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あなたの中の「多様性」を愛せ

2011年2月、B'zのギタリスト松本孝弘さんは「第53回 グラミー賞」を受賞しました。

B'zというとUltra Soulなどに代表されるように、日本ではロックミュージシャンとして非常に有名です。
事実、彼ら2人のルーツはROCKやHR/HM(ハードロック、ヘビーメタル)にあります。

ところがこのグラミー賞で松本さんが評価されたアルバム「TAKE YOUR PICK」は、ジャンルでいうとフュージョンやジャズ、AORなどに分類されます。このアルバムの共作のギタリストのラリー・カールトンもやはりこのアルバムと同様のジャンルで非常に著名です。
つまり松本さんはルーツではないジャンルで、世界の音楽の賞で最高峰のグラミー賞を受賞しました。

いわゆるJ-POPで成功したミュージシャンがこのグラミー賞を獲得するのはなかなか壁が高く、他にはYMOで成功した坂本龍一さんくらいでしょう。
松本さんは自身のルーツではないジャンルでその高い壁を越えました。
このことは驚きの一方で、松本さんの軌跡を辿ると決して偶然ではないと思えます。

松本さんはB'zでデビューする前から、主にROCKやハードロックのギタリストとして有名でした。TMNや浜田麻里のサポートを務めていました。
ところがB'zがデビューした1988年頃はダンスサウンドがかなり流行していたので、この影響を受けて初期のB'zはダンスサウンドが多く、彼らのブレイクのきっかけとなったBad Communicationはディスコで人気を博し、有線チャートでリクエスト数が上がっていきました。
90年代に入ると、彼らのルーツであるROCKやハードロック色の濃い作品を発表していくようになりましたが、93年には「FRIENDS」96年には「FRIENDS2」というミニアルバムを発表しています。
この2枚、特に後者はAOR色が非常に強く、ハードロックのミュージシャンの作品とは思えない内容になっています(リンク先は96年に出された代表曲でこのアルバムは1:48くらいに出てきます)。このミニアルバム以外にもROCKのジャンルには収まらない曲は時折発表されています。
もちろん、松本さんのソロの作品でもより幅広いジャンルの曲が披露されています。


音楽業界に関わらず、日本ではしばしば一つのことを極めるスペシャリストや職人が誉めそやされる傾向があるように思います。
しかし一人の人の中に多様な能力があることは現実の社会ではままあります。
一人の中に存在する多様な能力がそれぞれ素晴らしいものならば、日本でもきちんと評価されてしかるべきだと考えます。

松本さんはエンタテインメントの本場のアメリカで、ルーツと異なる部分が高く評価されました。もしルーツのROCKだけにこだわり続けていたら、ラリー・カールトンから声もかからず、この評価にはつながらなかったかもしれません。
また多様な能力は相互に刺激しあい、B'zやソロの楽曲で多様なアレンジや表現を可能にし、結果たくさんのヒット曲が生まれているように考えられます。

私が推すEXILE ATSUSHIと清木場俊介(SHUN)のツインボーカルにも、それぞれ一人一人の中に多様な能力があります。
以前の文章で申し上げた通り、EXILE第一章の曲もジャンルはかなり幅広く、20代そこそこで二人とも既に表現力が高かったのです。

多様な能力と多様な能力が重なるときには無限大のものが生まれます。そしてそれは一人一人の表現に戻る時にもまた良い影響を及ぼしていきます。

いまこの多様な能力の持ち主同士がキャリアを経て重なり合ったのならば、新しくワクワクするものが生まれるはずです。
私は単にEXILE第一章の曲だけを歌ってほしいと思っているわけではありません。
いまこそ二人で創作活動やライブを行い、互いの能力を高め合い、二人だけの唯一無二の、無限の可能性を秘めた価値を社会に還元してほしいと心から願っているのです。

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