今、「あるあるネタ」が求められる理由

「部活あるある」「ディズニーあるある」「家事あるある」・・・


「あるあるネタ」は、底を尽きない。YoutubeやInstagram、テレビ番組から、友達同士の会話の中まで、あるあるネタはどこでも盛り上がる。調べてみると、あるあるネタは、最近誕生したネタではなく、割と昔から世の中に存在したようである。考えてみれば、平安時代の枕草子の「にくきもの」などの段も、見ようによっては、あるあるネタの先駆的なものといえる。

「あるあるネタ」は、昔から存在し、万人にささやかな笑いを提供してくれる。とはいえ、私は、このような「あるあるネタ」は、現代日本では、特に求められているのではないかと考える。

1.細分化する「好み」

今、人の嗜好は細分化されている。例えば、好きなものは、人によってK-pop、釣り、漫画、スポーツ観戦、裁縫・・・などと、様々である。それだけでなく、そのカテゴリーの中にも、様々な嗜好を持つ人々が存在する。例えば、「ディズニー好き」一つとっても、その中身は「ダッフィー好き」「Pixar作品好き」「ディズニープリンセス好き」「東京ディズニーリゾート好き」など、多彩だ。さらに言うならば、その中にも「『トイ・ストーリー』のキャラクターは好きだけど、内容は知らない」とか、「ラプンツェルは好きだけど、白雪姫には詳しくない」という人がいたりする。人の嗜好はまさに無限に分岐しているのだ。

このように、人の好みが細分化している世の中では、完全に好みの一致した人とつながるのは困難だ。せっかく同じディズニー好きに会ったとしても、自分はダッフィーが好きなのに、相手がディズニー作品の鑑賞が好きで、パークのキャラクターには興味がない場合には、お互いわかりあえないかもしれない。それどころか、時には好みが合わないことから、衝突する可能性すらある。「好み」を通じて人とわかり合うのは難しいのだ。しかし、やはり人とは繋がってわかり合いたいと思うのが人の自然な願望だろう。

「あるあるネタ」は、このような要望に答えてくれる存在なのではないだろうか。

2.あるあるネタのパワー

たとえ細かい好みは一致していなくとも、あるあるネタならば、それを経験したことがある人みんなが共感することができる。

例えば、東京ディズニーランドに行くことが好きならば、「ディズニーランドのキャストさんあるある」で笑い合うことができる。あるあるネタの前では、ダッフィーが好きか、どのディズニープリンセスが好きか、などといった細かな差異は不問なのだ。

3.趣味に関わる「あるある動画」

上の動画は、人気Youtuberのエミリンさんによる、ディズニーランドキャストの新人さんとベテランさんによる違いをネタにした動画だ。「あるあるネタ」とは書いていないものの、パークに何回か足を運んだことのある人なら、何となく共感でき、楽しめる内容となっている。よってこれも、「あるあるネタ」の一例と考えて良いだろう。実際、私もディズニーリゾートが好きで、何回か行ったことがあるため、この動画を見たときには思わず笑ってしまった。

前述したが、ここでは、細かい好みの違いは問われない。ただ、ディズニーランドやディズニーシーに行ったことがあるという経験さえあれば、誰でも共有できる笑いなのだ。そのためか、この動画の再生回数は、500万回超えと、エミリンさんのチャンネルの中でもトップクラスで多い。「あるある」が、多くの人の人気を集めたと言えるだろう。

4.ほぼ全員が共感できる「あるある動画」

また、ディズニーなどの、特定の趣味の「あるあるネタ」だけでなく、そのような趣味の違いすらも不問にして共感できるネタもある。例えば「高校生あるある」などはその一例だ。

上の動画は、土佐兄弟の青春チャンネルさんによる、高校生の日常を再現した「あるあるネタ」だ。この動画では、もはや趣味の違いすら不問であり、高校生時代を経験した人なら誰もが共感できる、いわば無敵の「あるあるネタ」が提供されている。この動画を見た人は、趣味や好みの違いに関わらず、高校生時代の懐かしさをもとに、笑うことができる。

こういったネタは、趣味も好みを超越して、人と笑いを共有することを可能にしてくれる。

5.今、「あるあるネタ」が求められる理由

既に述べたように、今、日本では、人の好みは細分化している。同じジャンルの漫画が好き、同じ趣味を持っている、というだけでは必ずしも人とわかりあえず、かえって衝突してしまうことすらある。

しかし、「あるあるネタ」があれば、人と軋轢を生じさせることも、微妙な雰囲気になることもなく、人と共感し、笑い合うことができるだろう。なぜなら、「あるあるネタ」とは、文字通り、「あるある!」という「経験」の共有があれば成り立つ笑いであり、細かな好みの違いなど関係なしに人と通じ合うことができるからだ。

細かな好みは違っても、人と繋がりたい。そのような願望は、今を生きる多くの人が持っているのではないだろうか。そんな願望を叶えてくれるからこそ、今、「あるあるネタ」は求められていると考えられる。

人によって嗜好が多様化している現代人には、「あるあるネタ」は、「好み」ではなく、「共感」によって人と繋がることを叶えてくれる、貴重なツールなのだ。

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