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空き家を放置することの問題

空き家が社会的損失であることは言うまでもありませんが、空き家所有者の中には、「自分の所有物だから」と特に問題意識を持つことなく長年空き家を放置する人がいます。

これは非常に危険な考え方です。

空き家を放置することは、相当リスクの高いことなのですが、具体的にどのようなリスクがあるのでしょうか。

火災・放火


消防庁の調べによると、建物の火災発生原因の一位は「放火」です。
管理体制の悪い空き家では、放火の火元になり得るゴミや草木などが目立ち、ターゲットにされやすくなるかもしれません。
また、空き家は(一部の保険会社を除き)火災保険の加入が困難となるケースが多く、仮に火災による損害が発生した場合には、保険が使えないという非常に困った事態になります。

空き巣・不法侵入


長期間放置された空き家は、近隣住民から認知されてしまいます。
「あそこは空き家だね」
というような会話が、町のコミュニティで広く話されることになります。
また、外観としても、明らかな空き家というのは誰が見ても分かるようになります。
人が住んでいないということが分かれば、容易に不法侵入され、中には空き家に住み着いてしまう事件も発生しています。

隣地への草木等の越境


一戸建ての空き家では、敷地内に雑草などが無造作に生い茂ってしまうケースが多々あります。
特に問題なのが、敷地内にある大木などが成長し、隣地建物に接触してしまうというケースです。
この場合、隣地所有者は大木を撤去したくても空き家所有者の許可なくすることは法律的に出来ません。
さらに、隣地所有者が空き家所有者に大木の撤去を依頼したくても、連絡がつかなかったり、そもそも誰が空き家所有者なのか分からず泣き寝入りしてしまうことになりかねません。
そうすると、やがて大きなトラブルへと発展し、空き家所有者に対して損害賠償請求をすることなどが考えられます。

資産価値の大幅下落


一般に、建物は住民がいないと一気に劣化が進んでしまうと言われます。
これは、例えばちょっとした建物の不具合に気が付かず、すぐに修理すれば大した問題にならなかったものが、長期間放置することで大きな瑕疵となってしまうこと等が原因です。
また、空き家は前述の通り、放火や不法侵入といった事件にも巻き込まれやすく、その場合はいわゆる「事故物件」として扱われてしまいます。
最近では、事故物件を掲載するサイトもあり、一気に事故物件として認知されてしまい、市場価格が大幅に下がるということになりかねません。

工作物責任(民法第717条)


工作物責任とは、土地上の工作物(建物など)の瑕疵(問題・不具合)によって、他人に損害を与えた場合に、工作物の所有者・占有者が損害賠償責任を負うというものです。
空き家を例にすると、「建物が老朽化⇒屋根が剥がれ落ちる⇒通行人にケガをさせた」のようなケースです。
通常、損害賠償責任というのは、故意又は過失がある場合に責任を負います。
しかし、工作物責任では、過失がなくても責任を負います(無過失責任)。
つまり、先ほどのような例では、特に過失がなくとも空き家所有者が通行人に損害を賠償しなければならなくなります。

以上のように、空き家には様々なリスクがあり、それらは決して金額的にも小さくないものばかりです。
空き家を放置することは社会的損失であると同時に、所有者にとっても大きな損害となり得ます。
さらに、私の経験則では、空き家を放置すると必ずと言っていいほどトラブルが発生します。
上記の事例は、決して珍しいケースではありません。
実際に私が関与した空き家の半数以上に、なんらかのトラブルがあったのです。

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