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【備忘録】ポーの作品から「ページの余白」を楽しむ事を教わった話。

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ポーの小説「アーサー・ゴードン・ピムの冒険」を解説した番組を視聴したことへの感想を綴っています。
私個人の思ったことをメモとして残しているものです。

本作品には若干触れている程度で、読書記録ではないので、あらかじめご了承下さい。

興味ある人に読んでもらえれば幸いです。


NHKのEテレで放送されている「100分 de 名著」。

今月は、作家「エドガー・アラン・ポー」の作品を取り上げている。

個人的には、ミステリーやホラー小説のイメージが強くて少し苦手な印象を持っている。
学生の頃、ポーの他の作品を読んで苦手意識を持ってしまった。


でも番組を視聴して、ようやく面白さが分かってきた気がする。
4週全部観終わったら、総括を改めて書く予定だ。


今回は、第一週目「“ページの彼方”への旅」を視聴したなかで個人的に「おっ!」と思った点をメモしたものになる。

番組の中で、お笑いタレントの伊集院光さんがコメントしたことを一部残しておく。

僕らは今何を書いても
何をしゃべっても 炎上するから
隅々まで埋めようとするんですよ。
自分が思ったのと違う解釈が怖いから。

全部言おうとすることで
気持ちはいいのかもしれないけれども。
僕が思ってもみなかったような
面白い解釈をさせてくれない、みたいな。

何か僕は この人(エドガー・アラン・ポー)はこの作品ですごい、それをゆだねてくれた気がちょっとする。

NHK 100分de名著 3月7日放送分より。


番組内で取り上げられた作品は「アーサー・ゴードン・ピムの冒険」 。
タイトルの通り、主人公のピムが冒険の旅に出る話だ。

この作品はまだ読んでいないので、番組であらすじを教えてくれたことで本作品を初めて知った。




ハラハラ・ドキドキの数々。



続きはどうなるんだ?



とても気になる!!


物語の展開が進むにつれて、ものすごく期待値が上がった。



それなのに……。



ラストの展開で「えっ……?何これ?」と戸惑った。



冒険に出た主人公が数多くのトラブルに巻き込まれながら進んだ先にあったものがこれ?


いったい、どういうこと??


読者(私)を置いてけぼりにして終わっていった。



正直、番組であらすじを説明された直後は納得出来なかった。



最初から最後まで、ちゃんと綴ってほしい。

ピムがどうなったのか、はっきり教えてほしい。

あらすじを番組内で辿った後の率直な感想だ。



ところが。

その後の解説で、作品が出発した当時の時代背景や通説として考えられたこと、ポーの取り巻く環境を総括してお話しされて感心した。

「地球空洞説」が当時信じられていたことも、番組を通じて知った。


そして、上記で挙げたコメントを伊集院光さんが発してくれたおかげでなるほどな、と納得。


「余白」を作っておくことで、こうじゃないかな?と展開を考察できる余地を残しておいてくれていたんだ。

主人公のピムがどんな結末を迎えたのか、読んだ人の数だけ存在するのか。



検索すればすぐに答えが得られる現代。

白黒はっきりさせたい人が増えている。

それは私も当てはまる点がある。



物事の展開を詳細に書いてしまうと、一つの考え方にしか行き着かない。

書き手はそれでスッキリするかもしれない。

読み手は書き手の解釈を知る事が出来れば、それはそれで面白いと思う。

書き手側の考えがストレートに伝わるから誤解される可能性は低くなるのかもしれない。


ポーは読み手に、その後の展開を読者に委ねる形にした。

それは、読者に「ページの余白」の可能性を残すためなのかもしれない。

解説を視聴した後で、ふと感じたことだ。



例えるなら、マジックの種明かしを要求するのは野暮なこと、というのと似ているかもしれない。

マジックは「すごい!」「不思議!」「どうなっているの?」と思っている最中が一番楽しい。

種を知ることで、スッキリするかもしれないけれど。


本来の楽しみ方は、「マジックの種を明かす」のではなく、「どうしてこうなるんだろう?」とあれこれ考えるところにあるのではないだろうか。



本作品も同様に、「これからどうなるんだろう」「怖いけど続きが知りたい」と考えながら観ている(読んでいる)最中がとても楽しかった。

見方を変えたら、続きがどうなるのかドキドキしながら集中して読んでいる過程が楽しいのであって、結末がどうなるのか一から十まで全て知るのは野暮なことなのだ。



当時の読者は、読み終わった後でお互いに結末を考察して話していたのかもしれない。

さながら映画館からの帰りに、友達やパートナーと映画の感想をお互いに話すみたいな。
その後の展開や考察をお互いにぶつけ合ったり、新しい解釈を話し合ってみたり。

同じ作品を読んだのに、その人によって解釈が異なるのを知るのもまた楽しい。


さらに、当時の読者は多くを説明しなくても結末がある程度の推測出来ていたと番組中でお話しされていた。

書かれていない部分も少なからずあったけれど、それが読み手の想像を書き立てる。
緊張感だったり、恐怖心だったり、より際立たせて物語の世界へと引き込む仕掛けになっていた。


ポーは完璧な結末を用意していたのではなく、読んだ人が想像できる余地を残しておいてくれた。


観た後に何をどう感じたのか。

ポーは、あえて書かないという形にした。

受け取る側の判断に委ねる形にした。


結末をすぐに知りたがり、白黒はっきりさせたがるのは、私自身、物語のその後を考えるだけの余裕がなくなっていたことを知るきっかけになった。


「ページの余白を楽しむ」ことを、ポーはこの作品を通じて伝えたかったのだろう、と現在の私は解釈している。

そうであれば、ピムがその後どんな人生を歩んでいったのかを考えるのは我々読者の役割になる。


最近は本を読む時間も少なくなっているし、パパッと読んで結末を知ろうとせっかちになっていた。

作品をゆっくり味わったり。

ページの余白を楽しんだり。

ただ読んでおしまいではなく、読書の楽しさを改めて知ることにも繋がった。


本作品のテーマ「“ページの彼方”への旅」の意味が、番組を観終わって「なるほど!」とようやく繋がった。


次回の「作家はジャンルを横断する」も視聴した後に、感じたことをメモとして残しておきたい。



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