ドキュメンタリーを見る日

 huluで『パンケーキを毒味する』が配信されるとのことで、今更みるのもどうかなと思いつつ、結局みた。つまりは毒味であって、この映画自体が毒だとは言っていないから、なんとなくエッジに欠けるのが物足りなかった。劇中、「子ども庁創設(のちに子ども"家庭"庁として正式に決まるのだが)」だとか「道徳の教科化」だとかは簡単に流されていたが、そうした政策の安倍・菅両氏のイデオロギー的背景に踏み込んだ方がスキャンダラスだったと思うけど、くだんの銃撃事件は公開からずいぶんたっての出来事で、とっくに菅も総理を辞任していたのだった。その点でもよくまとまっているぶん、こぢんまりとした印象。でも、やけに暗いところで飄々とインタビューにこたえる石破茂や"古き良き"政治を懐古し、現状の腐敗ぶりを嘆くかのように涙ぐむ村上誠一郎は見ておいた方がいいかもしれない。
 『COLA WAR/コカ・コーラvs.ペプシ』をその後にみたのは、なんか、こんな一日の使い方でいいのかなと言う気がしないでもない。でも、ペプシ・チャレンジ(銘柄を伏せたうえで、コカ・コーラ(以下、コーク)とペプシのどちらが美味しいか問うもの)という広告戦略はおもしろく、本来対等ではないものが同じ土俵に上がることで、消費者心理の中でペプシがコークのライバルに位置付けられ、実際ペプシは売り上げでナンバー2の座に着いた。コークとペプシの闘いとは、味の改良めぐるものではなく、様々なメディアを介しての広告戦略による消費者の"世論"形成なのだ。コークのライバルとなったペプシは、コークへの露骨なネガティブキャンペーンを展開。"世論"はコーク派とペプシ派に分断され、「政党のよう」になる。そう言えばアメリカの二大政党もコークとペプシもイメージカラーが赤と青だ。終盤、"世論"操作を誤り、味に改良を加えて、自身のブランディングを改変してしまったコークが、猛反発を受けるところは、消費者の反応も会社の対応も滑稽でおもしろい。そのあとのペプシ側の怒涛のネガキャン。コークが味を変えたのは、ペプシに負けを認めたからだ、と大々的に宣伝する。大事なのはいかに印象が操作できるかなのだ。映画の最後にインタビューを受けていた女性がペプシ・チャレンジをしてみて「同じ味!何で戦ってたの?」と肩をすくめて笑っていたのが印象的だ。

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