その人の顔を知っているということは、意外と重い。実際に会ったことがなくても、名前だけ知っているのと、顔も知っているのとでは、受ける負荷が違う。できれば顔を知らずにいたい。その人に関することに、その人の顔がついて回る。息苦しくなる。
 面識があって言葉を交わしたことのある人なら、そこに声も加わる。その人の声で、その人の言いそうなことが、頭の中に流れる。でも、これは私が勝手に想像した言葉だから、事実ではない。
 暑くなってきた。夏は当然嫌いで、夏のせいで少しずつ自分が機能しなくなっていく。たくさんの顔と声が、頭のなかで浮かんでくる。

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