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シナリオ本は面白い

映画やドラマのシナリオ本というと、余程好きな方でないと手は出さないと思います。
ですが、試しに読んでみるとこれが面白いのです。
自分が好きで何度も見た映像作品を、文字で読む違和感。
シナリオには書いてあるのに、本編には入っていないシーン。
シナリオライターの熱がこもった文章。
その他、映像作品では出てこなかった人や物の名称が分かったりということもあります。

例として、『ウルトラセブン』の第一話を紹介します。
(引用元:『ノンマルトの使者 -金城哲夫シナリオ傑作集-』朝日ソノラマ・宇宙船文庫)

日本人なら誰でも知っているセブンですが、第一話では主人公のモロボシダンが登場します。
彼の自己紹介の、「ごらんの通りの風来坊です」には笑ってしまいます。
ウルトラ警備隊の隊員二人を宇宙人の攻撃から救ったダンは、二人と共に基地の中に入ります。
(セキュリティゆるゆる(笑))
この後に、本編にはないのですが、メディカルセンターでのダンとアンヌの会話シーンがあるのです。

アンヌは隊員二人を救ってくれたダンに対して、何かお礼をしたいと言います。
一番好きなものを聞かれたダンは、

「地球!」

と答えてアンヌを驚かせます。
アンヌはあくまで冗談で、ダンに地球をプレゼントすると言います。
それに対してダンは、いのちをかけて地球を守ると言います。
ウルトラセブンが地球を愛し、守り抜く決意を表明する大事なシーンなのですが、オミットされてしまいました。

ここからは本編にあるシーン。
警報が鳴り、クール星人が京浜工業地帯を攻撃している映像がモニターに映ります。
クール星人は透明な宇宙船から攻撃をしているうえ、人質を取っているのでうかつに攻撃はできません。
司令室の皆が困る中、アンヌはハッと思い立ち、ダンに言います。

「ダン、あなたの地球がピンチにたたされているのよ。何か敵を倒す方法はないの?」

ここでアンヌが言っている「あなたの地球」というのは、メディカルセンターでの会話に引っ掛けているのです。
シナリオを読まないと、さすがにそこまでは分かりませんよね。
(それにしてもアンヌ隊員の可愛らしさと言ったらもう……(笑))

そしてこの後クール星人を倒し、平和が戻ります。
司令室で隊員たちがダンのことを話していると、長官が制服を着たダンを連れてきて皆に紹介します。
このときの長官のセリフは、本編では途中まででカットされています。

その後シナリオでは……
隊員の皆がダンを明るく歓迎する中で、キリヤマ隊長はダンを六人目の隊員とし、「七人目の隊員も誕生したかもしれん」と言います。
彼等はウルトラセブンのことをまだよく知らず、幻のヒーローと呼ぶのですが、キリヤマ隊長は、

「七人目の幻のヒーローだからなウルトラセブンとでも呼ぶか」

と言い、フルハシ隊員がよいしょします。
ウルトラセブンの名前の由来の説明も、本編ではカットされてしまったのです。
そしてこの後に、シナリオではダンの決意表明的なシーンがあって終わることになっています。

どうですか、これだけでもシナリオの面白さは分かって頂けたと思うのですが。


書きたいことがまだまだありますけど、今回はこの辺で。
(欠番になった12話のこととか)

最後まで読んで頂き、ありがとうございます。

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