生「お金目的?」
犯人「いや。」
妊婦「そしたら、テロリスト的な?」
犯人「そんな思想なんて持っていないし。」
女子大生「じゃあ何?何でもいいから犯罪をして捕まりたかったとか?」
犯人「闇雲ではあるけど、目的はそんなにぶっきら棒じゃない……あ、ある場所に行きたかったんだ。」
運転手「ある場所?」
犯人「娘の……居る、札幌まで行こうと思って……。」
運転手「札幌って、たった4時間の為にバスジャックしようとしたのか!」
犯人「わ、悪いですか!」
女子大生「やっていること自体が悪いから。」
犯人「それは……そうだけど……。」
妊婦「娘さんの居るって言いましたけど、何か複雑な環境だったりするのですか?」
運転手「まぁ複雑な事情が無いと、こんな真似しねーよな。」
妊婦「良かったら、聞かせてください。」
犯人「それがその……恥ずかしい話なんですが、仕事が上手くいかなくて……。立ち上げた会社が去年倒産して、その拍子に妻と離婚……もう転がり落ちるように無職の借金まみれになって……。藁にもすがる思いでトビ職になったけど、今までデスクワークしかして来なかったから肉体労働が辛すぎて……。そんな時に娘から連絡が来たんだ、『パパ会いたいよ』って……そんなこと言われたら会いに行こうとするだろ。だから娘と約束したんだ、必ず会いに行くってな。例え、その手段が犯罪だったとしても……。」
女子大生「待って。おじさん……仕事しているんでしょ?」
犯人「もちろん、借金返済が今の俺の目標だ。」
女子大生「なら…お金あるでしょ。」
運転手「いっちょ前な理由だけど、働いているなら多少は金が有るだろおしな。」
犯人「……それが、先日空き巣に入られて……通帳も印鑑も盗まれて。ついでにその日に仕事でスマホも壊れて、会う約束をした娘に連絡が取れなくなる始末で……。」
女子大生「うわぁ……。」
妊婦「ちなみに、車は?」
犯人「維持費なんて考えてられないんで、持っていません。」
運転手「……だいぶ運が悪いな。」
犯人「だから、俺はどうしてもこのバスジャックを成功させて!娘にメリークリスマスと伝えなきゃいけないんだ!」
運転手「……娘は何歳なんだよ。」
犯人「今は5歳だ。」
運転手「……そりゃ親父に会いたいって言うわな。」
女子大生「そう?そんなの親のエゴじゃない?どうせ娘さん、プレゼント貰いたいだけでしょ。」
犯人「う、うちの娘はそんな現金な子じゃない!……ハズだ!」
妊婦「そ、そうです!きっとその子は純粋にお父さんに会いたいんです!」
運転手「おぉ……急にどうした。」
妊婦「その子はきっとお父さんが大好きなんですよ、そして貴方も娘さんが大好き!美しい親子愛じゃないですか、こんな不遇な状況のお父さん……助けてあげませんか?」
運転手「アンタ何言っているんだ?」
女子大生「ちょっと……お姉さん、同情したら駄目だよ。」
妊婦「こんなに必死なんですから、……何とか助けてあげられませんか?」
運転手「助けるって言ってもな……金を渡せばいいか?」
妊婦「駄目です!ちゃんと札幌に連れて行ってあげてください!」
女子大生「お姉さんマジで止めなって、そこまでする義理ないよ。」
妊婦「そんなことありません!」
運転手「そんなことあるだろ、それにアンタ妊婦じゃないか。毎週同じバスに乗って来るし。きっと定期健診とかだろ?他人にお節介掛けるより、自分の身体気づかえよ。」
妊婦「でも……。」
女子大生「アタシ嫌なんですけど、そんなことに付き合うの。」
妊婦「アナタは、お父さん好き?」
女子大生「……なんで、そんなこと聞くの。」
妊婦「その犯人さんの娘さん、今お父さんに会わなかったら……きっとお父さんの事ずっと嫌いになっちゃうよ。子供の頃にお父さんが約束破ったら、悲しくて……許せなかったこととか、あるでしょ?」
女子大生「……うん。」
妊婦「アタシも同じことがあって、そのままお父さんが亡くなって。……凄く後悔したの。お父さんには、お父さんの事情があったのに……喧嘩したまま、もう会えない。」
犯人「お姉さんは優しいし嬉しいんだけど、その話だと俺が早死にする感じで嫌だなぁ……。」
妊婦「私とこの女性のことは気にせず、運転手さん!バスジャック成功させてあげてください!」
女子大生「いやちょっと!アタシ同意して無いけど!」
運転手「急に共犯者になるな!」
犯人「何て良いお姉さんなんだ……そうだ!バスジャックを成功させろ!」
運転手「無茶苦茶だなコリャ……。」
妊婦「私の申し出を断るなら……ここで生みますよ。」
運転手「はい!?」
女子大生「え、お姉さんマジ頭どおかしてんの!?」
犯人「お姉さんいくら何でもそれはちょっと……。」
運転手「そんな生みますよって言って、直ぐ生まれる訳ないだろ……。」
妊婦「うぅ!」
女子大生「え?」
妊婦「来たかも。」
犯人「何が?」
妊婦「陣痛。」
運転手「え、冗談だろ?」
妊婦「うぅぅ……ほ、本当です。」
犯人「え!!ど、どうしよう!」
運転手「落ち着け!こういう時は、えーーーっと、えーーーっとぉ!」
女子大生「おじさん二人で慌てすぎだから……お姉さん、通ってる病院どこ?」
妊婦「はぁ…町の方の……山崎クリニック……ふぅ。」
女子大生「それ……どこ?」
運転手「ここからだと30分は掛かるな。」
犯人「な、なら急いで産婦人科だ!」
妊婦「駄目です!今は……犯人さんの……娘さんを……。」
女子大生「バカ言わないの!新しい命が最優先でしょ!」
妊婦「はぁ…はぁ、でも……。」
運転手「あーもう分かった分かった!先ずはお姉さん、アンタを病院に連れて行く。その後コイツを札幌まで連れて行けばいいんだろ?」
犯人「行ってくれるのか?」
運転手「この子の言う通りだ、新しい命が最優先だしな。……俺も娘が居たから、気持はわかる。」
妊婦「運転手さん……。」
女子大生「おじさん二人で喋ってないで、早く病院向かって。」
運転手「おぉ、山崎クリニックだな。今向かうからな。」
女子大生「病院にはアタシが連絡するから、お姉さんは旦那さんに連絡して。」
犯人「お、俺はどうすればいい?」
女子大生「……とりあえず、座っていて。」
犯人「お、おう!」

