ジャニーズ事務所に嫌悪感を抱きながらジャニオタを続けるということ
BBCのドキュメンタリー『J-POPの捕食者 秘められたスキャンダル』の放送でジャニーズ性加害問題に一石が投じられてから約半年。
私は今ジャニーズ事務所の運営に対し強い嫌悪感を抱く一方、そんなジャニーズ事務所に所属する推しの応援は止めたくなくないとも思っている。
図で表すとこうだ。
本当はこの問題には触れずただ推しの良さについて語りたいのが本音だ。しかし今世間を騒がず例の問題を無視してそのことだけを語るのは良心が咎める。たとえ推しに関わるネガティブなことであっても、ダメなことはダメと声をあげなければ自分自身を許せない。
9月7日のジャニーズ事務所による記者会見を前に、推しのためにも自分のためにも、今一度この問題に向き合ってみようと思う。
※私の自担(ジャニーズの推し)は他の記事を読めばすぐ分かってしまうことだが、ここではどのグループなのか敢えて言及しない
ジャニーズ事務所に怒りを抱くまで
ジャニー喜多川が少年に対して性加害行為をしていた。BBCのドキュメンタリーや日本外国特派員協会での記者会見を受けて、今まで噂だと受け流していたことが事実であるかもしれないと思った瞬間、私は推しの所属事務所に人権侵害が蔓延していることを自覚し大きなショックを受けた。
そのうち声をあげる被害者はどんどん増えていった。やがてジャニーズ事務所が声明を発表し、国連人権理事会や外部専門家の特別チームが調査に乗り出した。その流れの中で私が受けたショックはいつのまにか大きな怒りに変貌していた。
何に対しての怒りか。今までだんまりを決め込んでいた報道機関に対する怒りもあったが、一番はやはりその問題を長年放置し隠蔽してきたジャニーズ事務所に対してである。
怒りの要因は主に三つある。
ジャニーズ事務所の不甲斐なさすぎる対応に対する怒り
実を言うと推しに出会う以前の私はSMAP解散騒動が原因でジャニーズ事務所に対し嫌悪感を抱いていた。
それが和らいだのは今の推しに出会ったからなのだが、昨年起こったKing & Princeの脱退騒動で再び雲行きが怪しくなり、今回の性加害問題によってジャニーズ事務所への嫌悪感は確固たるものになってしまった。
その決定打が記者会見をせず動画で幕引きを図ろうとした初動対応の悪さだ。
ここでなぜ事務所が動画で済ませようとしたのか考えてみる。百歩譲ってあの動画は苦肉の策だったのではないだろうか。
記者会見はある意味リスクだ。想定外の質問が飛んできたり、台本に無い思わぬ言動を取ってしまうことだってある。
過去にそうした例は多数ある。それがネットミームと化そうものなら企業が受けるダメージは余りにも大きすぎる。
おそらく事務所は記者会見と動画それぞれのリスクを天秤にかけ、結果として後者を選んだのだろう。
だが蓋を開けてみたら逆効果だった。ファンである私からしてもまるで誠意を感じなかったし、そんなことで被害者が救われると本気で思っていたとしたら呆れてものも言えない。
もう一つ許せなかったのが、ニュースキャスターをしている所属タレントを矢面に立たせたことだ。
ニュースキャスターという仕事上コメントを求められるのは当然のことだし、それができないなら厳しく言うとキャスターの資格は無いとも思っている。しかし事務所経営陣は動画による説明で逃げ、所属タレントを身代わりにするのはいかがなものか。これではSMAP解散騒動の時と何も変わっていない。タレントを生放送でコメントさせるのなら社長を含む経営陣も記者の前で直接説明すべきだったのではないか。
そんなジャニーズ事務所のお粗末な対応を受けて怒りを覚えたのはジャニオタの私だけではない。
それが、二つ目の怒りの要因に繋がる。
世間一般からの評価が凋落したことに対する怒り
先程あげたジャニーズ事務所経営陣の不甲斐ない対応を受けて声が大きくなった人達がいる。
アンチだ。
ジャニーズといえば性加害問題が明るみになる以前から一定数のアンチがいた。彼らの言い分を挙げるなら「顔だけで実力はゼロ。事務所のゴリ押しで芸能界にのさばっているだけ」といったところだろうか。
今までは「いやそんなこと無いし。ちゃんと最近のジャニーズ見てないでしょ?」とスルーできていたが、今回の性加害問題は格好の餌となってしまった。
「ほら見ろやっぱりジャニーズは悪の事務所じゃないか!」という彼らの言葉を否定することはできない。今までのジャニーズ事務所の対応はファンである私にも最早擁護できない。
さらに辛いのは、これまでジャニーズに対して中立の立場だった層にまで嫌悪感が広まってしまったことだ。
もし彼らがたまたまテレビなどのメディアでジャニーズのタレントを見て好印象を受けたとしよう。今までならそのジャニタレについて調べようとするはずだ。だが世間がジャニーズ事務所に厳しい視線を送る今、それができる人はどれだけいるだろう。世間の目を恐れて自重してしまうのではないか。
