目の話

 さっきのドキュメンタリー映画の話が長くて、もうこれは映画の感想だから、いいやと思って別の記事にしてしまった。そのあとは、『ブレードランナー』と『ヴァージン・スーサイド』をみようとしていて、まず、ブレードランナーからかなぁ、と思ったけど、見てて途中で、あ、今これ、すごく嫌なことが起こる気がする、と予感し、映画を一旦止めて、Does the Dog Dieを開く。と、次のような文章が「A character's head is partially crushed by a "replicant". Then the replicant puts his thumbs through the character's eyes to kill him.」

無理。目がいちばん無理。

 やや先端恐怖症の傾向もあるかもしれないが、やぶれて剥き出しのフェンスとか、有刺鉄線、逆さに立てられた箸など尖っているものなどをみると目に刺さるのではないかと思って怖い。目の手術の話も怖いし、眼科の先生がそれを一日に何件もこなしているのがすごいし、こわい。コンタクトも怖い。カラコンは当然無理。レーシックは想像を絶する。眼圧検査の空気が安全である保障はどこにあるのだろう。保険証の裏の臓器提供意思決定カードには「眼球」のところだけバツをつけている。無神論者だが、死んでからでも怖いのだ。藤枝静男「一家団欒」の主人公は、眼球を提供したらしく、死後目に脱脂綿が詰められたまま、家族のいる墓へと訪ねていく。『眼球譚』のラスト。言われてみれば睾丸もこわい。理科の資料集に豚の眼球が載っている。それをはじめてみたとき、ギョッとして、見てはいけないものを見る気持ちでまた見る。豚の目も人間の目も同じじゃないか。高校だと生物選択は解剖したらしい。豚の目は肉屋から買うのだろうか。大体1クラス40人×2で80人。80個40匹分の豚の目が来る。それにメスをいれて水晶体を取り出す訳だが、その際、豚の目と人間の目はアナロジーだ。豚の目を鏡に、人間の目にもある水晶体を観察する。メスをいれるときのわずかな痛み。試験管に入った血液。そこにストローを刺して息を吹き込めば、色が変わるらしい。私は注射の針が刺さった腕が見られない。高校のときに付き合っていた彼女に血が怖いという話をしたら、暗に「男の人は月経がないから、血に慣れてないんだよ」と言われる。留年が決まった春、一時、軽躁状態になり、暴力描写やグロシーンが大丈夫な気がして読み漁ったが、軽く気持ち悪くなった。やっぱりだめか。

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