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人たらしな蟻地獄 ~XIIX『USELESS』感想~

2021年2月24日。XIIXの2ndアルバム『USELESS』が発売された。

このバンドのことも、曲たちもまだあまり世間に広まっていないと思うが、本当に素晴らしいアルバムだ。キラキラとした若さ溢れる新人感を醸し出しながら、テクニカルな玄人感も滲み出ている。なんともアンバランスなのに心地よい。そんな不思議な感覚に溺れるようなアルバムになっている。

まだ聴いたことがない音楽好きは悪いことは言わないから1度聴いておけ。という思いをこめて勝手にアルバムレビューを書いていこうと思う。


まず、バンドについて少し説明を。XIIX(テントゥエンティ)という名のバンドであり、メンバーは、ギターボーカル斎藤宏介とベーシストの須藤優の2人からなる。

斎藤は、UNISON SQUARE GARDEN(以下ユニゾン)のギターボーカルとしても活躍している。ユニゾンでは大方詞曲はベースの田淵が担当しているが、XIIXでは齋藤が詞曲を担当している。好きな食べ物はビール。

須藤は米津玄師やゆずなど様々なアーティストのサポートベースやアレンジャーとしても活躍している。XIIXの楽曲は全て須藤がアレンジを行っている。好きな食べ物はカレー。

音楽業界の中でも実績を重ね、確固たる地位を築きあげてきた2人が、新人として新たに駆け出したのがXIIXというバンドなのだ。

とまあ、いろいろと説明してきたが、まあ簡単にいうと、ビール好きとカレー好きが集まったイケてるバンドとだけ覚えてもらえたらそれでいい(よくはない)。


そんなイケてるバンドが出したアルバムが『USELESS』である。

ロックからバラードまで幅広いジャンルの曲たちで構成されており、あたかも自分がイケてるんじゃないかと勘違いさせてくれるオシャレな円盤になっている。友人や恋人とドライブをするときにこのアルバムを流すと、なんてセンスのある人なんだと好感度爆上げになること100億パーセントなので、勝負の日にはぜひ活用して欲しい。


そんな一見すると、耳触りのよい曲たちなのだが、聴いていくうちに少しずつ少しずつ体を蝕んでいく(いい意味で)毒のような要素があり、その毒こそがこのアルバムの最大の魅力なのではないかと思っている。そして筆者自身もその毒にどっぷり浸かった結果、この文章を書かずにはいられなくなり今に至る。


この毒というのはいったいなになのか。言葉にしてみると「ちょっとした違和感の積み重ねによる凄まじい中毒性」なのだと思う(なんか上手く言語化できてない。すみません。)


まず、このアルバムを聴く上で、ぜひやってみてほしいことがある。

大きな音の中で無心になる。

もちろん何かをしてる時に流すBGM的な聴き方をしても最高なのだが、このアルバムに隠された狂気、変態性は頭の中を空っぽにすることでより感じられると思う。ちなみに、筆者は仕事でくったくたに疲れた帰り道、大音量のなか運転しているときに「あれ?このアルバムやばくないか?!」と震えたのであった。運転中に聴くのおすすめです。


そうそう、なぜ大音量で聴くのがおすすめなのかというと、メロディの後ろにおもしろい音たちが潜んでいるから。ぜひ宝探しのように探してみて欲しい。楽しいから。



例えば、3曲目の「フラッシュバック」。個人的にこの曲はXIIX版ズオウとヒイタチだと思っている。1度聞いたら覚えてしまうようなキャッチーなメロディなのに、後ろの音が不穏。不気味。きもちわるい。子どものころだったらトラウマになるかもってくらい。そこがもうね、たまらん。中毒性が高すぎる。もうめちゃくちゃ好きな曲です。聴いたあとには「かなりやばめ、かなりやばめなフロウ」と口ずさみたくなることまちがいなし。


また、5曲目の「Vivid Noise」。ロックなバンドサウンドと、語感の気持ちいいラップが混ざり合う超絶かっこいい曲なのだが、なんといっても息継ぎのタイミングが狂気的なのである。頭サビの『~気付かないままどうか踊ってくれ~』というフレーズでは、息継ぎをするタイミングがないように思うのだが、斎藤は『踊ってくれ』の小さい『っ』のほんのわずかな隙間で息を吸っているのだ。小さい『っ』で息継ぎってなんだよ。こんなところで息継ぎしようなんて発想が変態的だし、それを実現できる技術がすさまじい。しかも、このブレスによってキメ的な歯切れの良さがさらに演出されているのも強すぎる。個人的に斎藤は息の使い方がとても魅力的なボーカリストだと思うので、このアルバムではその息遣いも注目してほしい。

他にも、おしゃれな雰囲気の歌だが歌詞を見てみると、起きる起きるよといいながら結局2度寝してしまう男の「zzzzz」や、心の奥に閉じ込められていた引き出しを開けてくれるような懐かしい気持ちにさせてくれる「Endless Summer」など、ほんとにバラエティ豊かなラインナップになっている。

同じボーカリスト、アレンジャーばかりのアルバムだとどうしてもその人たちの色、癖がでてくると思うが、今作ではそれを感じることはなかった。そのくらい齋藤の声の出し方は曲によって印象が変わっていたし、須藤のアレンジも楽器の選び方やリズムのとり方など同じ人がやってるとは思えないくらい色とりどりなものだった。うん、何色でもないが何色にもなれる自由さがXIIXの色ではないだろうか。次作はどんなものをみせてくれるのか少し気が早いが楽しみになってきた。



まとめ。

とっつきやすく、入りやすいキャッチーな印象に隠された中毒性、変態性。まるで人たらしな蟻地獄のようなこのアルバム。サブスクでも配信されているし、公式youtubeでも何曲かupされているので少しでも気になった人は1度聴いてみてほしい。そして、おすすめの聴き方であげた「大音量のなか無心になれる」とっておきの機会が6月にある。東名阪のワンマンツアーがあるのだ。生のライブは本当に楽しい。

さあ、いっしょに蟻地獄に落ちよう。











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