ファンにとってもそれは悪影響である。
知り合ったばかりの人と「推しいる?何が好き?」という話題が出てきたとしよう。その時のあなたは胸を張って自担の名を言うことができるだろうか。
もし勇気を振り絞って「〇〇ってグループの××なんだけど…」と言った時「え、あのジャニーズの?」という軽蔑にも似た反応が返ってきたら、もし相手が自担のことを知らず調べてみた結果、「あっ、ジャニーズなんだ…」という困った反応をされたら、あるいは「ジャニオタだから」という理由で距離を置かれてしまったらファンであるあなたはどう思うだろうか。
ジャニーズの所属タレントを応援することに賛同を得られにくい今の世の中、最早ジャニオタでいることは生き地獄にも思えてくる。
推しの課金がジャニーズ事務所の利益に繋がってしまうことに対する怒り
いっそのこと世間の目は気にせず今まで通り推し活を続けるという選択も難しくなってしまった。
なぜなら推しのグッズを買うことは、今まで性加害が蔓延していたジャニーズ事務所にもお金が入ることになるのだ。
正直そんな事務所には一銭たりとも渡したくない。でもそうしたら推しにも全くお金が落ちなくなる。でもグッズを買ったら事務所まで潤うし…と、堂々巡りの思考に陥ってしまう。これではまるで、推しを人質に身代金を要求されているようだ。
もちろん今まで通り推しへ課金するファンのことは認める。それは個人の自由だ。でも私にはそれが出来なくなってしまった。今はYouTubeのPVや音楽番組でしか推しを摂取せず、課金も音源だけという有様だ。
本当はDVDやグッズも欲しいし、推しがイメージキャラクターを務める商品だって買いたい。でも今の事務所にお金を落とすことは自分に嘘をつくようで許せないから控えることにした。辛い。
まとめ
まとめると、
ジャニーズ事務所の逃げの姿勢を受けて、所属タレントを含むジャニーズ事務所に対してネガティブなイメージを持つ層は増加の一途を辿る一方だ。そんな今の空気はファンである私にとって生き地獄そのものだ。そうなった原因は他ならぬジャニーズ事務所であることに怒りを覚えるも、推しを応援するためにグッズ等を買うことは事務所の利益にも繋がるため必要最低限の推し活しかできなくなってしまった。
それは余りにも息苦しく、辛く、許せない。
それでも推しへの声援を止めない理由
そんなに辛ければいっそジャニオタなんて辞めてしまおう。幸い私にはジャニーズの推しほどの熱量ではないにしても、好きなアーティストは他社にもたくさんいる。そっちに推し変すればストレスフリーに過ごせるじゃないか。何度もそう思った。
それを思い止まらせたのはやっぱりジャニーズにいる推しの存在だ。
渦中で発表された推しの新曲にまつわる全ての要素がツボだった。それをテレビやYouTubeで観るのは至福の一時だった。そしてトドメとばかりに推しからあるサプライズが届いた。それは彼らの今までの努力、そして私が彼らと歩んできたことを全肯定するものだった。
「ああ、彼らがこんな景色を見せてくれるなら私はこれからも見守り続けていたい」そのサプライズを目の当たりにした私に、ファンを辞めるという選択は出来なくなってしまった。
だから、
だからこそ推しの所属する事務所がこんなにも不甲斐ないことが今でも許せない。私の推しを含む所属タレント達が懸命に活動している一方で、事務所は性加害問題とどれだけ真剣に向き合っているのだろうか。頼むから中途半端な覚悟ではなくちゃんとした誠意を見せてほしい。
9月7日、ジャニーズ事務所の経営陣は今後について記者会見を開く。様々な憶測が飛び交うが内容はその時になるまで分からない。
それがどんなものであろうと、私はジャニーズ事務所に所属する推しを可能な範囲でこれからも応援する。推しにお金を落とすのが難しくても推しへの賞賛の声だけはあげ続けたい。
だがそれはジャニーズ事務所の全てを肯定するのとは違う。無理矢理例えるなら、ショートケーキのイチゴは好きだけど、それ以外の生クリームやスポンジケーキは苦手といったところか。ケーキと違ってイチゴだけを食べるようなことができないのが何とも歯がゆいが、ジャニーズに所属する推しを応援するというのはそういうことだと割り切るしかない。
次にまたジャニーズ事務所が信頼を損ねるようなら、今度こそ私はジャニオタを辞めるかもしれない。だからこそ、推しがこれからもジャニーズ事務所に所属し続けるか否かに関わらず、事務所はどうか性加害問題に真摯に向き合える真っ当な組織に変わってほしい。
頼む。
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