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前進

訪問看護ステーションlifeを開業して半年が過ぎました。
先日、私たちのステーションで初めて利用契約をさせていただいた利用者様が旅立たれました。冬の間のお泊まりサービスを利用中、突然のお別れでした。

信じられないような気持ちで、ご挨拶をするためにお邪魔させていただきました。
穏やかなお顔で眠るAさん。
声をかけたら目を開けてくれそうな、息をしていないのが信じられないようなお顔でした。
いつものように触れたら冷たくて。

さみしい さみしい さみしい

暖かくなってお家に戻ってきたら、また訪問看護を再開させていただく約束でした。
また、ケアさせていただくはずだったのに。
口からの食事はとっていませんでしたが、「あんこ食べさせてあげたくて。具合悪くてもあんこは食べてたから。」と言ってくれた娘さんと一緒に、お饅頭のあんこをお口に入れたことがありました。
「ん?」という表情をした後に、もぐもぐもぐもぐ・・・ゴクリ
あの瞬間、嬉しかったな。
娘さんがすごく喜んでくれたのが嬉しかった。
「よかったねぇ、よかったねぇ」とAさんの頭を撫でる娘さん。
一緒に喜ぶことができたのが嬉しかった。

開業したばかりのあの頃、希望で胸がいっぱいだったはずだったのに、
いざ事務所を開けてスタートしてみたら、本当に自分たちでやっていけるのか、
利用者さんは増えていくのだろうか、
不安で、心細くて、怖くて。
そのような日々のなか、週3回ご利用いただいていたAさんの存在は、私たちの希望でした。
たとえ新規利用者が増えなかったとしても、Aさんがいる。
私たちには、守るべき利用者様がいる。
訪問させていただけるお家がある。
そのことがあの頃の私たちをどれだけ支えてくれていたかわかりません。
感謝以上の気持ちが溢れました。
生きる意味を与えてくれた。働き続ける力を与えてくれた。
そして、そのAさんとのお別れが意味するものはなんだろう?と考えた時、
「前に進みなさい。」
そう言われているように思えたのです。

前に進もう。

支えているようで、支えられている。
助けているようで、助けられている。
病気があってもなくても、人はそのままでつながることができる。
Aさんからいただいたこの思いを生きる力に変えて、次に出会う方に手渡そう。
Aさん、ありがとう。またいつか会いましょう。


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