犯人語り:――――――俺が止めたバスの行き先は、いつの間にか〝回送〟になり、法定速度ギリギリで走り始めた。

運転手「あーこちら16号車の三田、緊急事態につき一旦回送にて営業所に戻る。代わりのバス、出せるか?…あぁ。……始末書なら何枚でも書いてやる、こちとら子供が生まれそうなもんでな。…いつもありがとう。あーあと、今日このまま早退させてくれ。事情はしっかりと始末書に纏めるからよ。悪いな。」
妊婦「バスジャック犯人さん……。」
犯人「ど、どうした?優しいお姉さん。」
妊婦「はぁ…はぁ…必ず、娘さんに会ってきてくださいね。」
犯人「アンタ、どうしてそこまで俺のこと気にかけてくれるんだ?」
妊婦「私のお父さんも、借金して離婚して……それから連絡が来るたびに〝会いに行く〟って言って来なかったんです。……後から…病気で来られなかったって聞いて…っく…凄く謝りたくなって…はぁはぁ、…でも謝れないから。」
犯人「お姉さん……。」
妊婦「娘さん、きっと心待ちにしていますよ。」
犯人「…ありがとう、ありがとう!優しいお姉さん!」
女子大生「……謝りたくなって…か。」
犯人「ど、どうした?」
女子大生「いや……別に。」
犯人「アンタのお父さんは、どんなヤツなんだよ。」
女子大生「うちのお父さんは……、離婚しているから昔の記憶しかないけど。ぶっきらぼうで、正直な人で……面倒見がよくて、多分こういったときには真っ先に人助けをする人で……。」
妊婦「アナタも、お父さん好きなんだね。」
女子大生「……よく分かんない、昔の記憶しかないし。…まぁ、会ったら…アタシも謝りたいし。…昔のこと。」
妊婦「……うん。」
運転手「おい!そろそろクリニックに着くぞ!」

犯人語り:――――バス停でもない道の端に車は止まり、俺たちは優しいお姉さんを病院に運んだ。病院の前にはもう旦那さんが待ち構え、深々とお辞儀すると病院の中へ消えて行った……。

