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1杯の具沢山おみそしるで考えよう、農と食のつながり。

突然ですがおみそしるやさん、始めます。

この度私、熊本県南阿蘇村で、みそ汁とおにぎりをメインにした朝ごはんが食べられるカフェを営業することになりました。(間借り営業なので、現時点では営業日は火曜水曜のみです)

調理師の資格はないし、飲食で働いた経験は人並み以下、お店の経営はもちろん経験なしです。それでもやりたかったことだった、しかも周りの環境に恵まれ、実際にできるチャンスをいただいた、ので「よし、やっちゃえ〜!」と見切り発車をしてしまいました。

「おみそしるやさん、なんでそんなにやりたいの?」と聞かれるので、はじめる経緯と理由について書かせていただきます。

おみそしる倶楽部 ストーリー用

都会育ち20代女子「農業を知りたい」南阿蘇村に移住。 

昨年、絶賛コロナ禍で大手保険会社に新卒入社した私は在宅勤務で暇を持て余し、自分の将来や目指すべき道について悶々と考えていました。人生をかけて情熱を捧げられるものはなんなのか・・・と考えたときに 一番に頭に浮かんだのは「食」でした。

都会生まれ都会育ちの私は、スーパーに食品が並んでいるのは当たり前、星の数だけ飲食店がありいつ どこでも美味しい食べ物にありつける恵まれた環境で生活していました。中学卒業後、カナダに3年間留学し たのですが、調味料やカップラーメンなど日本の食品がスーパーで高額で売られているのを目にし、日本の 食文化が世界中で高い評価を受けていることを知りました。「食の豊かさ」は日本の最大の魅力であると感 じ、日本の食べ物が褒められる度に、日本人としてなんだか誇らしく思いました。その時の記憶が色濃く蘇り 「食に関わる仕事がしたい!」「食べもので日本を元気にしたい!」というビジョンに辿りついたのです。


しかしながら、都会育ちの私は食べ物が売られるところはよく知っていても、食べ物を生み出す一次産業についてほとんどと言っていいほど知らなかったことに気づき、違和感を感じました。「農業」を学び、経験する使命感を感じたのが私の農業との関わりのはじまりです。

農業に興味を持ち始めた私は、夏休みに熊本県南阿蘇村の農家さんを訪ねた際に、O2 Farmの大津愛梨さんにお会いしました。愛梨さんの朗らかでエネルギッシュな姿、そして「田園風景を守っていく」と信念と 誇りを持って農業に取り組まれる姿に魅了され、「私もこんな風に生きてみたい!」と率直に感じました。その出会いをきっかけに、今年3月に仕事を辞め、4月から南阿蘇村で暮らしています。

農業から食の加工・販売、広報の仕事まで、多種多様な仕事をフレキシブルに引き受けるフリーランス、として新たな働き方の確立に挑戦中です。例えば、田植え期には田んぼのお手伝い、トマト農家で手伝い、温泉旅館にて地元の食材を使った料理を提供、オンラインイベントの運営、などさせていただいています。

ゼロからスタートした農業技術の学びはもちろん、自然環境について、農村文化について...など毎日が新たな学びと挑戦の連続で刺激的な日々を送っています。そして、それに加えてこの9月より、新たな挑戦を一つ開始することになりました。それは、おみそしる屋さんの営業です。

なぜお味噌汁か? 

まず、「守りたい日本の食文化」を考えたときに、豆腐、味噌、醤油などの大豆製品が一番に頭に浮かび、農業をするなら大豆の生産・加工をしたいと思うようになりました。特にお味噌汁を飲んだ時のほっ、とする安心感は日本国民特有の感情だと思っています。実際、私が高校時代カナダ留学中、食べたくてたまらな くなったものトップ2は親子丼と味噌汁でした。しかし、きちんと出汁をとってお味噌汁を毎日作るのは手間であると感じる層の「お味噌汁離れ」が進んでいるそうです「日本人のソウルフードとも言える味噌汁文化をつなぐ」ためにも、お味噌汁の魅力の再発見につながるようなお味噌汁を提供する、おみそしる屋さんをしてみたい、と考えるに至りました。

味噌汁文化をつなぐ、という意味でやるのであればリピートしていただきたい!という思いがあり、お味噌汁を温かいまま召し上がっていただけるように、そして地球環境に負担をかけない形でリピートしていただけるように、オリジナルの保温スープジャーを作り、販売させていただきます。Minamiasoという文字も入っているので、観光で遠方から来られるお客様にもお土産におすすめです。

第二に、南阿蘇村でたくさんの農家さんの下でお手伝いさせていただく中で感じたのが、規格外野菜の廃棄問題。もちろん一定の野菜を有機物として土に還すことも大切だと教えていただきましたが、「少 し大きすぎるから」「形が悪いから」というだけの理由で商品にならず捨てられてしまう野菜を見るのは、都会育ちの私としては衝撃でした。お味噌汁の具材として刻めば、捨てられる野菜を少しでも減らせ、手間暇かけて育った美味しい南阿蘇の野菜が生きるのではないか、と考えています。形の悪いニンジンから、熟れすぎたトマト、酒造から出る酒粕まで、地域の様々 な素材を使って栄養満点な具沢山おみそしるを作っていき、私の思うお味噌 汁の魅力の一つである「許容性の高さ」を追究していきたいです。


最後に、このおみそしる屋さんをやる一番の目的として「大豆の栽培から加 工、販売まで一貫してやってみたい!」という個人的な思いがあります。農業の世界に全く関わりがなかった都会育ちの私は食べ物が消費される、食生産の川下の部分しか知りませんでした。そのように食の断片しか知らないことに疑問を抱き、自然環境を生かして食を生み出す農業を学びに南阿蘇村の土地にやってきました。

だからこそ食の生産をする機会があるのであれば、農産物を栽培することはもちろん、それを加工し、美味しく食べられるところまで見届けたいと考えています。現在、南阿蘇村で1反弱の畑を貸していただき、大豆を栽 培しています。無事大豆が実り収穫できたら、その大豆を使って味噌作りのワークショップを開催し、学びの輪を広げようと計画中です。そして、仕込んだ味噌が発酵し熟成した 1年後には、自家製味噌のお味噌汁を作りたいと考えています。


あらゆる人に食生産を知る機会を!

南阿蘇で農業や食文化について学び始めてから約半年間。日々思うのは「土からできたものが美味しい 食べ物に姿を変え、自分の血肉に変わる」経験は感動的であり、全ての国民が経験するべきであるというこ と。分業により成り立つ現代社会では、食生産地と消費地の二極化が進んで、消費者のほとんどが農業の現場を知らずに生きています。特に、私自身のように非農家家庭の都会育ちの若者にとって、食べ物の生産過程は不透明なブラックボックス。自分の身体を作る食べ物ができる原理1つも説明できないことは、非常な危険な状態だと感じています。しかしそれと同時に、もっと多くの人が農業に興味を持ち関係人口が増えれば、然るべきところにお金が流れ自然環境や人材が持続できる形にシフトしていく、というポテンシャルも秘めていると思います。

まず、今私ができることは「おみそしるを通して日本の自然・食文化・農業を考える機会を少しでも作ること」であると考え、農村で土、人、文化、に真摯に向き合い、美味しいおみそしるづくりができるよう取り組みます!

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