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あなたが生まれた日

3月16日。
三男の保育園の卒園式に出席した。
先生からすみませんと謝られ、二人分の保護者席が用意してあることに気付く。いないのだ父親は、わたししかいない。
三男にとって当たり前のことだが、わたしにはまだ受け入れられていない。
離婚しても父親が居ればいいと思っていた。父親が父親を放棄するとは思っていなかった。子どもたちが小さい頃から、運動会も授業参観も来ない人だったけれど、来ないのと居ないのは違う。完全に片親になってしまったことをその空席が見せつけてくる。

あまり人前で喋らない三男が歌をうたっている。
「ねえ、覚えてる?ぼくが生まれた日のことを」(『6さいのうた』作詞作曲 三浦香南子)


Canon 5D markⅡ 24-70mm 2.8L


覚えてる。三男が生まれるまで、雨の日も風の日も毎朝ウォーキングして、その日も朝、破水していても気付かず歩き続けていた。立ち会い出産で、軽口や悪口を言う夫でもそばにいるだけで心強かった。何度出産しても十月十日身体の中に子どもを入れて、それを生きられる状態まで守り、産み出すことは怖かった。

ひとは一人で生きることは怖い。
三男の卒園式をわたし一人で受け止めるのが辛かった。子どもの成長を共に喜ぶ人がいない。
すごく、すごく、悲しくて。
でも子どもは目の前で力強く歌っている。

長男と同じ幼稚園に入れたかった。
お金がなくて、入園料を園長先生に頭を下げて返金してもらった。お下がりを待っていた長男の園服はすべて処分した。
「どうして皆、ぼくの幼稚園に入れないの」と長男は泣いた。次男は障害で、三男は家庭の事情で保育園。長男が理解するには時間がかかった。

Canon 5D markⅡ 24-70mm f2.8L


そんな事情を知らない三男は、いきなり知らない託児所に入れられようが、保育園を転々としようが、特にそれを嫌とも言わず、ただママが休みの日に2人きりで一緒に過ごせれば幸せそうだった。

ここ1週間、ひとりになると死にたくなる。
でも生まれた日を思い出して、
生まれた瞬間から、誰かの世話になって生きてきているから。
ひとりになったことなんか、本当はないんだよね。ひとりで生まれて、ふたりになった気でいて、そんなの全部幻想で、本当はもっと沢山の人に包まれて見守られて生を続けてきている。

簡単に死にたくなるけど、だいぶ長い糸をつたって、ここまであなたはたどり着いている。

すんごい悩んで、心折れちゃってるけど
明日も無事に生きられますように。
今日も晴れていてよかった。日が沈んで夜が来てよかった。誰かの命が繋がってよかった。

SIGMA DP1 Merrill ISO100 


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