状況

家族はもはや平穏さ以外の何も求めなくなっていた。

東畑開人『心はどこへ消えた?』
(2021年、文藝春秋)

 不適切な引用なのだが、私もとうとうこの一線を越えてしまった。いや、そもそもなにも求められてはいなかったのだから、そのような一線は最初からなかった。自分で線を引いていたのだと思う。「なにも求められていない」ことは、とてもありがたいことだ。私は私の人生を生きることができる。なにかを求めていたのは、家族ではなく自分だ。そして、自分がもう自分になにも求めなくなったことを、家族の口を借りて(利用して)、了解している、というのが今の状況だ。その状況をどう受けとめようか考えている。

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