原理主義者と見る『うる星やつら』

前語り
昭和を代表するドタバタSFラブコメディー・『うる星やつら』がこの令和の世にリメイクされると聞きつけて早幾年、この度ようやくその第一話が封切となり、堪らず筆を執った次第。
何やら物々しい表題をつけてしまったが、ま、要するに一消費者による感想文である。悪しからず。

ラムちゃんのブラについて
のっけからこれである……とはいえ、別に三十絡みの独身男が非実在宇宙人女子高校生への欲情の丈を語る項目ではないから安心してほしい。
さて、あたるはラムのブラを剥ぎ取ってそれを取り返しに来たラムの角を掴んで勝利を収めるわけだが、これは原作・押井守版・本作でも共通している……のだが、一点だけ本作のみ異なる点がある。本作ではあたるが直接ブラを掴むわけだが、原作と押井守版ではばいきんまんのUFOに備わっているような、やたら射程の長いマジックハンドを使っていたりする。
(普通の男子高校生があんな秘密道具をどうやって)とかねがね思っていたが、元号を二つ跨いでようやくこの疑問符を解消したというわけだ。原理主義者的に言えばアレンジや修正は極力抑えてもらいたいところだが、今後登場するトンデモな道具の多くはラムや他の宇宙人が発明or購入したものだから頻発はしないだろう。新規ファンも厄介オタクも安心・安全というわけだ。(乳首がモロ見えしてないと気が済まない押井守の原理主義者は知らんが)

偉大過ぎる原作と昭和レトロについて
各先達へのリスペクトが前面に推し出されていることは今更言及するまでもないが、土台となっている画風はうる星末期~らんま終了までの高橋留美子だろう。
高橋留美子を追っていた人にはよくわかることだろうが、高橋女史に当時の画風を再現することは非常に厳しいらしい。うる星の連載終了後も折に触れてはラムの描き下ろしイラストを公開しているが、どうもござっぱりしてしまってコレジャナイ感が拭えなかった。
これには狂信者といえども苦い顔で口を噤む他なかったわけだが、今回のリメイクで一番脂の乗っていた頃の画風を再現し、さらには巷で流行っているらしい昭和レトロの感を古き良きネオンとも古典的な近未来感とも取れるビビッドな色彩で令和の世に復活させたというのは、オタク・原理主義者・狂信者として五体投地で敬意を表する他ないのである。

兵どもが夢の跡……?
さて、上記まででさんざっぱら歓喜の雄叫びを書き殴ったわけだが、正気に返るとこのリメイクに一抹の不安を覚えてしまってもいる。
まぁぶっちゃけ書きながら思ったことだから雑に書き殴るわけだが、今回のリメイクは成功すればするほど一界隈に閉塞感を色濃くもたらしかねないとも感ぜられるという話だ。
上の項目で本リメイクの画風を「脂の乗っていた頃の画風」と書いた。これはすなわち、筆者自身がるーみっくわーるどの終焉を感じてしまったということに他ならない。
結局のところ、我が主・高橋留美子は世間でいえばうる星~らんま、よくて犬夜叉までの作家というイメージが強い。(『境界のRINNE』、面白かったんだけどね……)近年はうる星のリメイクの他、『半妖の夜叉姫』という『犬夜叉』の派生作品なんかも売り出していて、これはすなわち、商業出版においてのるーみっく作品は終わったということ、連載デビュー作にして代表作であるうる星のリメイクは漫画家・高橋留美子の墓標の意味を為す気がしてならない。
某クソデカ出版社も利益を出さねばならないわけで、版元まで話を広げると『今日から俺は‼』を実写化するなど成否が読みづらい新作よりも既にファンのついた偉大なる旧作で客を呼ぶ戦略をとっている。悲しいことだが、今後るーみっくわーるどにラム、犬夜叉、乱馬以上のキャラクターは期待されていないのだろう。
あまりにも有名すぎる「神は死んだ」という言葉は今日に至るまで其処此処で擦られてきたが、筆者は齢二十八にして初めて「神が死ぬ」ことの恐怖に対峙していたりしていなかったりする。

後語り
思い付きで後ろ暗い話をしてしまったが、同作については基本的に楽しく、それも尋常じゃなく楽しく付き合って行けそうで厄介オタクとしては一安心している。
最後に、上手く項目に落し込めなかったことを箇条書きにして終えようと思うが、これは感想のゴミ箱のようなものなのでぜひスルーしてもらいたい。「ゴミは捨て主の情報の塊」だと『闇金ウシジマくん』で言ってたので、転職活動をする際の自己分析にでも役立てる所存だ。

・しのぶに会いに行こうとするあたるに父が言った「いい葬式出してやるからな」は多分『めぞん一刻』で五代くんが祖母ちゃんに言ったセリフを輸入した……?
・しのぶが記憶より可愛くてビビったけど、原作でも新キャラが出る度にどんどん埋もれていったんだよなぁ
・踊るOP(ED)って久しぶりに見たけど平成生まれのノスタルジーも狙ってる?俺はOP中に泣いたわけだけど、これはうる星ではなく『かんなぎ』を思い出したせいと踏んでいる
・OPで面堂がオタ芸打ってたけど、これで行くと彼は登場時からギャグキャラ路線で行くのだろうか…?
・ランちゃんが好きです
・押井守版ではランちゃん(怒)の顔が岩鬼正美みたいになってたけど、今作ではそうならないことを祈っている
・早くランちゃんが見たい
・特に、ランちゃんがレイさんために作った胃の中で何倍にも膨れ上がるカップケーキの回が見たい


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