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不妊治療ヒストリー58 ~移植日当日~

いよいよ4月3日、移植の日を迎えた。

ややこしいスケジュールの薬もきちんと飲んだ。
面倒くさいとブーたれていた残薬チェックもばっちり。
体調も良い。

夫側の提出物は今回はないし…と、当初は私だけ行く予定だったが、夫もできるだけ参加させる方がいいか?と思い直し付き添いで来てもらうことにした。採卵よりは時間はかからないだろうし。

が、私の他に2名ほど移植をする人がいたらしく自分の番が来るまでに1時間以上待機、移植後も診察まで含めて更に時間がかかってしまった。

まさかこんなに時間がかかるとは…娯楽がない、狭い待合室に3時間近くいる羽目になった夫はさぞかし暇だったであろう…。しかもコロナ禍に。
すまぬ。


移植前に先生から今回移植する凍結卵について説明を受けた。

ここでイヤーな事実が発覚する。
なんと融解したら卵のグレードが下がったというのだ。
移植するには問題はない、移植後に卵の中の細胞が成長して殻を破り無事着床することもあると説明をされた。ただし無事着床のくだりは牛の話らしいが。

ただその細胞が着床し、無事出産までいったとして生まれてくる子に何かあったら…という考えが頭によぎる。先生に尋ねたが「それは分からない」との返答。そりゃそうだよな。

僅かでも育つ可能性があるというならかけるしかない。
凍結卵が1個しかない私達には選択肢はないのだ。
(ちなみに夫は自分らの卵と牛を一緒くたにされたことに腹を立てていた…)


移植自体はとてもスムーズにすすんだ。

術衣に着替えて、すっかり見慣れた手術台へと横になる。
消毒も相変わらずガシガシと手を洗うアライグマさながらの手法だった。
痛いが、我が子を迎えるためだ。情けない声を出しつつもなんとか耐えた。

準備を終え、いよいよ卵を迎える。

壁のスクリーンに眠りから覚めた卵が映っている。
グレードが下がったと言われたが、まんまるとしたキレイな子だ。

かわいい。

見た瞬間、感動して涙が出た。

ようやく迎えに行けた。
1年近く離れ離れになっていて、寒いところでずっと私たち夫婦を待っていてくれたこの子。ダメになる可能性が高いとはいっても、凍結できるほどに育ってくれた子。


「おかえり」

「待たせてごめんね」

自然とそんな言葉が出る。


帰り道、いきなりお腹の中がホワンと暖かくなった。
まるで「ただいま」と言っているかのように。


判定日は4月15日。
どうか、奇跡が起きますように。

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