海の底から

誰しもが深い海の底を歩いているような、まとわりつく不安を抱えながら今を生きている。
水圧が私たちのからだにこころに重く重くのしかかる。その水圧に負けて病んでしまう人もいる。特にこころに積み重なったものは、一気にどけるのが難しい。自覚症状がない人だっている。ニュースやツイートで過激な言葉が使われることが多くなったのも、まとわりつくものから逃れようと必死にもがいているからだと思う。

6月に入ってからようやく、海の底にいる私たちに一筋の光が差し込んだ気がした。わずかな躍動感を感じ始めている。完全に安心できるまではまだまだ時間がかかりそうだけど、どうしたって逃れられないものなのだから、まとわりつくものを手で振り払おうとするのではなくて、うまく共存することはできないものか。

制限がある中でいかに楽しく過ごせるかを考えるのは楽しい。最近私はバジルを育て始めた。いつも野菜ボックスを買っている八百屋から「どうですか?」といわれてもらったバジルの苗だけれど、植木鉢に植え替えて育ててみると案外楽しい。茎と茎の間からちっちゃな若葉が生えてきているのを見ると、まるで赤ちゃんの手みたいだ。かわいい。ほっこりする。バジルもこの世で懸命に生きようとしている。それを感じられるのがいい。

以前は興味なかったもの、忙しくて目を向ける時間がなかったものに目を向けられる時間が出来たことが新たな発見につながって存外に楽しい。もし完全に元に戻る時が来ても、この視点は忘れずにいたい。



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