運転手「次はアンタだな。」
犯人「ほ、本当にいいのかい?」
運転手「いいも何も、娘さんの為だ。俺も、もし同じような状況ならお前と同じようなこと…したかもしれないしな。」
犯人「うぅ……恩に着る!運転手さん!」
運転手「……君はどうする?ここで降りるか?」
女子大生「……乗り掛かった舟だし、どうせ時間あるから。」
犯人「お二人さん……ありがとう!」
運転手「流石にバスだと燃費悪いからな、俺の車に乗り換えるぞ。」

犯人語り:そう言って運転手はバスを営業所に置いて、自分の車で俺とこの口の悪い女子大生を乗せて札幌に向かい始めた。

運転手「アンタ、友達いないのか?」
犯人「な、何だ急に。」
運転手「冷静に考えたらだぞ?こんなこと、友人に頼んだ方が早かったんじゃないか?」
犯人「……聞くな。」
女子大生「おじさん、ホント分かりやすいね。」
運転手「愚問だったな……。」
犯人「お、俺は友人に騙されて会社を倒産させたんだ……その時誓ったよ。〝もう友人は作らない〟とな。」
運転手「……バカだなお前。」
犯人「はぁ!?どこがだ!」
運転手「信用する相手を間違えたぐらいで、そんな誓い立てるからこーいう状況で困るんだろうが。」
犯人「それは…そうだが……。」
運転手「……お前、何処に住んでいるんだ?」
犯人「俺が乗ったバス停の近くだよ。」
運転手「なら俺の家にも近いな。お前、しばらく家で面倒見てやろうか?」
犯人「アンタ、何言っていんだよ。」
運転手「お前みたいな奴、ほっとけなくてな。トビがきついなら俺の働く会社の事務を紹介してやる。だから早く借金返して、いつでも娘に会えるようにしろ。」
犯人「……アンタは、サンタクロースか?」
女子大生「ップ、フフフ…フハハハハハ!」
運転手「おい、今笑うところか?」
女子大生「いや…だって…ハハハハハ!」
犯人「運転手さん……ありがとう。」
運転手「まぁ、まだまだ札幌までは時間かかるからな。それまでじっくり考えてくれや。」

犯人語り:――――車は高速に乗り、グングンと札幌へとひた走る。神様、俺がやったことは悪いことなのに。こんな奇跡をくれていいのかい?こんな暖かな出会いをしたら、甘えちまうじゃないか……こんな優しさを感じたら……。失った人生を、取り戻したくなるじゃないか。

運転手「さぁ、そろそろ札幌だぞ。ホレ、俺のスマホ使えよ。」
犯人「お、恩に着る!」

犯人語り:直ぐに電話を掛けて、元妻が少し心配そうに声を掛けてくれた。すぐさま娘に変わり、俺が〝もう直ぐだよ〟と伝えると、はしゃぐ娘の声が耳に入り。安心した途端に、目からは洪水のように涙が出てきた。

女子大生「何か、良かったね。」
運転手「親父ってもんは、こういう生き物なんだよ。」

犯人語り:――――車に乗り続けて4時間、外がもう暗い。到着した頃には、時間はもう夜の8時を回っていた。……俺のバスジャックが終わろうとしている。

運転手「おい、アンタ持ち合わせないんだろ。コレ、多くはないがこっちまで帰って来れる金と娘へのプレゼント代だ。」
犯人「い、いいのか!?」
運転手「ここまで来て何もなしじゃ、娘が気の毒だしな。」
犯人「アンタは……どこまで良い奴なんだ!」
運転手「うるせぇ、これは……俺の為でもあるんだよ。」
犯人「どういうことだ?」
運転手「お前には関係ないからいいんだよ。あーそれとコレも、使っていない社用携帯だ。さっきの返事、これで聞かせろ。〝三田さん〟って登録されている番号あるだろ?それが俺だから。」
犯人「うぅ……ありがとう!サンタさん!」
女子大生「おじさん、娘さんと楽しんで。」
犯人「アンタも、ありがとうな。つき合わせて悪かった。」
女子大生「いいよ、アタシも用事済んだし。」
犯人「なんだ、札幌に用事あったのか?」
女子大生「まぁ、こっちのことだから。」
犯人「そうか……。サンタさん、お嬢ちゃん、ありがとうな!行ってきます!」

