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フォーカルジストニアになって19-時つ風ツアー

【フォーカルジストニアになって】はこの回で一区切りです。この3年間、必要な時に必要な経験が巡り巡ってきて、本当に私は恵まれています。2020年から2021年にかけて行ったコンサートツアーを通して感じたことが、このnoteの文を書くきっかけを作ってくれました。

つたない文章に最後までお付き合いくださり、本当にありがとうございました。

自主企画コンサートツアー


2020年秋〜2021年春にかけて、私たち輝&輝は自主企画コンサートツアー「時つ風」を兵庫、名古屋、東京の3ヶ所で公演行いました。ジストニアになってから初めての自主企画コンサートです。

自主企画コンサートは、2012年から行なってきているのですが、何度経験してもとても大変!!!
各ホール企画であったり、コンサート制作会社が仲介してくださるコンサートは私たちは主に演奏に重きをおいて集中できるのですが、自分達主催のコンサートは演目決めや演奏に加えて、受付などの表周りや集客などの裏方のことも考えなければいけないので、いつもてんやわんやになります。そして、今回は普段の準備に加えて新型コロナウイルス対策がプラスされ、体力と思考と演奏技術はついていけるのだろうかととても心配でした。

でも、終わった後はいつも必ず何にも変えられない達成感と幸福感があり、なんといっても今回のツアーは民謡をテーマにしていて、各回共演が楽しみなゲストが来てくれることになっていたので、なんとしても成功させたいという気持ちだけは大きくなっていました。(コンサートの各公演の感想は輝&輝のブログをご覧ください。このツアーもDVDも発売中!)

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時つ風-ちょうど良い頃合いに吹く風-


今回の公演は、兵庫と名古屋ではホールと共催という形で公演を行っていたおかげでホールスタッフさんが感染症対策などを完璧に行い、ノウハウを教えてくださったので、完全自主企画の最後の東京公演に学んだことを繋げられたことが本当に助けになりました。

この3公演は私にとって、ステップアップのコンサートになりました。ここ数年味わうことができなかった「舞台にのびのび立つ感覚」を取り戻せた感じがしたのです。それまでは「間違えないように、とりあえず音を出す」という感覚が大きかったのですが、そこに気持ちを重ねられる感覚が久しぶりにありました。それが本当に嬉しくて、相変わらず指はうまく動かないし、音は途切れるし、満足はいかないのですが、心から舞台に立つ楽しみを思い出すことができました。

演奏以外にも気にかけることが多い中、緊張でうまく演奏出来なかったら…という不安をこのツアーを通して打ち消すことができ、自主コンサートができればどんな仕事もこなせるはず!という自信にもなりました。

コロナ禍で悩んだことも多かったのですが、やってよかった!!!出来てよかった!!!
ホールの皆様、一緒に舞台を作ってくださった技術チームの皆様、表周りを助けてくれたスタッフの方々、心強い奏者の仲間たち、お越しくださったお客様、とても多くの方の力を借りて成功したコンサートでした。改めて、自分の周りの環境に感謝でいっぱいになりました。

この「時つ風ツアー」は私個人にとってもちょうどいい頃合いに吹く風になってくれました。

新たな気づき


このコンサートを終えてすぐの時、私はこんなことを感じていました。

「今のレベルでお客さんや周りが舞台立たせてくれるのなら、ここをキープしていよう」

と。

でも、この考えはコンサート後に振り返って、輝&輝というユニットとして見た時に楽観的に捉えすぎなのでは?と思い始めました。

「私はもう、技術的にできないことが多いから難しいテクニックや完璧性はあっさり捨てられるし気にしないでいられるけれど、そんな私とユニットを組む相方はやっぱり今もトップレベルのフィールドで闘わなきゃいけないんだ」ということを感じたのです。それは、もちろん「輝&輝」とゆうユニットとして見たときにも同じことが言えました。
この状態に来るまでに、私は自分のレベルの現状維持に必死だったのですが、色々な役目を相方に背負わせてしまっていたのかもしれません。
輝&輝でいられる以上、テクニックの上達や向上心は持ち続けなくてはと改めて思わされました。そして、今の自分ならもう一度そこに目を向ける余裕がある、というところまで気持ちを持って来れていると気付きました。

病気になったらあとは落ちるだけで、落ちていくレベルをどこまで最小限に食い止められるか、という気持ちでいましたが、まさか全然違うフィールドに立ちそこでレベルアップできようとは!


私のジストニアの発症から、輝&輝2人の関係性はよりお互いを支え合うパートナーという感じになったような気がします。輝&輝というグループのためにそれぞれ今何をするべきかがより鮮明になったような感じ。だから、自分にできないことがあろうとなかろうと、変わらず第一線で闘う相方に恥じない奏者で自分もあり続けたいと思ったのでした。

なんとなく、このツアーが終わった時に一つのゴールに感じてしまっていた自分がいるのですが、まだまだ区切りは先にあるのかもしれません。確かに、これからの活動の希望になったツアーだったのですが、満足したり、安心感を抱けるのは、まだ先のことで、もっと強くなりたいし、もっと堂々と輝けるようになりたい、と今では思うことができています。

終わりに


最近では、大分満足して舞台に立てるようになって、ジストニアであることを忘れかける瞬間さえあります。それでもいいのかもしれないのですが、そうしているとやっぱり私は「今の自分はこんなもんだからなぁ」と思ってしまい、病気に、周りに甘えてしまうようです。

だから、今思う一番の正解は動かない薬指と一緒に生きていくこと。ちゃんと自分はジストニアなんだという自覚を持ちながらその上で色々と経験値を上げていくことが、これからの三味線奏者としての人生を育てていけるような気がしています。
ジストニアになって、指にストレスをなるべくかけないように楽だと思える生き方を、波風立てない生き方をするのが正しいと思っていました。でも、「もー、辛い!!」と悩むことも「嬉しい!!」と幸せを噛み締めることも含めて、全部私は気づけば楽しんでいました。

結果として、これからもこれまでも向かう先は何も変わらないんだよなぁ。。

なので、この症状を見た時になんか面白い経験してるなぁと笑ってもらえることが近いところの目標。この病気を知らない人が疑問に思うことがあればどんどん聞いて欲しいです。そして、もし同じような経験をしている方がいたのなら、参考になるかは分からないけど、この先の自分なりの答えを出すヒントになれば嬉しいなと思います。

もう、落ち込むことはない。今、言えることはただただ幸せだということです。