食と健康コラム~知っているようで知らない?! 「スーパー調味料”味噌”」の本当の栄養とは

日本の代表的な発酵食品「味噌」の栄養って?どんなことに効果があるの?

味噌汁を飲んでいれば、健康的で医者の世話にならないという例えで、「味噌の医者殺し」ということわざがあります。

古くから発酵食品「味噌」は体に良いと言われていたのですね。

「でも、どんな風に体にいいの?塩分が気になるのだけど・・・」

など、普段何気なく調味料として使っているけど、いろいろとわからないこともあるのではないでしょうか。

そこで、当たり前のように食卓に並ぶ「味噌」について、栄養・効果・腸との関係や塩分のことなどまとめてみました。


意外と知らない「味噌」のキホン

味噌は発酵性大豆食品で、日本の代表的な調味料のひとつです。

作り方は、主原料の大豆を蒸したり煮たりして、それに麹と食塩を加え、発酵・熟成させます。原料や製造工程の違いで多種多様な味噌が製造され、全国各地の郷土味噌となり、まさにその土地のソウルフードとなるわけです。

「味噌」の栄養や効果は?!

味噌なんてただの調味料でしょ…なんて思ったら大間違い。

そもそも主原料である大豆は、「自然のバランス栄養食」と呼ばれるほど、必須アミノ酸やビタミン、ミネラルが豊富で栄養価が高いことで知られています。必須アミノ酸とは、体内で合成されず毎日の食事からの摂取が必要である、生命の維持に必要不可欠な栄養素です。

しかし、大豆に含まれる必須アミノ酸はそのままだと消化吸収率が悪いことがわかっています。
それが味噌になると微生物が持つ酵素による分解、発酵作用等により消化吸収しやすい状態になるのです。
よって、体に効率よく取り入れることができるので、味噌の必須アミノ酸は大豆より豊富と言えるのです。[1]

それだけではありません。

味噌は「ビタミンE」や、発酵・熟成の過程で作られる「メラノイジン」や大豆由来の「大豆イソフラボン」「DDMPサポニン」などの『抗酸化物質』を含みます。
この『抗酸化物質』は、老化の原因となる活性酸素を除去してくれる働きがあり、血管や細胞の老化を緩やかにしてくれます。

また、原材料のひとつ米麹の中の「グルコシルセラミド」という成分が肌のバリア機能を高めてくれて、水分保持量が増えるのだと考えられています。[2]

味噌は、美肌づくりのサポートや、老化の予防への貢献もしてくれる、まさに「天然の高機能サプリメント」と呼ばれるほどスゴイ食品なのです。


「味噌」と「腸」の深い仲

最近では、腸が健康のカギを握っていると言われているほど、重要視されています。
善玉菌や悪玉菌、腸内フローラ…という言葉を、一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
人間の腸内には腸内フローラと呼ばれる細菌叢があり、善玉菌・悪玉菌などから成っています。
偏った食生活で悪玉菌が増えると「便秘」「免疫力の低下」「代謝の低下」「肌荒れ」など、不調があらわれてきます。

そこで、発酵食品の出番です。味噌に含まれる麹菌や乳酸菌といった微生物は、善玉菌といわれ腸の働きを活発にしてくれます。

加熱すると善玉菌は死滅しますが、その死骸も、もともと腸に存在する善玉菌のエサになり、腸内環境の改善に役立ちます。

善玉菌が増えると、免疫力アップ・便秘解消・肥満予防・認知機能向上などカラダにうれしい作用が期待できるのです。

腸内環境が整うことにより、ストレスが改善されるということもわかっています。[2][3]

また、味噌は味噌汁などに調理することが多く、単体で食べることは少ないかと思います。
味噌汁の具材や、一緒に食卓に並べるおかず(主菜・副菜)に、野菜やきのこ、海藻などの食物繊維が多く含まれる食材を組み合わせるとより一層、腸に良い食事を作ることができます。
食物繊維は前述した善玉菌のエサとなるため、腸内フローラは善玉菌が優位になりやすくなります。

食べ合わせにも意識を向けて、より一層お味噌のパワーを引き出しましょう。[5]


でも気になる、塩分のこと

ここまでの話を聞いて、味噌が体に良い働きをしてくれることを知ると、味噌を毎日毎食取り入れたいと思いますね。

でもちょっと待ってください。
味噌は調味料の一つでもあり、100gあたり12.4gと塩分を多く含みます。例えば、1日3食味噌汁を飲んでいたら…塩分を摂りすぎてしまう恐れがあります。
味噌汁1杯(150㏄)に含まれる塩分は1.4g前後。日本人の1日の食塩摂取目標量は、男性7.5g未満、女性6.5g未満となっており、毎食味噌汁を飲むと、それだけで4.2gの塩分摂取となってしまいます。

いくら体に良いとはいえ、1日1杯を目安にしましょう。
[4][6]

それでも塩分が気になる、血圧が気になる方は、味噌汁の具に注目してみませんか。

ナトリウム(塩分)を体外に排出しやすくするカリウムを多く含む食材、緑黄色野菜やイモ類・海藻類のわかめなどと組み合わせるといいでしょう。[2]


味噌汁がある…日本の食卓

日本の食卓には、ご飯があって味噌汁があって、主菜副菜のおかずがある、伝統的な「一汁三菜」という考え方が昔からあります。

これは、エネルギー源となる炭水化物・体を作る元となるたんぱく質・体の調子を整えるビタミン・ミネラルがバランスよく摂取できる理想の形なのです。

また、ご飯と味噌汁は夫婦のような関係でお互いがないものを補い合っています。
ごはんのたんぱく質には、必須アミノ酸のリジンが不足しており、一方で味噌の原料である大豆にはメチオニンという必須アミノ酸が不足しています。

ごはんと味噌汁を一緒に食べることで、それぞれが不足している必須アミノ酸を補い合い、よりバランスのよい食事となるのです。

昔からの食卓には、人が健康的に生活できる要素が備わっているのです。
[2]


まとめ

長寿国日本の伝統的な調味料である「味噌」。

生命の維持に必要不可欠な必須アミノ酸が豊富なこと、老化を緩やかにしてくれる抗酸化物質が多いこと、麹菌や乳酸菌といった微生物が腸内環境を整えるお手伝いをしてくれること…など、様々な嬉しい要素を持っていることをお分かりいただけたでしょうか?

たくさんのカラダにいいことをしてくれる「味噌」ですが、どんなに良いからといっても摂りすぎは禁物です。

毎日の食事に上手に取り入れて、健康的な生活を送りましょう!


~出典~
[1]東京生活編集部編「お味噌のことが丸ごとわかる本」(2007年)枻出版社 P182-190
[2]岩木みさき著「みその教科書」(2020年)㈱エクスナレッジ P7-9、P111
[3]AnoukC.Tengeler,TamasKozicz,and Amanda J.Kiliaan 翻訳/南野昌信「食事、腸内細菌叢と脳機能の関連」栄養学レビューNO.104 2019spring 187-199
[4]日本食品標準成分表2015年版(七訂)文部科学省
[5]厚生労働省「e-ヘルスネット 腸内細菌と健康」( 2019 年)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-003.html
(参照 2020-2-13)
[6]日本人の食事摂取基準(2020年版)厚生労働省

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