かなえ

人生毎日てんてこまい

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最近の記事

祝福       (短編小説)

 ぼくの恋人はとても大きな瞳をしている。けれど、笑うと目が細くなる。目や微笑みで全てを語るのだ。恋人は自分がとても表情豊かなことに気づいているのだろうか。ぼくは髪の毛をやさしく洗ってもらい、ヘアオイルを塗ってドライヤーで髪を乾かしてもらっている間に考える。長くて細いその美しい指が、今はぼくだけのためにある。愛おしくてたまらない。爪を切ってもらい、それから恋人に後ろからハグされた。どうやらぼくは首筋から甘い花のような香りがするらしい。お返しにとばかりにぼくも恋人の匂いを嗅ぐ。甘

    • 指    (短編小説)

       ピアニストなんかにならなくてよかった、と、彼女の指を撫でるように手を繋ぎながら考える。作曲はとても好きだけれど、私の長くて細い指は鍵盤のためにあるのではない。彼女の髪の毛を洗い、ヘアオイルを塗りドライヤーで丁寧に乾かし、爪を切ってあげるためにあるのだ。彼女の首筋からは甘い花のような香りがする。私からは甘い女の子の匂いがするらしい。お互いの首筋の匂いを嗅ぎ合って、それはセックスよりも野性的で、私達は本能で愛し合っているのだと感じる。彼女に出会えなかったら、きっと私は死んでいた

      • 梅切らぬバカ 感想

        梅切らぬバカ、という映画を観てきました。自閉症の息子とその母親の暮らしを描いた映画です。ネタバレになっちゃうかもです。御了承ください。 加賀まりこが母親役、塚地(我が家では塚っちゃんと呼んでいます)が息子を演じていました。淡々とした映画で、こういう映画によくある涙とか感動とか見せ場とかがなくて、お涙頂戴じゃないところに好感が持てました。 わたしの弟は自閉症で、塚っちゃんの演技にはちょい辛口で観ようと思ったのですが、手の動きとかこだわりが強いところとかがリアルで、映画だから

        • パジャマ論2

          こんにちは、かなえです。前記事では冬場のパジャマ事情について書きましたが、今回は夏場のパジャマ論について書きたいと思います。夏のかなえは一体どんな格好で眠りについているのかしら。 まず、夏はこれといって着るものが決まっていません。涼しく眠れれば良いわ、というだけです。お祭りみたいに甚平を着てみたり、Tシャツに短パン、ライブTシャツにメディキュット、どこで買ったのか分からないチャイナ服みたいなパジャマ、など様々です。甚平は、着るとテンションは上がりますがちょっと寝苦しいという

        祝福       (短編小説)

          パジャマ論

          そう言えばわたしnoteやってたんだわ、と思い出して久しぶりに見てみたら過去記事がよくわからない文章でなんだかな、なんでしょう。なんとも言えない気持ちになりました。 急に寒くなってきましたね。冬場はモコモコなフリースのパジャマを着ています。おととし買ったシロクマのパジャマは可愛らしさがちょっとイマイチでしたが、去年買ったビションフリーゼのパジャマは可愛らしさが素晴らしくて今年も着るつもりです。トイプードルを買っているのに他の犬種のパジャマを着るなんて、なんだか悪いことしてい

          パジャマ論

          窓の外は雪

          寒さの中外にいるのは淋しかろうと部屋に取り込んだ洗濯物はダラリとハンガーにぶら下がりテレビでは堂々巡りのような国会中継が流れなんとなく眠たいような眠たくないような気分でうっとり。昼に食べたパンが腹の中で膨れ上がりベルトの穴をひとつ緩めたいけれどそれは負けを認めることになるのでやはりわたしは物悲しくしょんぼり。サバサバしていると言い張る女は大抵ねっちょりしていてうまく剥がせないシールみたいでなんか嫌になり、そういえば昨夜はわたしの僅かな貯金、通帳の中から20万円を勝手に引き出さ

          窓の外は雪