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2021年度後期授業「日本文化論(映像メディア)/現代文化論B」に、高垣伸博さん(元 毎日放送 プロデューサー、元同局アナウンサー室エグゼクティブ)をお招きしました!

2021年度後期に開講されていた「日本文化論(映像メディア)/現代文化論B」では、現代日本の映像メディアをテーマに授業を行いました。

そのテーマのひとつとして「テレビ」を扱いました。
日本社会におけるテレビのあり方・位置づけの変容が、さまざまなレベルで語られ議論されていますが、この授業では、このようなタイプの学びのみならず、実際のテレビ番組の制作にも注目しました。

そこで、テレビ黄金期、大手テレビ局の第一線で番組制作に携わってこられた方をお招きし、番組制作の実際についてお話をうかがうことにしました。

ゲストとしてご登壇くださったのは高垣伸博さんです。

高垣さんは、大手放送局 毎日放送(MBS、関西の方には4チャンネルでお馴染み!)でディレクター、プロデューサーとして活躍され、よしもと新喜劇の生中継から人気グルメ番組まで多種多様な番組を世に送り出し、制作局専任部長​、同局アナウンサー室エグゼクティブを歴任されました。

毎日放送を定年退職後、追手門学院大学国際教養学部教授、同大学 笑学研究所(現上方文化笑学センター)の所長として、上方演芸文化に関する研究教育に従事されました。

現在はワッハ上方(上方演芸資料館)プロモーション委員会​(放送事業者)事務局のプロデューサーとして、放送局とワッハ上方との連携を促進する事業に取り組まれています。

この経歴からも察せられるように、高垣さんが、番組制作者(ディレクター、プロデューサー)として、とりわけ手腕を発揮されたのは、演芸・お笑い番組です。

その数々の仕事は、上方落語のルネサンスの立役者、かの三代目桂米朝からも高く評価され、依頼を受けて映像作品の監修を手がけられています。

(高垣さんによる米朝師匠関連のお仕事の一例。『特選! 桂米朝一門会』は、米朝師匠をはじめとする米朝一門の名高座、そして「裏芸」を集めたDVDです。高垣さんは企画のみならず、解説もご担当です。)

(喜味こいし・戸田学編 『いとしこいし 漫才の世界』岩波書店, 2004。高垣さんは、落語のみならず、漫才にも精通しておられます。上方漫才の至宝「いとこい漫才」。高垣さんは「いと・こいを科学する」と題して寄稿されています。)


授業では、ご自身の仕事を振り返りながら、テレビ局の制作の変遷を技術面の刷新を踏まえつつ整理された上で、実際の制作現場のあり方について解説していただきました。

噺家さながらの活き活きとした大阪ことばで、ディレクターとプロデューサーの違いから、街ブラロケの番組制作の実情、在阪テレビ局と在京局との関係性まで、なかなか知ることができない内容が語られました。

その中でも、学生たちの心に残ったことのひとつが番組制作の倫理の話題でした。
(授業後に学生たちが書いたコメントシートによる)

圧倒的な人気者である芸能人の方とのロケの際、ついつい自分たちまで人気者になった気分で偉そうに振る舞ってしまうのが人情。
故に、「ある時は天下の往来で、ある時はお店にお願いして、我々が撮影させていただいている」という気持ち・態度を、常にスタッフ全員に持ってもらうように努めた……
このプロデューサーとしてのエピソードは、「やらせ」問題以外にも、番組制作の倫理が問われている局面が様々にあることを強く意識させられました。

誰もがテレビの世界を夢見た「テレビ黄金期」のエピソードだからこそ、高垣さんの言葉は、受講生に重く響いたのではないでしょうか。
まさに「ほんまもん」の「プロの仕事」を垣間見たのだと思います。

心残りは、お笑い番組・演芸番組の作り方まで話が到達しなかったこと。
高垣さんのお仕事の一部をふりかえるだけだとしても、100分という授業時間は余りにも短過ぎました。
こちらは、また次の機会に。

ご多忙の中、授業に参加してくださった、高垣さんに深く感謝いたします。
ありがとうございました。


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