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ウルトラセブンの欠番回について

前回ちょろっと書きましたが、『ウルトラセブン』の第十二話は欠番扱いになっています。
そのこと自体は結構有名だと思いますけど、細かい事情はご存じない方が多い印象です。
なので、今回はその話を書きます。


第十二話のサブタイトルは『遊星より愛を込めて』、脚本は佐々木守、監督は実相寺昭雄。
登場するのはスペル星人と言って、普通の人型なのですが、皮膚のアチコチがただれています。
スペル星人の母星は核戦争で荒廃してしまい、放射能により体はボロボロで、地球人の新鮮な血液を得るためにやってきます。
そしてウルトラ警備隊やウルトラセブンと戦うことになるのです。

↑ 今はニコニコ動画でかなりクリアな画質で見られます

『ウルトラマン』でフジ隊員を演じた桜井浩子も、ゲストキャラとして登場します。
途中で出てくる変なデザインの建物は通称「百窓」といい、世田谷区に実在していた建物です。
アンヌなどのレギュラーメンバーの、制服ではない姿が見られるのは貴重ですね。
放射能がどうこうよりも、人と人とが分かりあえて平和な世界になることを待ち望むことが強く感じられる作品になっています。

正直、実相寺監督の独特な演出は見られるものの、セブンの中ではそれほどいい出来とは思えない作品です。
差別的な表現が見られるわけではなく、これがなぜ欠番になったのでしょうか。

問題となったのは、子供向けの雑誌の付録のカードでした。
小学館の小学二年生11月号(1970年)の付録である、「かいじゅうけっせんカード」が問題となったのです。
このカードは中央には怪獣や宇宙人の絵が描かれていて、その周辺にじゃんけんの手の絵が描かれていて、色々な遊びに使えるような付録です。
それぞれのカードの裏面には、怪獣や宇宙人のニックネームが書かれていました。
スペル星人のカードの裏面に書かれていたのは、「ひばく星人」という言葉でした。
これはSF作家の大伴昌司が付けたもので、当時は円谷プロが発表していない、或いは設定していない設定を、子供向けの雑誌が作って発表し、円谷プロが公認するような流れがあったのです。

被爆者を支援する団体の人の息子がこれで遊んでいて、そのお姉さんがカードを見て違和感を覚えました。
そしてそのカードを父親に見せ、父親は小学館に抗議文を送り、それが新聞記事になり、抗議活動は活発化します。
小学館は謝罪し、小学二年生を回収しました。

普通ならここで終わりです。
ところが円谷プロの社長だった円谷一は、スペル星人を封印することを発表し、それ以来第十二話は欠番扱いとなったのです。
被爆者団体の人間を円谷プロに呼び、第十二話を見せていたらしいので、作品そのものに問題がないことを関係者は知っていたと思われるのに、です。

日本では『ウルトラセブン』の本放送と再放送で数回、第十二話は放送されています。
あとハワイでも放送されていて、その後マニアの間で流通した画質の悪いビデオはハワイで録画されたものと言われています。
(私も見ましたが画質の悪さと内容の平凡さでダビングはしませんでした)
ビデオソフトが出るたびに「今度は第十二話が入ってるらしい」という噂が流れましたが、実際には入っていません。
円谷プロが身売りしたときにも、そういう噂が流れていました。
アンヌ隊員を演じたひし美ゆり子はブログで、第十二話の復活をめざしています。


長くなりましたけど、これで事情はお分かり頂けたと思います。
差別について厳しくなった今でも普通に放送できると思われるエピソードは、こうして欠番になったのです。
そして昔は中々見られなかった第十二話も、ニコニコ動画で手軽に見られるようになってしまい、今更ソフト化されてもそれほど売れないように思います。
またソフト化されたとしても、一時話題にはなるでしょうが、すぐに忘れ去られてしまう気がします。


最後まで読んで頂き、ありがとうございます。

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