犯人語り:車を降りて、待ち合わせした札幌駅の大きな広場に向う、娘が俺を見つけるなり抱きついてきたとき。〝頑張るしかない〟と思い、また目からは洪水が始まっていた。

運転手――――「はぁ……疲れたなぁ。」
女子大生「……あの、〝お父さん〟だよね?」
運転手「……大きくなったな、佐恵子。」
女子大生「さっきの〝サンタ〟で分かったよ、アタシの旧姓……〝三田〟だもん。変わんないね、お父さん。」
運転手「あぁ、思い出した。そう言えば昔に佐恵子が俺の事〝本当のサンタさん〟って周りに自慢してたことあったな。」
女子大生「それそれ、さっきあのおじさんが言ってた〝サンタさん〟でおもいだして吹き出しちゃった。」
運転手「懐かしいなぁ。……佐恵子は、今何していんだ?」
女子大生「医療大学通ってる、お母さんみたいな看護師に成りたくて。」
運転手「はぁ~。だからさっきあのお姉さんが産気づいたとき冷静だったのか!流石はアイツの娘だ。」
女子大生「お父さんは……変わらずバスの運転手やっていたんだね。」
運転手「俺はこれしかないからな。……佐恵子は、俺に会いに来たのか?」
女子大生「……うん。大人になったし、一回ぐらい会いたいなって。……クリスマスのこと、ずっと謝りたかったから。」
運転手「ん?なにか謝るようなことあるか?」
女子大生「あの夜、たかがクリスマスプレゼントが気に入らないからって、〝大嫌い〟って言ってそのまま会えなかったから。」
運転手「あー、あの離婚してアイツが佐恵子連れて出て行った日か。」
女子大生「もうさ…結構気になっていて、お母さんに話したらお父さんショックだったらしいって話すから。」
運転手「まぁショックだったが、俺がショックだったのは……プレゼントのセンスが無かったことだからな。」
女子大生「え?そうなの?」
運転手「あぁ、それに佐恵子は口癖のように俺のこと〝嫌い〟って言ってたぞ?」
女子大生「え!?そんなことないって!」
運転手「いやいや、ホントだよ。お父さん嫌いって言いながら、俺のケツ追い掛け回すんだから。不思議な子だったよ、佐恵子は。」
女子大生「……それは違う意味だったんだけどね。」
運転手「ん?どういうことだよ。」
女子大生「いや、いいのいいの。こっちの話だから。ねぇお父さん、明日お休み?」
運転手「あぁ休みだぞ、どうした?」
女子大生「明日クリスマスパーティーしようよ、十三年ぶりに。どう?」
運転手「おぉいいな、じゃあクリスマスプレゼント買いに行くか!十三年ぶりにリベンジしてやる!」
女子大生「なら一緒に選ばせてよ、センス変わってなかったら嫌だし。」
運転手「その言い方、アイツそっくりだな。いいぞ、二人で買い物だな。」
女子大生「いいね、よーし何選ぼうかなぁ~。」
運転手「……まさか、こうなるとはなぁ。」
女子大生「ん?何か言った?」
運転手「いやいや、何でもない。お、そう言えば大事なこと言ってなかったな。」
女子大生「え、何?」
運転手「佐恵子、メリークリスマス。」
女子大生「うん。お父さん、メリークリスマス。」


【あとがき】

最後まで読んでくださった方々、
誠にありがとうございます。

去年書いてこっちに上げるのをしばらくぶりに思い出し。
季節も近いやと投稿してみたのですが…いかがでしたか?

個人的には声劇部のボイスドラマ用に書いたのですが、自分のテイストをたっぷり詰め込んだなって気がしていて。

ちょっと反省していたりします。(笑)

もっと、物書きとして上手くなりたいですね。

では次も楽しんで頂けることを祈ります。
お疲れ様でした。

カナモノユウキ


【おまけ】

横書きが正直苦手な方、僕もです。
宜しければ縦書きのデータご用意したので、そちらもどうぞ。


《作品利用について》

・もしもこちらの作品を読んで「朗読したい」「使いたい」
 そう思っていただける方が居ましたら喜んで「どうぞ」と言います。
 ただ〝お願いごと〟が3つほどございます。

  1. ご使用の際はメール又はコメントなどでお知らせください。
    ※事前報告、お願いいたします。

  2. 配信アプリなどで利用の際は【#カナモノさん】とタグをつけて頂きますようお願いいたします。

  3. 自作での発信とするのはおやめ下さい。

尚、一人称や日付の変更などは構いません。
内容変更の際はメールでのご相談お願いいたします。

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