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優しい季節は去って

春が、換気のためにしばらく開けていた窓から、ある日去っていったようだ。
気づけば、明るい黄緑色だった街路樹は、濃い緑色になって生い茂っている。
卵色だった日差しは、白く強い光となっている。
遠慮がちだったインドカレー屋さんの店員さんの接客は、ざっくばらんになってきている。
少しずつ、季節も、私の時間も、濃く深くなっている。

去年くらいまでの私なら「またあのなついあつ…いや暑い夏かあ」とうんざりして引きこもり生活に入っていたけれど、今年(から)はもっと精力的に動いていきたいと思う。
夏の思い出は、涼しい室内での記憶よりも、夕方に祖父母の家から自転車でプールに行った帰り道の青く澄んだ空気や、真夏のカンボジアの森の中で職員さんにWi-Fiを恵んでもらいながらアンコールワットのチケットを購入した時に感じた現地の人の息遣いの方が、記憶に鮮烈に残っているからだ。

夜になってもだいぶ暑いカンボジアのホテルのプールサイドでヤモリを眺めたり従業員さんの鼻歌を聴きながら食べた夜食。フランス植民地時代を思わせる瀟洒な造りでした。



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